同社技術を結集した最上位機の実力を検証

オーディオテクニカの旗艦ヘッドホン「ATH-ADX5000」レビュー。ハイエンドアンプ5機種と組み合わせテスト

山之内 正

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2018年02月21日
<組み合わせ4>OCTAVE「V16 Single Ended」
アンプの個性が際立つ組み合わせだが、一度聴いたら忘れられない強い浸透力がある

最後に聴いたオクターブのV16は、シングルエンドの真空管アンプという異色の構成で、筐体の形もミニタワー型とかなり珍しい。回路方式から帯域幅や残留ノイズに制約がありそうに感じるが、そこは独自の工夫で見事に解決し、妥協のない現代のアンプに仕上がっている。今回は強化電源の「Black Box」をつなぎ、バランスとアンバランス各出力をほぼ均等に聴いた。出力管は標準仕様のKT120を用いている。


OCTAVE V16とATH-ADX5000
残留ノイズが気にならないと書いたが、そこにまったく誇張はない。ATH-ADX5000の微小信号の再現性の高さとあいまって、最初の第1音から広大なダイナミックレンジに圧倒される。コンセルトヘボウ管のマーラー「復活」はライヴ録音の臨場感が圧巻で、同ホールの密度の高いホールトーンのなか、鋭く切り込む低弦の音圧感と重量感に圧倒される。ボリューム位置は9時前後で聴いたが、それでも低音はマッシブで芯があり、十分すぎるほどの音圧が得られる。

他のアンプで聴いてきたATH-ADX5000の音はニュートラルな音調を基本としながら表情の豊かさと音源ごとの個性を忠実に引き出すというものだったが、V16のサウンドは最初から最後までアンプの存在と音の個性を強く感じさせ、その支配力の強さは有無を言わせない。


今回唯一の真空管方式だったV16。ATH-ADX5000自体は非常に素直な音調のヘッドホンであるだけに、アンプ側の支配力の強さが際だった
ジャズのライヴ音源はオーケストラ以上に楽器の実在感が強く、旋律楽器の密度の高い中音域を中心に生々しいサウンドを繰り出す。支配力の強い音であることは疑いようがないが、あえてそのサウンドに浸りたいと思わせる強い魅力があることもたしかだ。V16で鳴らしたATH-ADX5000の音には一度聴いたら忘れられないほどの強い浸透力があるので、試聴するにはそれなりの覚悟をしておいた方がいい。



ATH-ADX5000は5台のヘッドホンアンプそれぞれの個性を鮮やかに描き分け、ハイエンド級アンプならではの表情豊かなサウンドを想像以上に鮮やかに引き出した。アンプを変えたときの音調と表情の変化は期待したよりも大きなもので、それによって思いがけずアクティブな面を垣間見せたり、ステージが1つ上がったような音を引き出したりと、聴き比べる楽しみが増す瞬間も少なくなかった。

繰り返すが、ATH-ADX5000自体は非常に素直な音調のヘッドホンである。それだけにアンプの特徴がストレートに出てくるという面もあるが、それ以上に重要なのは、音源ごとのサウンドの個性や録音のクオリティを忠実に再現する能力の高さである。ドライバーやハウジングの構造と素材を工夫することで共鳴や固有音を最小に抑え、開放型の良さを最大限に引き出すことに成功したメリットはきわめて大きい。

ATH-ADX5000で実現した素直で反応の良いサウンドが、オーディオテクニカの次世代の音として進化し、他の製品にも浸透していくことを強く期待したい。

(山之内 正)

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