モノラルパワーアンプ「AFM70」も発表

【HIGH END】聴覚と脳の認知から音質を追い込む。イタリアのアンプブランド、リビエラのキーパーソンに訊く

公開日 2025/06/10 06:35 山之内 正
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独自の設計思想を誇る真空管アンプブランド・リビエラ

イタリアのRIVIERA(リビエラ)はアンプメーカーとしての歴史は浅いが、独自の設計思想と美しいデザインが強烈な存在感を発揮し、世界規模でファンが増えている。ナポリからブレンナー峠を越えてミュンヘンに着いたばかりという二人のキーパーソン、ルカ・キオメンティ(CEO兼チーフエンジニア)とシルビオ・デルフィノ(社長兼セールスマネージャー)がブランド創設の由来と技術的なこだわりを熱く語ってくれた。

リビエラのキーパーソン。左が開発担当のルカ・キオメンティさん、右が社長のシルビオ・デルフィノさん

ーーオーディオとの関わりをまずはルカさんにお尋ねします

ルカ・キオメンティ 私は音楽が大好きなエレクトロニクスのエンジニアです。この2つへの興味は45年以上続いていて、アンプ、スピーカー、ケーブルの開発に携わりつつ、楽器の演奏も続けてきました。楽器は主にフルートを演奏します。

ーー製品開発のキャリアが長いですね。

ルカ 特定のメーカーのほか、自分でも会社を作ってターンテーブルの研究もしましたが、真空管アンプの開発が一番多いですね。

ーーシルビオさんの経歴を教えて下さい。

シルビオ・デルフィノ 私は1980年代から90年代にかけてオーディオ専門誌の編集長をつとめた後、オーディオ業界のコンサルト業務に携わり、ハイエンド・オーディオショップとも関わりがあります。欧州だけでなく、各地のオーディオ市場にも精通していますし、日本にも仕事でよく出かけましたよ。

ミュンヘン・ハイエンドにおけるリビエラのブース

ーーお二人はリビエラ創立前からのお知り合いだったんですね?

シルビオ はい、25年以上も前からなにか二人でやりたいねとアイデアを交換していたんですが、それが実現したのは約10年前のことです。

ーー製品作りの姿勢、哲学が一致したんですか?

シルビオ その通りです。どんな音を目指すかという話はルカが説明しますが、私からはデザインについてお話しましょう。オーディオ機器は外観が美しいことが非常に重要だと考えています。最初にひと目みて気に入らないものは、音を聴く気になりませんよね。聴かないと良いか悪いかわからないのに、最初から聴いてもらえないのでは意味がありません。基本的にはクラシックでモダンな意匠にこだわっていますが、けっしてモダンすぎないことが大切で、クラシックだけど古くは感じないという点も大事です。私たちは少なくとも10年はこのデザインを変えません。

ーーオレンジをブランドのイメージカラーにしていますね。

プリアンプ「APL-1」(上)とパワーアンプ「AFS32」(下)。内装にはオレンジがあしらわれている

シルビオ 二人ともこの色が大好きなんですよ。

ルカ でも外観に使うことは良くないと思っているので控えています(笑)。外からはほとんど見えませんが、内側にはオレンジをたくさん使っています。

ーーリビエラという社名の由来も教えて下さい。

 シルビオ リビエラは「海岸」を意味する一般名詞で、イタリアにはいたるところに「リビエラ」があるんです。北部、ナポリ近郊、南部にも有名な海岸があります。私は北部の海岸地域の出身でルカはナポリの海岸で育ちました。ほかにもいろいろな「リビエラ」が関係しているので、それなら社名もリビエラにしよう!ということで決めました。ちなみに弊社はナポリでは唯一のオーディオメーカーだと思います。

 

聴覚の特性を知らなければ測定結果を理解できない

ーールカさんは聴覚と脳の認知を理解することがアンプの音質改善に重要と主張されています。

ルカ 25歳の頃から聴覚と認知の相互作用、そして歪との関係について研究してきました。その理由は耳が作り出す歪(ハーモニクス)の形にあり、アンプの歪みをそのハーモニクスのスペクトラムに近付けると、歪のない音として脳が認知することができます。つまり、ハーモニクスの形を整えることがとても重要なんです。その形状と異なる歪は私たちが自然と感じるものとは関連がないので、脳が有害な歪と認識してしまうんです。

ーーシングルエンドの回路を採用したり、無帰還回路にこだわる理由はそこにあるのですか?

ルカ そうです。シングルエンドは耳が生成する歪と非常に近いんです。でもシングルエンド単独だと、耳には良いのですが、スピーカーを適切にドライブするには不十分です。そこで、私たちが作るアンプはシングルエンドのドライバー段とMOSFETの出力段を組み合わせています。後段の増幅段はスペクトラムの形を変えないことが重要です。真空管は適切なスペクトラム形状を出力しますが、MOSFETの出力段はハーモニクスを追加したり減らすことなく増幅するのです。

ーー開発の過程でリスニングと測定のどちらを重視していますか?

ルカ 耳で決める割合がずっと大きいです。どちらも大切ですが、より重要なのはリスニングです。聴覚の特性を知らなければ測定結果を理解することはできません。数値だけ見ても、それが何を意味するかを理解できないんです。いま何をやっているのかを理解するために測定は不可欠ですが、まずはリスニングからスタートし、最終的にも耳で判断する。それが私たちの重要な設計哲学です。

ーーチューニングで音を追い込むときはいろいろな音楽を聴くと思いますが、音楽ファンとして特に好んで聴くのはどんな音楽ですか?

ルカ 個人的にはバロック音楽をよく聴きますが、ジャズと現代のクラシック作品も好んで聴きます。

シルビオ 私はロマン派のクラシック音楽はあまり好きではない(笑)。オペラはモーツァルトまでならOK。それ以降はあまり……あと私の世代はみなそうですが、ロックもよく聴きます。

ーー今回のショウではモノラルパワーアンプのAFM70を発表しました。

モノラルパワーアンプの「AFM70」を発表!

ルカ 8Ωで70W、4Ωで140Wの出力を確保したモデルで、真空管とMOSFETのハイブリッド構成や無帰還設計など、基本的な設計思想は上位機種のAFM100SEやステレオ仕様のAFM32と共通です。すでに生産を開始していて、6月末には市場に導入する予定です(日本導入時期は未定)。
真空管には「12AU7」が採用されている

ーー生産体制にも興味があります。

シルビオ 金属加工が必要な部品と塗装工程以外はすべてナポリの自社ファクトリー内でハンドメイドで行っています。5名の社員と外部スタッフでアセンブルまで行いますが、そのほかに私は外部オフィスを所有しています。ただし、設計と音の追い込みはルカ一人だけで進めます。すべての製品の音が同じでなければなりませんから、複数のメンバーでは成立しないんです。そうした私たちのモノ作りの姿勢はとても重要なことだと考えているので、これからも開発を急がず、ゆっくりと取り組んでいきます。

ーーどうもありがとうございました。

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