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現代だからこそ生まれた「セルフィッシュ」

Akiyoshi Yasuda(★STAR GUiTAR/SiZK)最新作に秘められた想い。OTOTOYで先行配信

季刊ネットオーディオ編集部
2016年10月13日
 "SiZK"としてAAAやSexy Zone、西野カナをはじめ、いま日本のポップシーンを賑わすアーティスト達への楽曲提供、そしてソロプロジェクト、"★STAR GUiTAR"としてH ZETT MやSchroeder-Headzといった次世代を担うピアニスト達の共演。さまざまな顔を持つAkiyoshi Yasudaが、はじめて自分の名前を表に出す形で、新たなプロジェクトをスタートさせた。


Akiyoshi Yauda『alter ego』¥1,800(税別)SELF-1001
「なりたい、理想の自分ではなく、ただ個々にある自分」というとおり、Akiyoshi Yasuda名義での作品はSiZK、★STAR GUiTARのどちらとも異なる姿を垣間見ることができる。


Akiyoshi Yasudaという本名では今回が初のリリースとなる
Akiyoshi Yasudaとして第一作となるのは、2016年10月19日にリリースされる全8曲の『alter ego』。本日からOTOTOYにて、ハイレゾ版の先行配信がスタートする(48kHz/32bit float版48kHz/24bit版)。「分身」という意味を持つこのアルバムに秘められた、Akiyoshi Yasudaの想いを聞いた。


おそらく、★STAR GUiTARでの彼を知っている人であれば、Akiyoshi Yasuda名義の作品を聴くと驚くはずだ。もともとテクノをベースとして華やかな世界観で展開される★STAR GUiTARに対して、Akiyoshi Yasudaはもっと深い、人間の心の奥底を投影するような世界観で楽曲が展開されている。しかし、そのどちらも★STAR GUiTARであり、Akiyoshi Yasuda、つまり彼自身である。

「★STAR GUiTAR自体がソロワークみたいなものなのですが、それをやっていくうえで★STAR GUiTARとは違う自分を出したいな、と思ったんです。SiZKもそうですし、★STAR GUiTARもそうなんですけど、この2つは"自分が他人からこう見られたい。自分はこうでありたい"みたいな想いの象徴でもあるんです。きらびやかで、キラキラしていて、みたいなところがあって、これは僕の音の印象として言われることもありましたね」。

「でも、そうじゃない音楽、例えばもっと暗くて淡々としたものも好きだったりして……。でもそれは"★STAR GUiTARでやるべきことではないんだろうな"って思ったんです。そういうところから、"じゃあ、素直に自分の本名を出してしまおう”とAkiyoshi Yasuda名義でリリースすることにしました」。

アルバム全体の主役となるのはピアノだ。そこには普段のビートによるグルーヴ感はなく、あるのは静寂と余韻、そして空間を漂う電子音。意外だったのは、このピアノの音も含めて、全てソフトシンセ、つまりデジタルで作られた世界ということだ。


実は電源ひとつから異常なこだわりを見せるなど、音に対する想いは強い。そうした一面も『alter ego』を構成する重要な要素だった
「僕はもともとアナログ信仰が強くて、ハードウェアシンセやそれこそニーヴのアナログミキサーなんかも使っていました。★STAR GUiTARも最初の頃はソフトシンセを使わずにアナログでやっていましたね。それがどうしてデジタルの方向に行ったのかというと理由は単純で、ソフトシンセの音がすごい良くなったから。48kHzである理由は作業ベースの都合で選択はしているんですけど、32bitが使えるということは大きなメリットなんです」。

「一番はやっぱり余韻、リリース。音の立ち上がりから消え際まで綺麗に見えるっていうのは、僕が作った曲の本当に見える部分ま出てくるということです。これはいわゆるビートミュージックにおけるグルーヴと一緒ですね。音の余韻が楽曲のノリを生み出すんだと思います。言ってみれば無音部まで曲みたいなイメージです」

