TCL技術者が超ディープに解説!「なぜSQD-Mini LEDはRGB Mini LEDより優れているのか?」
PG-Lab テストルームではこんなテストが行われている
技術説明会の会場となった研究開発棟では、SQD-Mini LEDを生み出した現場である「盤古実験室(Pangu Lab)」の内部も見学することができた(内部は撮影不可だった)。
案内役の技術者いわく「私たちのすべてのソリューションは、この実験室から製品へとアウトプットされる」という。承認を得た者だけが入れる研究開発エリアの中に、役割の異なる3つの実験室が並んでいる。
1つ目の部屋に置かれていたのは3Dプリンター群だ。マイクロレンズやリフレクターといった光学部品の試作を、設計データからその場で形にするための設備とみられる。
2つ目はMini LEDバックライトの光学テストを行う実験室だ。そして3つ目が光学部品の実験室で、LED光源などの取り付けや試験が行われていた。
3つ目の部屋でひときわ目を引いたのが、TCLが自ら開発したという、LEDの性能を測定するための巨大な球体状の測定機器だ。
光源をすっぽり包み込んで光の総量を測る、いわゆる積分球タイプの測定器だろう。市販品を買うのではなく測定器から内製してしまうところに、この実験室の徹底ぶりが表れている。
実験室のほかにも、材料の純度を検証するための部屋や、TCLがこれまでに作ってきたLED基板がすべて保管されている部屋もあった。説明会で紹介された「10年以上・10万枚超の配光データベース」は、まさにこの蓄積の産物だろう。
シミュレーションで配光を設計し、3Dプリンターで試作し、部品を組んで、球体測定器で検証する。開発ループが、この一角でぐるぐる回っているのだ。
取材を終えて。「普通の液晶」と何が違うのか
最後に、当日のかなりディープな説明を、一般的な液晶テレビと比較しながら整理しておきたい。
普及価格帯の液晶テレビは、白色LED(青色LED+黄色蛍光体)のバックライトに、顔料方式のカラーフィルターを組み合わせる。色域は映画向け規格DCI-P3を部分的にカバーする程度で、ローカルディミングは非搭載か、あっても少ないエリア分割数にとどまる。
これに対しSQD-Mini LEDは、光源(青色Mini LED+発光の鋭い量子ドット)、光学系(マイクロレンズ、一体成型リフレクター)、フィルター(ナノ染料)、制御(AIローカルディミング+色変換)という表示の流れの全段を置き換えている。「単品技術の追加」ではなく「システム全体の再設計」と呼ぶほうが実態に近い。
量子ドットを使わない広色域液晶では、特殊な赤色蛍光体で色域を広げる手法も一般的だが、蛍光体の発光スペクトルは量子ドットほど鋭くできず、BT.2020級の色域には届かない。
量子ドット方式の中でも、量子ドットの発光スペクトル幅を22nmまで狭め、さらにカラーフィルター側も染料化してスペクトルを整えるという「光源とフィルターの両面作戦」は、業界的に見ても先端的な取り組みといえる。
一方で留意点もある。「BT.2020 100%」「業界最高」「世界初」といった表現は自社測定・自社定義に基づくものだ。技術者にその点を尋ねたが、「確かに各社で測定方法や環境は異なっている」と述べていた。またRGB方式に対する批判についても、RGB方式を採用している側には、それ相応の反論があるはずだ。
実際にTCLもRGB-Mini LEDパネルを作っているし、来年から合弁会社で事業展開するソニーも、TCL CSOTと共同開発したRGB-Mini LEDテレビを販売している。方式の優劣は片方の説明だけでは決められないし、そもそも製品や世代ごとに移り変わるものということを理解しておきたい。
それでも、テレビメーカーが量子ドットの合成温度や保護分子、カラーフィルターの染料の分子構造まで開示して技術力を語るのは異例のことだ。
パネル(TCL CSOT)から材料、光学部品、アルゴリズムまでを垂直統合で展開している同社の開発体制の厚みを、まざまざと見せつけられた説明会とデモンストレーションだった。

