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モバイルから産業全体の発展も

クアルコム、5G対応SoCを普及価格帯へ拡充。「2020年最大の目標として提供進める」

公開日 2019/09/19 18:27 編集部:川田菜月
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クアルコムは、次世代通信規格“5G”に関するグローバルの状況および同社の取り組みについて、本日9月19日に説明会を開催。同社プレジデントのCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏が登壇し、プレゼンテーションを行った。

5Gのグローバル展開、およびクアルコムの取り組みについて、プレジデントのCristiano Amon氏が登壇して説明した

冒頭、アモン氏は「“5G is here”、日本でもいよいよ5Gが現実のものとして実感されてきた。明日20日からはドコモのプレサービスが開始するなど、5G時代が間近に迫っている。今回の5Gサービス展開は、3Gや4Gといったこれまでの世代交代と比べても圧倒的に大きなインパクトがあると言える」と語る。

いよいよ日本でもサービス展開が始まる5G。同社は現実のものとなりつつある現状を“5G is here”と表現した

これまでと大きく異なる点として「モバイル事業だけでなく、製造業、自動車産業、エンターテインメントなど幅広い産業に対して根本的な影響をもたらすような基盤になるからだ」とし、「特に日本において、5Gへの移行は重要だと考えている。5Gを使うことによって産業の競争力が増すと考えている」と述べた。

また5Gの重要性についても改めて言及。もっともポイントとなるのはクラウド環境との連携、接続性だという。「5Gによってあらゆるものと繋ぐことが可能になる。クラウドでのコンピューティングやAIなどを含めて接続性を高め、デジタルトランスフォーメーションを実現する。携帯電話を超えてあらゆるものが繋がる世界、それが5Gの普及により当たり前となるだろう。電気のように、生活に必要な基礎技術になると考えている」(アモン氏)。

クラウド環境との連携や接続性が高まることで、あらゆるものと繋がる世界が実現する

「5Gの対応はスマートフォン・携帯電話から始まり、まずモバイルブロードバンドの性能・精度が飛躍的に向上するだろう。それを超えて、99.9999%の信頼性の元にミッションクリティカルサービスでも適用が見込まれる。また5Gにより無制限の環境が実現することで、あらゆるものが繋がる世界の中で、さらに容量を意識せずに多くのデータを扱うことも可能となる。つまり多接続が可能、かつ大容量という側面も持ち合わせており、センサー系やスマートハウスなどのMassive IoTの分野においても大いに影響をもたらすだろう」と語った。

モバイル環境の飛躍的な性能向上にはじまり、幅広い産業の発展に5Gが大きな影響を及ぼすという

消費者にとって身近なスマートフォンでの利点として、4Gとの比較も紹介。例えば利用シーンとして、ダウンロードにかかるレイテンシーは10倍の性能を誇るという。映像視聴においては、動画における最大解像度で再生できる環境が、4Gでは4%なのに対し、5Gでは95%を実現するという。

4Gとの比較。圧倒的な性能を5Gが実現するとアピールされた

具体的な活用事例としては、映像製作やゲーム、ソーシャルサービスなどについて語られた。特に映像に関しては「視聴(消費)から製作における全ての段階において、大きなインパクトがある、日本の産業界において大きな意味がある」と強調する。

「たとえば、撮影した映像を5G通信を通じて直接スタジオに送信できたり、コンシューマーの視点で見れば5Gスマホを用いて4Kの高精細映像を手軽にストリーミングできるだろう。ゲームでは今後はモバイル向けサービスの重要度が増していく。5Gによるクラウド連携は実現を支える重要技術になる。低遅延の側面でいえば、新しいソーシャルサービスの創出、発展も期待される」と説明した。

