公開日 2009/09/27 22:14

パイオニア「PDX-Z10」企画者が語る、製品にこめた思い

多様化する音楽の楽しみ方に応えるコンポ
インタビュー・構成:新保欣二
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CDやSACDに加え、DAPやネットワークオーディオなど、多彩な音楽をいい音で楽しむために生まれたマルチミュージックレシーバー「PDX-Z10」。本機の企画を担当した原田広一氏にお話をうかがった。


パイオニア(株)原田広一氏
パイオニア(株)
ホームエンタテインメントビジネスAV事業部企画部
オーディオ企画課
副参事
原田広一 氏





_ CDやSACDに加えてiPodやネットワークオーディオなどに対応したマルチミュージックレシーバー「PDX-Z10」が注目されています。この製品を企画した理由はどんなものだったのでしょうか。

原田 音楽を楽しめるメディアも、音楽を聴くスタイルも非常に多様化してきています。以前はCDを家の中や車の中で聴くというスタイルが中心でしたが、今はiPodなどの携帯音楽プレーヤーで聴かれている方が非常に多くなってきていますし、PCのハードディスクに音楽を溜めて聴かれている方もいらっしゃいます。またこれは日本独特の形態ですが、携帯電話にダウンロードした音楽を楽しむ方も増えてきています。最近ではCDを超える規格での音楽配信サービスも始まっています。こういった様々な形態の音楽を、いい音で楽しみたいというニーズが生まれてきています。「PDX-Z10」はこのようなニーズに応える製品として企画しました。

_ PDX-Z10の大きな特徴のひとつがネットワークオーディオに対応していることですが、それだけでなくCD/SACD用のドライブを内蔵し、FM放送やアナログディスクに至るまで楽しむことができます。しかもそれを15万円という手頃な価格の製品で実現していますね。なぜこのような構成と価格にされたのでしょうか。

原田 ネットワークオーディオ対応製品としては、リンさんのDSシリーズなどハイエンド機が存在しています。パイオニアでも一部のAVアンプではパッケージソフト以外の音楽ソースに対応できる機能を付けています。ただ、いずれも価格や使い勝手の面で手軽に聴けるというところには至っていませんでした。また、一台で従来から親しんできたCDやアナログディスクから最新の音楽ソースにまで楽しめる製品は存在していませんでした。

PDX-Z10はさまざまなメディアを手軽に楽しめる

何かを聴くためにどんな製品が必要なんだろうかとか、この製品で何が楽しめるんだろうということをお客様が調べなければいけないようなことでは、誰もが手軽に様々なメディアを楽しめるというわけにはいきません。

この問題を解決するためには、新旧様々なメディアにも対応できるアンプ内蔵型の一体型であることと、比較的手頃な価格は必須条件だと考えました。様々な音楽ソースを様々な人に、手軽にしかも高品位に楽しんでいただけることを目的にしています。

_ お客様はどうぞお好きなものを聴いてくださいということですね。ところでPDX-Z10は幅広い音楽ソースに対応する一方で、出力やグレードの点で割り切っている部分が見られます。

原田 PDX-Z10はハイエンド機としてではなく、リビングや書斎などで手軽に様々な音楽を良質に楽しめる世界を目指しました。たとえば、出力は50Wと実用的にほぼ十分であろうと思われるレベルにとどめています。音質面でもAVアンプのSC-LX90やスピーカーのEXシリーズのようなハイエンド機と同じというわけにはいきませんが、アンプ部では4層基盤を採用、グラウンドを安定化させるために基盤の配置に工夫を凝らすなど、ハイグレードなオーディオ製品のノウハウのエッセンスの投入で、音楽の楽しさを表現できるレベルに仕上げられたと思っています。

今回の製品でやり残した部を挙げるとすれば、対応サンプリング周波数です。本機ではネットワーク系の音源に対しては基本的に48kHzがMAXとなっていますが、それ以上のサンプリング周波数への対応については次の製品でチャレンジしたいと思っています。

