TCL技術者が超ディープに解説!「なぜSQD-Mini LEDはRGB Mini LEDより優れているのか?」
SQD-Mini LEDの全体像。高画質のための統合システム
以上を前提にして、本題となる、SQD-Mini LEDとはどういった技術かが説明された。スライドに掲げられた式は明快だ。
「SQD-Mini LED = ウルトラカラーフィルター + スーパー量子ドット + 新世代エリア駆動バックライト」
TCLはこれを「Mini LED技術の大幅アップグレード」と位置づける。バックライトのエリア駆動を全域で精密化し、独自のスーパー量子ドットと新開発カラーフィルターを搭載。これにより有機ELを超える使用寿命、より良い色彩表現、より高いピーク輝度を実現し、同時に、RGB方式より安定した広色域と精密な光制御を備えるというのが、同社の主張である。
とりわけ「業界最高・最安定の100% BT.2020色域を画面全体で実現」したことを、最大の成果として強調した。
補足しておくと、BT.2020(Rec.2020)は非常に広い色域規格で、現行の民生ディスプレイでは面積比90%前後のカバーでも高水準とされることが多い。「100%」という数値は同社が測定したもので、 測定条件は各テレビメーカーで異なると同社技術陣も語っていたが、少なくとも同社の測定では、BT.2020をフルカバーしていることになる。
ここからプレゼンは、カラーフィルターと量子ドット、バックライトの3本柱について、それぞれの分野を担当する研究者にバトンを渡しながら掘り下げていった。
バックライトを支える4つの光学部品。「エリア駆動」はここまで来た
まずはバックライトだ。TCLはSQD-Mini LEDのバックライト技術群を「万象分区」(英語名:All-domain Halo Control)と呼ぶ。
担当研究者は「単一の部品ではなく、システムまるごとのアップグレード」と強調し、「1つのエリアで従来の複数エリア分の働きをする」「暗部の光制御は有機ELに匹敵し、小さな高輝度部分のピーク輝度は有機ELを超える」という。
ローカルディミングの宿命であるハロー(被写体の周囲がうっすら光る現象)の除去と、光のコントロールがテーマだ。具体的には4つの技術で構成される。
1つ目は、光の「発生」を担うLEDチップそのものの刷新だ。
このチップでは、6個の小さなLED発光素子を1つのチップにまとめて集積している。狙いは効率を高めることだ。
LEDには「どんな電流の流し方をするかで発光効率が大きく変わる」という性質があり、無理に大電流を流すと効率が落ちるという。
複数の素子をまとめて高い電圧で駆動する構成にすることで、1つひとつの素子を最も効率の良い条件で光らせられる。同じ電力からより多くの光を取り出せるわけで、これは輝度と省エネの両方に効いてくる。
そしてチップの上面には、DBR(分布ブラッグ反射器)と呼ばれる、ナノレベルの薄膜を何層も重ねた「鏡」が形成されている。
LEDをそのまま光らせると、チップの真上だけが強く光る「点」の光になってしまう。この薄膜の鏡が光を内部でいったん反射・分配して、面全体からムラなく光が出ていくようにするのだ。
さらに配光のパターンも、真上が最も明るい標準的なタイプ(配光角140°)と、あえて真上を抑えて斜め方向に光を多く配るバットウィング型(同160°)の2種類を使い分ける。後者は、チップの真上だけが明るくなるのを防ぎ、少ないLEDで画面を均一に照らすのに向いた配光だ。
これでチップを湿気や腐食から守る酸化アルミニウムの保護膜を、原子レベルの均一さでコーティングする。
技術者の説明では「チップは小型化すると水分・湿気に弱くなるため、被覆性の高い保護層が不可欠」と語られた。
チップを小さくすればするほど信頼性の確保が難しくなる、というトレードオフの関係を、半導体グレードのプロセスで解消するアプローチである。

