同社技術を結集した最上位機の実力を検証

オーディオテクニカの旗艦ヘッドホン「ATH-ADX5000」レビュー。ハイエンドアンプ5機種と組み合わせテスト

山之内 正

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2018年02月21日

CMA800R-G/LTDと組み合わたときの第一印象は「繊細な音」という形容が一番ふさわしい。ピエモンテージが独奏を弾くモーツァルトの「ピアノ協奏曲第26番」(FLAC 192kHz/24bit)から階調豊かなピアノの音色を引き出しつつ、弦楽器と木管楽器のニュアンス豊かな表情に思わず引き込まれる。

室内オーケストラならではの見通しの良い響きのなか、ピアノやオーボエの旋律がゆったりと浮かぶ。輪郭の強調感や粒立ちを際立たせる気配はまるでなく、マーラーであれほどテンションの高い音を聴かせた同じヘッドホンが、ここでは極上の柔らかい響きを再現する。表現のレンジの広さは驚くばかりだ。

1台のみのシングル接続でも、基本的なキャラクターである繊細さは失われなかった

アン・サリーが歌う「めぐり逢い」は、声のイメージが自然な大きさに引き締まり、ギターとチェロは声よりもゆったりとした響きで空間を満たす。この曲も繊細な雰囲気をたたえているが、それに加えて楽器ごとの音像や音色の違いを忠実に再現する精度の高さがそなわっていると感じた。ジャズのライヴ録音(FLAC 192kHz/24bit)を聴くと各楽器の音像定位が鮮明でにじみが非常に少ないことに気付くが、これはモノラル構成ならではの長所と考えていいだろう。


<組み合わせ4>Goldmund「Telos Headphone Amplifier THA2」」
オープンで広々とした音場は、スピーカー再生の立体感と空間表現に肉薄

次に聴いたゴールドムンドの「Telos Headphone Amplifier THA2」のみ、今回用意したヘッドホンアンプの中でUSB入力を備えている。アナログ入力も備えているが、試聴の条件は他機と変わることを前提にUSB入力を使用した。独自のデジタル補正回路の効果を最大限に引き出すにはデジタル入力が適切と考えたからで、本機の仕様上の制約からアンバランス接続で試聴を行ったことも他の製品との大きな違いである。

Goldmund THA2とATH-ADX5000

ゴールドムンドの設計思想を忠実に反映しているとすれば、本機の再生条件の制約が不利にはたらくことはないはずだ。シンプルだが完成度の高いデザインは他の追随を許さない高級感があり、アンプとしての格の高さをアピールする。

実際にATH-ADX5000をつないで最初に聴いたショスタコーヴィチの「交響曲第15番」(ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団、DSD2.8MHz)の再生音は、空間再現力の高さと音楽的なバランスの良さが際立っていて、ATH-ADX5000の潜在能力をフルに引き出していると感じさせた。

この録音をスピーカーで再生したときの聴きどころの一つが前後と左右それぞれの深々とした遠近感なのだが、ATH-ADX5000とTHA2が引き出すオープンで広々とした音場は、そのスピーカー再生の立体感と空間表現に肉薄する表現力を印象付ける。打楽器を含むすべての楽器の音色やアタックを正確に鳴らし分ける能力も格別で、スコアを開かなくても楽器の種類や奏法を正確に言い当てられるほどの精度の高さがある。

本機のみUSB-DACを内蔵するため、この内蔵DACを使用。ADX5000から広々とした音場を引き出した

アルネ・ドムネラスのジャズライヴ録音(FLAC 192kHz/24bit)を再生しながら音場補正の効果を確認してみよう。同回路のオン・オフは空間再現に変化をもたらし、この音源のようなアコースティックな録音ではサウンドステージの広がりが確実に向上する。

不思議なことにステージが広くなっても密度は下がらず、サックスやヴィブラフォンのソロはむしろ実在感が高まる方向の変化を聴き取ることができる。高価格モデルではあるが、優れたDACとデジタル補正回路を活用できることを考えれば、この価格もそれなりに納得がいく。

ATH-ADX5000はヘッドホンアンプの違いを如実に描き出す

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