TCL技術者が超ディープに解説!「なぜSQD-Mini LEDはRGB Mini LEDより優れているのか?」
スーパー量子ドット。ノーベル賞も受賞した材料化学
3本柱の1つ目、名称の由来でもあるスーパー量子ドット(SQD:Super Quantum Dot)のパートは、このプレゼンで最も踏み込んだ内容で、材料化学の説明だった。
担当研究者はまず、量子ドットの基本特性を3つ挙げた。
粒子の大きさによって発光する波長を自在に調整できること。発光効率が非常に高いこと。そして発光スペクトルが鋭く、色純度が非常に高いことだ。
2023年のノーベル化学賞が量子ドットの発見・合成に貢献した3氏に贈られたことに触れ、「量子ドットなくして良い色彩なし」と強調した。
テレビにおける量子ドット層の役割は、青色Mini LEDの単色光を、純度の高いRGB三色光へ変換することだ。
スーパー量子ドットの成果は3つの数値で示された。色域が33%拡大し、色純度が17%向上。そして有害なブルーライトのエネルギーを45%改善するという。
つまり赤の発光波長を最適な位置に調整して色域面積を広げ、緑の発光スペクトルの幅を狭めて色の純度を高め、光源の段階で青色光の害を減らす、という3方向の改良である。
これを支える技術は2つあるという。
1つは合成プロセスの刷新だ。新しい反応系を採用し、「業界最高」という360度の高温で量子ドットを合成する。
スライドには、カドミウムと亜鉛の有機酸塩を熱した溶媒中で、セレンや硫黄の前駆体と反応させる合成スキームが図示された。
カドミウム系とみられる材料で、コア/シェル構造の量子ドットを高温合成する手法をベースにしつつ、耐高温性の有機リン系保護分子を併用することで、高温下でも粒子を守りながら結晶品質と発光効率を高めるという。
反応温度が高いほど結晶の品質は上がるが、粒子の制御は難しくなる。そこを保護分子と精密なプロセス制御で両立させ、クリーンルーム内で粒のサイズがそろった量子ドットを作り出す。粒のサイズがそろえば、発光波長がそろい、色純度が上がるという寸法だ。
もう1つは構造の刷新である。研究者は「SQDは単純な改良ではなく世代交代」と表現した。
従来の一般的な量子ドットが「発光効率の低い結晶+シンプルな保護層」という構造なのに対し、SQDでは高効率発光材料のコアに、電子を閉じ込める緻密な層、水と酸素を防ぐ合金の保護層、表面を安定化させる層が幾重にも包む多層構造を持たせたという。
結果として発光スペクトルの半値幅(スペクトルの幅を表す指標)は、一般のものの25nmに対して22nmまで狭まり、色純度で上回る。同社の従来世代「QD Pro」との比較では、色度図上の色域面積が31.8%拡大し、これによってBT.2020を100%達成したとする。
信頼性面では「光のシールド」と呼ぶ封止技術も加わった。量子ドットは水分と酸素に弱い材料だ。SQDでは量子ドットをシリコン系材料のナノサイズのかご状構造の中に封じ込め、水と酸素を分子レベルで遮断して長寿命化を図っている。「有機ELより長寿命」という同社の主張は、この封止技術が根拠になっている。

