TCL技術者が超ディープに解説!「なぜSQD-Mini LEDはRGB Mini LEDより優れているのか?」
カラーフィルターの“染料革命”。顔料からナノ染料へ
3本柱の2つ目、ウルトラカラーフィルターは、その名の通りカラーフィルターの刷新である。量子ドットが光源の段階で三原色の純度を高めるのに対し、カラーフィルターは画素レベルで光をふるいにかける。
技術者の説明によると、両者は表示の流れの中の別々の段階で働き、合わせてSQD-Mini LEDの色再現を作っている、と位置づけられた。
技術の核心は、着色材料の置き換えにある。従来の液晶用カラーフィルターは、粒径60〜80nmの顔料を樹脂に分散させる方式が主流だ。しかし顔料は粒子が大きいため、粒同士が固まってダマになりやすく、通す光の特性にも限界がある。
TCLはこれを、粒径5nm未満の染料分子に置き換えた。サイズにして実に92%の小型化となる。
染料は分子レベルで樹脂に溶け込むので、そもそもダマになりようがない。さらに分子構造の設計しだいで、フィルターが通す光の色の範囲を20%シャープにできるという。
フィルターを通った光から余計な色の混じりが取り除かれ、より澄んだ色が画面に届く、という理屈だ。
フィルター材料の中身も示された。硬化反応を強化する光開始剤、着色力と色純度を40%高めた新開発のナノ級染料、透過率を98%まで高めて耐熱性と黄変への耐性も強化した感光性アクリル樹脂、そして溶剤という構成である。
染料の純度は99.9999%。半導体材料並みの「6N」をうたう。この材料系で画面の透過スペクトルを最適化し、前段のスーパー量子ドットと組み合わせてBT.2020 100%を実現するとしている。
工程に関する説明も興味深かった。μmサイズの画素に対してこの材料を塗り分ける難しさを「髪の毛の上に絵巻物を彫るようなもの」と表現し、分子設計から実用化まで5年間・数千回の開発テストを重ね、テスト工程の8割以上でナノ級の精度管理が必要だったという。
質疑応答では、この染料材料についても質問が飛んだ。回答によれば、染料分子そのものは古くから研究されてきた材料だが、退色や耐熱性の課題からテレビ用カラーフィルターには使われてこなかった。
TCLは原料メーカーと共同で研究を重ねて実用化にこぎ着けており、「テレビへの導入は当社が初。今後は他社も追随してくる可能性がある」との認識を示した。
実際、染料系のカラーフィルター材料は、色純度と透過率で顔料系に勝る一方、光や熱への耐性の確保が長年の課題とされてきた領域だ。説明にあった「樹脂の耐熱強化」「黄変改善」は、まさにその弱点への手当てと考えられる。
パネルも進化。2mm台の狭ベゼルと視野角40%向上
3本柱と並んで、液晶パネル自体の進化も2点説明された。パネルはTCL傘下のディスプレイメーカー、TCL CSOT(TCL華星)との一体開発だ。
1点目は「SuperNB」と呼ぶ超狭ベゼル化。従来設計で6mmあったベゼル幅を2mm台へと55%縮小し、画面占有率99%を達成する。
これを支えるのは回路の微細化だ。パネル上に直接形成するゲートドライバー回路(Gate On Array)のサイズを50%縮小し、新しい回路構成で低温動作のマージンも5度拡大。信号配線は幅を40%縮小した。
露光工程の精度は「業界をリードする水準」とし、TFTの結晶粒サイズを25%、配線のラインを50%、スペースを25%縮小している。
一方でベゼルを狭くすると、外周からの水蒸気侵入リスクが高まる。そこでTCL CSOTと共同で新しい封止樹脂を開発し、透水率を30%低減、粘着力を40%向上させた。
側面封止工法も加え、60℃/湿度90%という環境下で2,000時間という「業界で最も過酷」とする高温・高湿試験をクリアしたという。

