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音質を優先した回路設計

【試聴レポート有】新日本無線、フラグシップオペアンプ「MUSES05」を量産開始

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ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
2021年06月23日
新日本無線(NJR)は、オーディオ専用半導体デバイス「MUSES(ミューズ)」シリーズの最新フラグシップとなるオペアンプ「MUSES05」の量産開始を発表した。この「MUSES05」のサウンドをいち早く新日本無線の川越製作所で試聴できたので、その模様をレポートしよう。

新日本無線より発売となる「MUSES05」

新日本無線は、1959年に設立された会社で、車載用や産業用機器、そしてオーディオビジュアル向けの半導体の生産、販売を行っている会社である。現在は、埼玉県の川越製作所で半導体のいわゆる「前工程」(ウェーハ上に回路を形成)を担当、「後工程」(組み立て、パッケージング)は佐賀のほか、タイの工場で行っているという。

「MUSES」シリーズは2009年よりスタートした「高音質」を追求するための半導体ブランドで、「原音に忠実な音」を目指し、さらに感性に響く音を実現するべく開発されたものだという。1977年に発売されたオーディオ用オペアンプ「NJM4558」は音質面でも高い評価を受けグローバルにヒットを飛ばしたものの、その後価格の下落や類似品の出回りを受け、さらなる「高付加価値ラインアップの強化」を目指して2000年代半ばより開発を本格化させた。

MUSESシリーズのロゴ

MUSESシリーズには「フラグシップモデル」と「量産対応モデル」の2ラインを用意しているが、今回登場した「MUSES05」はフラグシップラインの最新モデル。サイズもこれまでの「MUSES03」よりさらにひと回り小さく、まさに爪先程度の大きさ(4.5mm×5.0mm)となっている。

MUSESフラグシップラインの特徴として、音質を優先した回路設計がなされていることに加え、ICのリードフレームに「高純度無酸素銅」を採用していることが挙げられる。オーディオグレードのケーブルが導体のグレードにもこだわって選定されているのは周知の通りだが、オペアンプの内部においても高品位なパーツによって音が変わるというのは驚きだ。

無酸素銅によるリードフレーム

また、MUSES05はJFET入力で1回路搭載となるが、入力段と出力段を分離した2チップ構成となっており、相互干渉を排除。またフルバランス型差動増幅回路により、応答性、ダイナミックレンジ、歪率の特性などを向上させているという。

MUSESシリーズの開発においては、やはり国内外のハイエンドオーディオブランドとの密な情報共有が欠かせないという。スペック的にクリアしなければならない基準についてはもちろん、ブランドがどのようなサウンドを求めているのか、音質のためにどこまで「踏み込んだ」設計ができるかなどを日々ディスカッションを重ね開発を進めているという。

なお、“ミューズ”はギリシャ神話に登場する音楽や文学を司る女神の名称から取られており、ICチップにも髪をたなびかせた女神の姿があしらわれている(MUSES03クラスならば女神を肉眼で確認できるが、MUSES05では見えない)。

MUSESシリーズはスペックはもとより「感性」にもこだわったラインアップとなっており、川越製作所にはサウンドを確認するための本格的な試聴室も用意されている。CDプレーヤーとアンプはエソテリックのGrandiosoシリーズを採用、DAコンバーターとプリアンプは自社設計の「レファレンス機」となっており、実際の開発でも聴き比べをしながら音質を追い込んでいくという。

川越製作所内に設けられたサウンドチェック用の試聴室

今回はフラグシップである「MUSES05」と、汎用グレードの「NJM4580」を差し替えて比較試聴を行った。差し替え部分は、プリアンプの中のアンプ非内蔵電子ボリュームの後のバッファ部分で、このオペアンプ出力後、後段のパワーアンプに接続される。何度か差し替えながら音を確認したが、オペアンプを変えるだけでここまで音の違いが出るとは、と驚くほどの差異を確認できた。いずれもスピーカーの中央に非常にリアリティある音像を描き出すのだが、特に「MUSES05」においては、左右のステージ感に加え、立体的な奥行きをさらに深く描き出すように感じられた。

MUSES05の搭載部

なお、この「MUSES05」は、昨日発表されたアルパインのフラグシップカーオーディオシステム「AlpineF#1Status」にも搭載されているほか、今後も国内/国外を問わず搭載機種が登場してくる予定となっている。

もちろん、オペアンプひとつで音が決定されるわけではない。しかし、半導体の性能は年々進化、小型化を実現しており、オーディオ機器の進化もまたその恩恵を受けることとなる。この「MUSES05」をオーディオブランドがどう自社のシステムに組み込み、どんなサウンドが生まれてくるか、いまから楽しみだ。

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