_ PDX-Z10でここだけは絶対譲れないという部分はどこでしたか。

原田 ひとつはiPodのデジタル入力への対応。もうひとつはオーディオ機器としてのこだわりを出したボリュームノブとインシュレーターです。

_ Z10では一体型で様々な音楽ソースに対応しているので開発に相当苦労されたのではないかと思われますが。

原田 Z10ではアナログ入力回路も装備していますが、内部の信号処理はフルデジタルアンプで構成していますので信号処理の部分では比較的やりやすかったように思います。Z10では多彩な機能を一台の中に詰め込んでいますが、コンパクトなボディーに多機能を盛り込むことに慣れているシステムオーディオの開発チームがこの製品の開発にあたりましたので、この面でもそれほど大きな苦労はありませんでした。

ハードウェア的には比較的スムーズに開発できましたが、圧縮音声やリニアPCMなど様々なフォーマットで記録された信号を扱わなければいけないということで、ソフトウェアのエンジニアは相当苦労していました。

_ お客様からの反応はいかがでしょうか。


原田 想像以上に反応が良かったのは、オプションですがbluetoothに対応したことです。最近の携帯電話ではbluetooth搭載機が増えています。圧縮だし、アダプターも付けなきゃいけないしということでbluetoothに抵抗を持たれる方もいらっしゃいますが、一度体験されると評価が一変します。手元のiPodで好きな音楽を部屋中どこに持ち歩いてもヘッドホンなしに、しかも扱いなれた操作で音楽が聴ける便利さには感動を覚えるほどです。

_ 海外でもこの製品は販売されているのでしょうか。

原田 この製品の前身のPDX-Z9は国内ではスピーカーとパッケージで販売しましたが、ヨーロッパではスピーカーなしのレシーバータイプとして販売しています。ネットワーク対応、iPodなど幅広いメディアなどへの対応、ヨーロッパ人好みのシンプルなデザインが好評で、発売以来、順調に売れ行きを示しています。2008年にはドイツのハイエンドショーで「Value for Money」賞をいただきました。

_ 欧州でのネットワークオーディオへの関心はいかがでしょうか。

原田 日本ではようやくネットワークオーディオに対応した製品が出始めてきましたが、欧州の量販店では従来型のオーディオ機器とネットワーク対応のオーディオ機器が普通に並んでいます。欧州のオーディオジャーナリストの間では、「ネットワークはトレンドではない、もうマーケット(ビジネス)だ」といわれているほどです。

_ 今後のオーディオ機器のあり方や形態について、どのように考えられていますか。

原田 一つは今回のZ10のように様々な音楽メディアに対応するためのソリューションを一台にまとめるという考え方です。コンパクトさと使い勝手の簡単さで、手持ちの様々な音楽ソフトを手軽に楽しんでいただくための形です。また、ハイエンドオーディオファイルの方に向けたアンプ非内蔵の単機能タイプのコンポーネント・スタイルという形も考えられます。さらに、iPodや携帯でしか音楽を聴かないという方に向けては、余分な機能をそぎ落とした提案もあるかと思います。音楽を聴くためのメディアは、今、変化の途上にあります。それぞれの音楽の聴き方に合わせた形で、オーディオ機器を提案していく必要があるのではないでしょうか。

_ Z10の今後の発展形についての計画を聞かせてください。

原田 二つの主要テーマを持っています。一点目は、さらなる高品位コンテンツへの対応です。Z10ではサンプリング周波数は48kHzまでのコンテンツにしか対応できていませんが。すでに96kHzで送り出してくる高音質配信サイトもスタートしていますが、NAS経由でこれを受けようとすると排除されてしまいます。対応できない音楽ソースがあるということは、一台ですべてのコンテンツに対応するというZ10のコンセプトに反しますので、次の製品では対応できるようにしたいと思っています。

二点目はラインナップ化です。今はZ10一機種だけですが、ハイエンドやさらに手頃な価格帯の製品の投入で製品ラインナップ化を図って、ネットワーク対応オーディオ製品群にまで発展させていきたいと考えています。

将来に向けたいろいろなアイデアは膨らみますが、まずは、PDX-Z10の良さを多くの人に実感していただきたいですね。実際に聴いて、触っていただければ本機の良さを絶対に感じていただけるはずです。

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