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出水電器のイベントをレポート

「“マイ柱”電源」VS「燃料電池」、音が良いのはどっち? 話題の比較イベントを克明レポート

季刊オーディオアクセサリー編集部
2018年12月05日
既報のとおり、さる11月24日に都内西蒲田にある(有)出水電器ALLION試聴室にて、「マイ柱電源と燃料電池の音質を聴き比べる」試聴会が開催された。2種類の異なる電源「“マイ柱”電源」と「燃料電池」を会場に用意し(いずれも100V)、同じオーディオシステムを使って電源を切り替えながら供給。その音を参加者全員で聴き比べるという貴重なイベントだった。はじめに、今回用意された2つの電源から説明していこう。

ブラザー工業(株)の燃料電池システム、プロトタイプ。オーディオを含めた小型汎用機を目標にした試作機とのこと

「"マイ柱"電源」について(出水電器による提唱)

まず「“マイ柱”電源」について。通常、各家庭に供給されている商用電源は、近隣住戸で共用している柱上トランスによって、6,600Vの高圧で送電されてきたものを、100Vおよび200Vが取れるように電圧を下げたうえで各家庭へと届けられている。この柱上トランスは、電柱を見上げた時に”灰色のゴミバケツ"のような形のものが取りつけてあるならば、それである。

「“マイ柱”電源」は、TVやウォールストリートジャーナルでは分かりやすく“マイ電柱”と報道されているが、主役はこの灰色の「柱上トランス」だ

柱上トランス自体の容量にはいろいろあって、近隣の電力需要によってその大きさと配置が決められ、必要な数が設置されている。したがって、近所一帯の住戸は、同一の柱上トランスから電源供給されることになる。

オーディオを聴く側にとって、「自宅の特定の家電品がオンになるとオーディオの音が変わる」とか「場合によってはノイズが乗る」というのはよくある事例だ。容量の大きい家電品が多く稼動すれば、電圧降下を招く場合もある。

それが実は自宅だけでなく、共有する近隣全て、例えば5軒先の家で使っている家電品によるノイズも回ってきているのが実状なのである。「夜中の方がオーディオの音が良い」というのはこの影響と考えてよいだろう。

出水電器に設置された「マイ柱上トランス」(略称“マイ柱”)。出水電器の経験とノウハウで、電力会社への申請から実現までの難しいプロセスの請け負いによって実現されている

そこで柱上トランスを個人宅専用として独立させ、近隣からのノイズや電圧変動などの影響を極力排除したのが、出水電器が提唱する「マイ柱上トランス」、通称“マイ柱”電源である。一般家庭からプロのスタジオまで、50件(出水電器が係わった件数)がすでに導入しているという。

「燃料電池」の電源について(ブラザー工業)

次に「燃料電池」の電源について。「燃料電池」は、バッテリー電源のカテゴリーに入るが、蓄電池のように事前に電気を充電して使用するのではなく、それ自体が発電できるという特徴を持っている。しかも、ディーゼル発電機などのように排気ガスは発生せず、発電に伴って排出されるのは水と排熱のみという、近未来の環境に優しいエネルギーとして、その将来性が大いに注目されている。

燃料電池システムの説明を行う、ブラザー工業(株)の服部智章氏

今回試聴した「燃料電池」はブラザー工業(株)によるもので、オーディオを含めた小型汎用機を目標にしたプロトタイプだ。同社は電機メーカーとしてプリンターや複合機などのオフィス機器や工作機械を手掛けるほか、ネットワーク・アンド・コンテンツ事業として子会社のエクシングによるハイレゾ対応の業務用通信カラオケシステム「JOYSOUND」なども展開している。

ALLION試聴室入口の玄関前に仮置きされた、ブラザー工業(株)の燃料電池システム、プロトタイプ。100V・ACが供給される

ブラザー工業(株)は、新規事業製品として燃料電池システムに取り組み、2016年にはBFC2-W700MHを発表。以来、さまざまな用途にカスタマイズしたモデルを用意し、携帯電話などの通信の中継基地や、データセンターの非常用電源としてなど、すでに導入実績を持つ。

ブラザー工業(株)の燃料電池システムはカセット式燃料ユニットなど、取り扱いが容易である点も特徴となっている

ブラザー工業の燃料電池は、固体高分子形燃料電池と純水素を利用して発電する。「発電ユニット」と、水素燃料を入れる「燃料ユニット」の2つから構成され、燃料となる水素は、水素吸蔵合金を採用。交換可能なボトル形状として、安全かつ長期に保管できるという(燃料電池ボトルの待機寿命は約10年)。それを4本収められる水素燃料カセットを複数収められるのが「燃料ユニット」となっている。

