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同社技術を結集した最上位機の実力を検証

オーディオテクニカの旗艦ヘッドホン「ATH-ADX5000」レビュー。ハイエンドアンプ5機種と組み合わせテスト

2018/02/21 山之内 正
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オーディオテクニカが開放型ヘッドホンのフラグシップとして投入したATH-ADX5000は、素材と構造の吟味を重ねる本質的アプローチで基本性能の底上げを図った製品として強い関心を集めている。筆者も何度か試聴の機会があったが、そのときどきで新しい発見があり、潜在能力を秘めた奥の深いヘッドホンであることを思い知らされた。

ATH-ADX5000(予想実売価格¥238,000前後)

あるときはモニターヘッドホンのような精度の高いサウンドで演奏の細部を克明に描き出し、また別の曲ではエモーショナルな表情をたたえた密度の高い音で聴き手を虜にする。表現の幅の広さ、そして音色を描き分けるパレットの大きさは半端ではない。その秘めたるポテンシャルをどこまで引き出せるのかを知るために、フラグシップ級ヘッドホンアンプを集結。ATH-ADX5000から究極の音を引き出すのはどのアンプなのか、検証を進めていこう。組み合わせたヘッドホンアンプは以下の5機種だ。

・LUXMAN「P-750u」 ¥300,000(税抜)

ラックスマン「P-750u」(¥300,000/税抜)

・OJI Special「BDI-DC44B G-Tuned」 ¥958,000(税抜)

OJI Special「BDI-DC44B G-Tuned」(¥958,000/税抜)

・Questyle「CMA800R-G/LTD」 ¥OPEN(予想実売価格359,800円前後)/1台
 ※バランス駆動は、同機をモノラルフルバランスモードで2台用いて再生

Questyle「CMA800R-G/LTD」(予想実売価格¥359,800前後/1台)

・Goldmund「Telos Headphone Amplifier THA2」¥1,980,000(税抜)
 ※本機のみUSB-DACを内蔵。試聴も本機のUSB入力を用いた

Goldmund「Telos Headphone Amplifier THA2」(¥1,980,000/税抜)

・OCTAVE「V16 Single Ended」¥1,200,000(税抜)
 ※専用強化電源「Black Box」(¥163,000円/税抜を使用)

写真奥がOCTAVE「V16 Single Ended」(¥1,200,000/税抜)。手前は専用電源「Black Box」

用意した5台のヘッドホンアンプはいずれも国内と海外の名門ブランドを代表する製品で、ヘッドホンアンプとしては異例の高価格モデルも含まれる。価格に制約を設けなかったので、現実的とは言いにくい高価格システムになってしまうケースもあるが、ATH-ADX5000の真価を見きわめることが目的なのでご容赦いただきたい。同様の理由からヘッドホンアンプ側の条件もあえて揃えず、各機がその性能を発揮できる条件を選択して試聴した。なお、トランスポートにはfidata「HFAS1-S10」、USB-DACにはCHORD「DAVE」をそれぞれ使用した。

リファレンスのUSB-DACとして用いたCHORD「DAVE」(¥1,500,000 /税抜)

また、今回はATH-ADX5000の性能を最大限に引き出すために、バランス出力に対応したヘッドホンアンプについては、オーディオテクニカ純正のA2DCコネクター搭載バランスケーブル「AT-B1XA/3.0」を用意し、バランス駆動も試した。

XLR 4pin端子を備えた専用バランスケーブル「AT-B1XA/3.0」(予想実売価格¥40,000前後)

アンプをラックの上段に設置し、次々と入れ替える形式で聴取した


<組み合わせ1>LUXMAN「P-750u」
ATH-ADX5000から力強い低音を引き出す。立ち上がりが鋭いが付帯音は皆無

最初にラックスマン「P-750u」との組み合わせを聴く。「P-700u」の後継として登場した同社のフラグシップ機で、高精度な音量調整回路の「LECUA」を従来モデルから継承。フルバランス構成のアンプ回路は最新世代の「ODNF4.0」に更新され、電源回路も強化された。

ラックスマン P-750uとATH-ADX5000

バランス接続時はもちろんのこと、アンバランス接続時にもS/Nを大幅に改善している点も見逃せない。4pinのXLR出力を新設したので、別売バランスケーブルがそのまま使えるメリットも大きい。

P-700uもそうだが、ラックスマンの最上位モデルで駆動すると、ヘッドホン再生らしからぬスケールの大きさと安定した低重心の周波数バランスをもたらし、安心して音楽に浸ることができる。P-750uはその安定感がさらに向上した印象で、ATH-ADX5000から実体感豊かな力強い低音を引き出してきた。

ガッティ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のマーラー交響曲第2番「復活」(DSD5.6MHz)では低弦の立ち上がりに遅れがなく、鋭く切り込むヴァイオリンやヴィオラとのリズムの応酬が見事。松脂の粒子が見えるような表面的な派手さではなく、速い音形同士がガッチリ噛み合うことで推進力を生む様子が生々しい。テンションの高さが刺激的だが、神経を尖らせるというより、心地良さを感じるところが面白い。

次ページしっかりした定位と共に現れる組み合わせ毎の個性

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