制作にあたって採用されたサンプルレートは、48kHz/32bitで行われているが、これは以前からAkiyoshi Yasudaが制作にあたって採用してきたレートだという。実はAKiyoshi Yasudaは電源ケーブル一本からこだわるなど、音楽表現力におけるハイファイを重視するミュージシャンでもある。この「音へのこだわり」も、今回の『alter ego』を構成する重要な要素となっている。

「実は今作については、iTunesもやらないでリリースはCDとOTOTOYさんからのハイレゾのみ。いまって一般的な配信サイトが一番音が悪いわけじゃないですか。音楽を作るこちら側からすると、どんどんダウンコンバートされていって、最終的には“こんなのになっちゃうのかぁ……”ってなることもあるんです」。

「最近ではマスタリングも自分でやっていて、ダウンコンバートの良いやり方なんかも知っているんですけど、圧倒的に何かがなくなってしまいますね。だからこそ、できることなら音のクオリティを下げたくないと配信はハイレゾのリリースにしました。自分自身の名前を出すという意味でも、ここは大きなポイントですね」。

Akiyoshi Yasudaは『alter ego』の中に「これが僕ですよ」というメッセージを込めている。この「僕」というのは、明るいだけではなく暗い曲も好きで、電源ケーブルやブレーカーにまでとことんこだわって、音を作り上げていく人物。★STAR GUiTARの活動では表に出ることのなかった、別の彼の姿が見え隠れする。

そんなAkiyoshi Yasuda自身を投影した『alter ego』のなかで、Akiyoshi Yasudaはある部分にこだわった。それがノイズだ。ただし、この場合のノイズは、あくまで音楽表現としてのノイズだ。

「ノイズをいかに聴かせるかを、本作では考えた」とAkisyoshi Yasudaは話すが、これは彼が考える"良い音"という部分に「透明感と荒々しさが同居している感じ」というイメージがあることも関係する。

今作では、パソコン上で作ったトラックを一度iPhoneへ入れて、そのスピーカーから再生してあえて音を荒くするといった音作りをしているようだ。そんな、綺麗なピアノの中に流れる電子的なノイズ。この異なる2つの要素が、32bitという解像度のなかでそれぞれの役割を的確に果たしている。

『alter ego』でAkiyoshi Yasudaは、徹底的にコンセプトを排除した。だからこそ曲順もラフに「ここに入ったらいいだろうな」という形で、タイトルも本来であれば仮であるべきものを直感的に採用している。

最後に彼は、彼自身である「Akiyoshi Yasuda」について、こう語る。

「Akiyoshi Yasudaでは"昔憧れていても、どうやって作っていいの分からなかった"ことを、いまの自分の置かれた環境のなかで生み出していく感じです。楽曲に関しても、ただピアノを弾いて"綺麗ですよね"みたいな感じではなくて、最初から最後まで電子音を飛び回るところもこだわりました。これはレディオヘッドだとか僕がいままで聴いてきた音楽のルーツにつながるところなのかなと思います」。

「あとは、★STAR GUiTARで色々なピアニストとやったことで、自分自身も結構弾けるようになったことですね。この経験があったから、こうやってルーツに戻って行けていると思います」。

本作のリリースにあたり、Akiyoshi Yasudaは、STUDIO SELFiSHというレーベルも立ち上げた。その第一作となる『alter ego』は、まさにいまのAkiyoshi Yasudaと彼自身が置かれた環境だからこそ生まれたセルフィッシュな作品となっている。

なお2016年10月19日発売の『季刊NetAudio vol.24』では、本作に秘められた想いを語り尽くしたインタビュー完全版と、『alter ego』より「standalone」が付録音源として収録される。そちらも合わせてぜひ、Akiyoshi Yasudaというひとりの人間が奏でる世界観を体験して欲しい。

■アルバム詳細
alter ego
Akiyoshi Yasuda

¥1,800(税別)
サンプルレート:48kHz/32bit、48kHz/24bit
SELF-1001
発売元:STUDiO SELFiSH
販売元:AFD's Music Entertaiment
【収録曲】1. y / 2, A / 3, Coma / 4, lifeis / 5, nano / 6, rense / 7, turn / 8, standalone

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