また「発電ユニット」には、熱交換器を内蔵。ここからチューブを通して燃料ユニット内の水素燃料カセットに熱を送ると、カセット内の水素吸蔵合金から水素が放出される。これを発電ユニット側に送り、燃料電池スタックで発電されるという仕組みである。水素燃料カセットを交換すれば、72時間以上の連続運転を可能にしている。

発電に伴って排出される水は、発電ユニット側のタンクに貯めることができる。なお、ボトル1本で燃料電池システムを約1時間稼働させることができ、また、発電ユニットの運転寿命は累積2万時間ということだ。

比較試聴「“マイ柱”電源」VS「燃料電池」

当日は、おそらく世界初のオーディオのクオリティアップ比較試聴であろう「“マイ柱”電源」と「燃料電池」の音質の違いを、自らの耳で体験したいと集まった参加者18人で会場は満席。


初めに、機材やマイ柱の説明を行う(有)出水電器の島元澄夫代表
初めに(有)出水電器代表の島元澄夫氏から今回のテーマと内容の紹介があり、ブラザー工業(株)の服部智章氏からは燃料電池の解説が行われた。Q&Aの時間も設けられ、実際に導入した場合の具体的な運用設置方法やコストについても質問が及んでいた。

なお、試聴会場で使用した機材は、プリメインアンプに出水電器が主宰するアンプブランド、アリオン(ALLION)の10周年記念プリメインアンプ、A10(120W/ch・8Ω)。デジタルプレーヤーが、エソテリックのK-03X。スピーカーシステムがディナウディオのC4で、いずれも同試聴室の常駐モデルである。

真剣に音を聴き比べる参加者達。試聴会の常連参加者に加え、初めての参加者も多数

「“マイ柱”電源」は、このALLION試聴室ではすでに導入済み(2017年、『季刊オーディオアクセサリー165号』にてレポート掲載)となっており、「燃料電池」は試聴室入口の玄関前に仮置きし、そこからケーブルを引き入れて差し替えた。

まず「燃料電池」の電源で聴く音の印象は、最初はアース接続なしから聴いたが、ボーカルの抜けが良く、声の伸びの豊かな音調で、ベースは膨らみが抑えられ、空間性もよく出ていたという印象。次にオーディオ専用アースを接続すると、見通しが一層良くなり、ギターの奥行き感、余韻やエコー感がきれいに出て、自然で伸びの豊かな音となり、スネアの響きも美しくなった。

一方「“マイ柱”電源」で聴く音は、ベースに力感があるなど、音調としてのバランスはこちらの方が的確であるという感想が多かった。音全体のレンジの幅についても、“マイ柱”電源の方が優れているという意見も出された。

試聴会のまとめ

総じて「燃料電池」の方は、音楽を心地よく聴ける傾向で、「“マイ柱”電源」の方は、スピーカーを筆頭として、システムの持つ音質傾向がはっきり出る傾向があるという感想が多かったようだ。

今回比較試聴した電源2種類は、いずれも一般的な商用電源からすると、それぞれにたいへん優れた特徴を備える理想的な電源である。だからこそ、接続経路などの作用もより敏感に反応すると思われる。「燃料電池」からの引き回しに使う電源ケーブルや電源ボックスの音調も影響すると考えられ、導入する際にはその点も含めて選択する必要があるように感じられた。

当日の試聴室で組み合わせたオーディオ機材。アリオンのプリメインA10(左側最上段)とエソテリックのK-03X(右側上から2番目)にディナウディオC4のスピーカーシステム(黒色の方)を使用。アンプとプレーヤーの電源を差し替えた

なお、導入費用について見ると、もちろん導入する環境や施工内容によって異なってくるが、「燃料電池」は本体が350万円、水素ボンベホルダーが100万円、設置工事費が100万円程度と見込まれている。もちろん、普及してくると価格は下がってくることだろう。一方の「"マイ柱"電源」は、工事内容で変わるが通常100万円程度からとなっている(全て税別)。

近年、主に非常時のバックアップ電源としての用途が想定されている燃料電池。そのオーディオでの可能性は、非常時の備えという点でもますます注目度が高まっていくと見込まれる。

(有)出水電器の代表の島元澄夫氏は、他に大型リチウムイオンバッテリーにも関心を持って、いろいろ調べているという。“マイ柱” 導入は条件的なハードルが高いが、「バッテリー電源」は万一の備えにも役立つ。電源の動向に、オーディオファンは目が離せなくなりそうだ。

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