<岩井喬の真空管フェア(2)>美音技研/サンバレー/タムラ/イーディオのブースレポート

2007/10/08
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美音技研


比較的コンパクトな筐体デザインと機能面においても細やかな工夫が見える同社製品であるが、今回の出展では5極管7591を用いたステレオアンプ「Canto CM-1」(¥158,000)とモノラルアンプ「Vigro CM-2」(ペア¥316,000)の2種類、さらにコンパクトなラインプリアンプ「Alio CP-1」(¥158,000)が登場した。「Canto CM-1」と「Vigro CM-2」は外見こそ近いものがあるが、「Canto CM-1」は7591の3極管動作A級プッシュプル構成で「Vigro CM-2」はツイン電源トランス搭載、7591×4の3極管動作AB級パラレルプッシュプル構成・ブリッジ回路という本格的なもの。「Vigro CM-2」でも10Wという控えめの出力であるが、比較的ローコストでモノ・アンプを楽しめるというメリットは非常に高いと思われる。「Canto CM-1」は2A3・A級ppアンプと同等の出力である7W×2であるが、5極管そのものの押し出し感も持ちながら3極管のような清々しい素直な音色も感じるバランスの良いサウンドといえそうだ。


Canto CM-1

Alio CP-1

Vigro CM-2
ラインアンプ「Alio CP-1」は6BM8を4本用いたプリアンプで、オプションで用意されているトランスボックス「CP-1T」を接続すれば1.8W×2のプリメインアンプとして使用可能という、ユニークな構成となっている。さらにTakeT社のハイル型ヘッドホン用端子も設けており、独特な高繊細サウンドも楽しめるようになっている。


サンバレー

『ザ・キット屋』として独自の真空管アンプキットをはじめ、スピーカーキットやチューナーキットなど、数多くのキット製品を送り出している同社は、全国の自作ファンにも愛されており、本イベントに限らず、同社主催イベントなどではいつも大入り満員となる盛況ぶりだ。今回は主要な製品の試聴説明イベントを終えた後の時間帯にスペースへと足を運んだのだが、製品の前にはずっと来場者が列を作っていた。



SV-16K。手前は同機の内部の様子。かなりシンプルにまとまっている
その中で気になった製品として小型管球アンプキット「SV-16K」(球付き¥29,800)を紹介したいと思う。PCL86を3極管結合で用いた1.4W×2という小出力アンプだ。“管球アンプはキットといえど高い”と思っている方にとっても、本キットならば“初めての管球アンプキット”として一歩を踏み出せるのではないだろうか。もちろんアンプキット経験者にとっても普段はあまり見かけない小型球を使ったアンプ作りは新鮮な体験になると思う。


タムラ製作所&サン・オーディオ

サン・オーディオとともに同じブースでの展示を行っていたタムラ製作所。管球アンプ自作派なら知らぬものはいないであろう、管球用トランスの製造で古くから愛されているメーカーである。現在『T's Bar』というオーディオファンサイトを運営している同社であるが、こういったサイトの存在はこれまで以上に管球アンプファンとメーカーとを密接に繋ぐ、一つの理想の形態といえるシステムなのかもしれない。その『T's Bar』のコンセプトモデルがブース内に出展されていた。ウエスタン・エレクトリック製WE300Bを用いたインターステージ・ドライバートランス搭載。カップリング・コンデンサー・レスのシンプルな構成になっているという。


『T’s Bar』のコンセプトモデルとなるWE300Bシングルアンプ

サン・オーディオのアンプが勢揃い
このタムラ製作所が手がける、“タムラトランス”を用いてアンプ作りを行っているサン・オーディオ製品も主要ラインナップが勢揃いし、ブース内はアンプが溢れる賑やかな展示会場となっていた。また同社企画の佐久間駿氏によるブースイベントは入場できない方が出るほどの盛況ぶりであった。


イーディオ

同社ブース内では管球システムの他に、小さい存在であるものの“非常に目立つ”機器が置かれていた。それは米・MSB TechnologyのハイエンドHDDトランスポート「iMSBLink」(¥298,000)である。iPod用ドックシステムとして、恐らく最高級の部類に入る製品であるが、S/PDIF光及び同軸デジタル出力のほか、AES/EBUデジタル出力も装備されている。また付属のRFアダプターをiPodに接続することで、ワイヤレス環境にも対応するという高機能ぶりを発揮する。そしてMSB Technology社でアップグレードされた80GB iPodやリモコンも付属し、より高音質でiPodを楽しむ方のためには最高のシステムといえる製品となっている。

iPodドックの新たな可能性を感じるiMSBLink



会場の2Fに設けられた展示・販売会場では各出展ブース以上に賑わいを見せ、毎年掘り出し物を求めて熱心にパーツの一つ一つまでチェックする自作ファンで溢れている。購入しないにしても、様々なビンテージパーツを眺めているだけでも楽しい空間となっている。




また、5Fのイベントスペースにて催された、『オーディオアクセサリー』/『analog』誌企画の「自作超高音質サウンド〜最新デジタル録音機の生録音サウンドの世界」イベントでは、『オーディオアクセサリー』126号にて紹介している藤田恵美さんの高性能最新録音機による生録の模様と、収録時の詳細について、石田善之氏、ジョー奥田氏とともに私もステレオワンポイント収録についてを解説させていただいた。当イベントも立ち見で観覧される方が出るほどの盛況振りで、DSDを始めとする様々なフォーマットでのストレートな音質を楽しんでもらえたことと思う。

(岩井喬)

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