麻倉怜士氏が現地からレポート

<CES>イタリアVolumio、ストリーミングを“横断検索”&音質強化の専用アプリ「CORRD」発表

公開日 2025/01/16 12:13 麻倉怜士
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CESで私が注目したのは、ヴェネツィアンホテル横のサンズ エクスポ&コンベンションセンターで開かれている、世界中のスタートアップが集合するイベント、ユーレカ・パークだ。ここは個別企業に加え、国別グループで小さな会社が集団で出展している。

イタリアブースを見回っていたら、「Volumio」と小さく書かれた小間が目に止まった。「私のボリューム」の意のVolumioといえば、わが国にも紹介されているデジタルオーディオ機器メーカーではないか。ネットワークプレーヤー、ネットワークトランスポートなどコンポーネントでは、しゃれたイタリアンデザインと高音質が人気を博している。 

世界中のスタートアップが集結するユーレカ・パークにて、イタリア・Volumioが出展!

創業者でCEOのミケランジェロ・グアリゼ氏に話しかけたら、スマホ、タブレット用のストリーマーアプリ「CORRD」の開発が大詰めに来ているということだ。CORRDとは英語のケーブルから来た言葉。サービスとユーザーを、がっちりコネクトするという意味だ。ただいまベータテスト中のアプリをスマホ画面で見せてもらうと、何やら秘密がいっぱい詰まっていそうだ。

CEOのミケランジェロ・グアリゼ氏に新アプリ「CORRD」のポイントを聞く!

では、最初の質問。これまでもっぱらハード機器をつくっていたのが、なぜスマホアプリに?

「ハード機器では、Volumio製品の素晴らしさは限られたユーザーしか享受できません。でもアプリならば、世界中でユーザーはまさにアンリミテッドです。ハード製品で、何百万人という人々にリーチすることはできませんよね」

現在ベータ版を公開中のアプリ「CORRD」

確かに。でも、オーディオメーカーがつくるアプリとして、他の一般的なプレーヤーアプリとどう違うのでしょうか。

「私たちの使命は最高の音楽体験をユーザーに提供することです。われわれは音の良さで評価されるオーディオ企業です。だから、その名に恥じない音質と機能性をアプリに持たせなければなりません。

まずは音質です。大事なのは、“音を良くすることはしない。音を悪くしないようにする”ということです。なぜなら、音は操作した瞬間にクオリティが落ちてしまうからです。音でもっとも大切なのは時間軸の正確さです。感動を受け取るために、タイミングは超重要なのです。

私はVolumioを2013年に創立しました。これまでの10年以上のオーディオづくりの経験から、音質イコール時間軸だと強く認識しています。だからスマートフォンのアプリでも、送られてくる信号に対して、正確な時間再生を行うように努めました」

「CORRD」のベータテスト中アプリを体験

時間軸管理は、ハードコンポーネントでもソフトのアプリでも確かに、正解だ。では機能性はどうか。

「体験の質を上げることにこだわりました。まず一覧性です。特定のサービスでなく、Spotify、TIDAL、Qobuz……などユニバーサルに多くのサービスに対応します。複数のアプリを開く必要がなく、CORRDだけで複数サービスと接続できます。

次に推薦アルゴリズムです。AIを活用したパーソナライズ推薦により、気分に応じたプレイリストを、サービス横断で提供します。リラックスしたい、気分を変えたい、ジョギングのお供、仕事のバックグラウンド、体操をしながら、料理しながら……という、いろいろなシチュエーションに適したプレイリストを、サービス横断で即座に作成してくれますよ。音楽を聴くことは感情的な体験です。あなたが音楽で浸りたい感情を選択できることが重要だと考えているのです」

なるほど。感情に即したプレイリスト編成は、結果的に新しい音楽、アーティストを発見することにもつながる。

ところで、イタリア発のオーディオって、聞くだけで魅力的だ。音質の良さだけでない、文化的、芸術的なバックグラウンドがあるに違いない。Volumioが本社を置くフィレンツェはイタリア文化の中心であり、職人技と歴史の豊かなタペストリーに彩られた街。その中にあって「音のイタリアらしさ」をどう捉えているのだろうか。

「それはとても良い質問ですね。イタリアには美学に対する感性がある。私は、音楽の美学を守りたいと考えています。それはとりもなおさず、“私の音”にするということです。誰の音でもない、私の音こそ、Volumioの音なのです。もちろんCORRDもそうです。ストレスを感じさせず、疲れさせず、全体的なハーモニーのバランスを保ちながら、可能な限りディテールを再現するのが、私の音。サウンド・シグネチャーなのです」

そこまで言われるなら、ぜひ聴いてみたいものだ。すでにCORRDはベータテストの段階に入っており、日本からのテスト参加も可能という。テストの段階は無料だが将来、有料になると、音声入力などの新機能を追加する予定だ。「イタリアの音楽美学」が反映されたCORRDの音は大いに聴きものであろう。

Volumioの現在の主力ラインナップ。上から「RIVO」(トランスポート)、「PRIMO」(プレーヤー)、「INTEGRO」(アンプ内蔵プレーヤー)

昨年発表されたVolumioのフラグシップネットワークプレーヤー「MOTIVO」

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