数多くの新規格に対応する発展性も頼もしい

10万円以下AVアンプの大本命! デノン「AVR-X2600H」のサウンドは“柔と剛”を兼備する

大橋 伸太郎

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2019年07月09日

続くチャプター2のナイトクラブ。2人が出会うシーンの「ラ・ヴィ・アン・ローズ」。野外コンサート会場と対照的な穴蔵的ナイトクラブの音場をアリーの歌が支配し染め上げていく。レディー・ガガの力強い声と音場への浸透力が生み出す聴衆との一体感が重要になる場面だが、ここでAVR-X2600Hのアンプとしての地力がものをいう。心臓の鼓動のような官能的ベースは特に聴きどころだ。ひ弱なアンプではこの低音の脈動感が生まれず、今ここで恋が生まれたことが伝わらない。

ベーシックな7chパワーアンプ構成を、上位モデルの技術で磨き上げた地力豊かなAVアンプだ

チャプター5、野外コンサートのリハーサル。PAから流れる演奏やアナウンスが太く分厚く、音圧が違う。これがプロの音出しだ。こうした音楽の「現場感覚」が本作の音響設計の肝なのだが、プロに信頼されるデノンのアンプらしく、エネルギッシュで太く逞しい音でよく応えている。

一気にラストシーンの「アイル・ネヴァー・ラブ・アゲイン」。過去のリメイク同様、亡き夫へ捧げるフィナーレで全編の華。センターチャンネルだけで歌声を受け持つのでパワーアンプの解像力とFレンジの試金石となる。レディー・ガガは地声の太い歌手にしばしばみられるファルセットで声量が落ち声質が変化するタイプだが、本機では薄味にならずかえって情感の滴るいい歌声を聴かせる。アンプの弱音表現と肉声の質感表現が冴え、ドラマの閉幕をしっかりと支えた。

AVR-X2600Hでもう1本じっくりと視聴したUHD BDが『ボヘミアン・ラプソディ』。こちらも音楽映画だが、今回の視聴ではドラマ部分でのきめ細やかな表現力にも強い印象を受けた。

一例を挙げると、カントリーハウスにメンバーが合宿して「オペラ座の夜」を録音するシーン。バンドの煮詰まった関係からフレディが抜出し自然を散策すると天からの啓示のように「ボヘミアン・ラプソディ」のモチーフ(ピアノのリフ)が聞こえてくる。雲間から奇跡が顕われたような音場とフレーズの描き方がポイントなのだが、AVR-X2600Hのサラウンド音場はS/Nとセパレーションに優れオブジェクトを音場に定着させる手際が繊細かつ鋭敏だ。ノイズフロアが下がったので小音量でも重要な情報がマスクされず、サウンドデザインに込められた演出とメッセージを視聴者が聴き漏らすことがない。



AVR-X2600Hは価格的にはエントリー〜ミドルクラスに位置付けられるモデルだが、デノンらしく柔と剛を兼ね備えているAVアンプだ。アンプの基本を成す電源回りと回路設計、パーツの選択に上位機種ゆずりのリソースを注ぎ込み改良を施し、地力の部分が躍進したことが確認できた。

7ch構成のベーシックなAVアンプだが、内蔵パワーアンプの台数を欲張らず、イマーシブサウンド5.1.2まで余裕をもってのびのびと力感豊かに鳴らすコンセプトに共感を覚える。チャンネルベースの5.1ch再生からから始め、アップデート対応するDolby Atmos Height Virtualizerでイマーシブを体験し、次にトップスピーカー(ハイト/イネーブルド)を追加できるという発展性も頼もしい。

(大橋 伸太郎)

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