映像、ゲーム、ソーシャルサービスなど日本でも様々な分野での活用が見込まれる

グローバル展開においては、過去4Gへ移行した最初の一年、対応する通信業社は4社ほどであったが、5Gではすでに主要国で同時にサービスの立ち上げが始まっていると説明。「これまでとは一線を画す、圧倒的なスピードで大規模なスタートを切っている」とアピール。その理由としては「5Gがコンシューマー向けだけでなく、産業全体に向けた基礎技術であることが大きい」ことが挙げられる。

立ち上げの早い5G展開、すでにサービス対象となる潜在ユーザーは約22億人という

3G、4Gの事例と比較しても、5Gは元の計画より一年前倒しでローンチされている。また従来と異なり、対応端末の準備も早々に進んでいる点も、大規模かつスピーディーにグローバル展開が進む一つの理由だと語る。

スマートフォンはデータ系端末、モジュールといった対応機器がサンプルではなく商用化されている

日本でも、先日発表されたとおり明日9月20日からドコモによるプレサービスが開始される。グローバルで見ると遅れを取っている印象があるものの、「周波数割り当ても明確になってきており、非常にエキサイトしている」と期待を寄せる。

2020年に向けては、「マスマーケットに対して、より大規模に展開していくこと」を次のミッションに定める。クアルコムでは先日、独ベルリンで開催された「IFA」で、2020年にはフラグシップだけでなく普及価格帯への対応実現を進めると発表しており、「8シリーズだけでなく、7/6シリーズにも統合した5G対応SoCを提供する。sub6、ミリ波共に拡大を図っていくことが、同社の2020年最大の取り組み」とした。

2020年には普及価格帯への対応実現を進めると説明した

同社は先日、TDKとの合弁会社であり、高周波(RF)部品設計を手がける「RF 360ホールディングス」の株を完全取得。これにより5G対応スマートフォン向けの半導体販売の拡大を可能とする土壌を整えたかたちだ。質疑応答でも話題となり、アモン氏は買収におけるクアルコムの意図を、技術・ビジネス・パートナシップと3つの側面で語った。

まず技術面では、5Gの一つの特徴として「周波数関連の複雑化」を挙げ、「3Gでは対応端末にアンテナ1つを搭載していたが、5Gスマートフォンでは一つのアンテナ素子に8個のユニットを内蔵したモジュールが3つ搭載されている」とし、RF 360の技術力や商品が5Gの普及において重要な役割を担うと説明。

その上で買収の意図として、「5Gが様々な産業に拡大するというのは、これまでモバイルブロードバンドに対する知見が多くない分野における5G活用も含まれる。クアルコムとしてはモデムからアンテナまでをモジュール化して、より多くの人が5Gをすぐに使える環境を整備し、トータルソリューションとして提供していく必要があると考えた」とコメントした。

トータルソリューションの提供を実現し、クアルコムの価値をより高めていくと語る

また、RF部分まで自社でまかない供給できる体制をつくることで、端末一台あたりの中で提供されるクアルコムの価値が高まり、「市場の成長とともにビジネスを急速拡大できる」と語る。TDKとのパートナーシップについても、両社にとって重要だとしている。「RFフロントエンドの提供には、パワーアンプやフィルターなども含めた全ての技術要素を持つ必要がある。先に述べた通り、5G利用に必要な技術をモジュール化していくことがクアルコムの仕事であり、TDKのフィルター技術は重要だ」とした。

アップルとの関係修復(訴訟取り下げと新たなライセンス契約)については、多くは語られなかったが、「クアルコムの提供する価値が理解されて合意にいたった。業界においても良い結果だと思っている。クアルコム製チップを搭載したアップル製品が出てくることを楽しみにしている」とコメント。

なおAndroidスマートフォンなど現行の5G対応デバイスにおいては、ほぼ全てにクアルコム製チップが採用されているという。2020年に向けても新たに12社以上のメーカーで採用が決定しており、拡大を図っていくとした。シェア率については、「スマートフォンはコンシューマー電気製品の中でも最大の市場であり、我々は今後普及価格帯にも5G対応SoCの提供を進める。競争激化は予想されるが、重要なポジションを確保できると考えている」と自信を見せた。

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