【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム


ボーズのDVDホームシアターエンターテイメントシステム“Lifestyleシリーズ”に今夏新たな第3世代機が登場する。低音再生能力はそのままに、約30%の小型化を実現したベースモジュールをはじめ、新シリーズはどこが生まれ変わったのだろうか。薄型テレビと地上デジタル放送の普及にともない、より進化するサラウンド放送の楽しみ方とともにライターの折原一也氏が検証する。



近年のDVDの普及によって、ホームシアターはオーディオ・ビジュアルファンにとって身近なものとなった。5.1chサラウンドを楽しめるコンテンツとしては「映画館の臨場感を家庭でも」というコンセプトの元に、映画系のソフトが中心であったが、今では音楽やスポーツにまで幅が広がりつつある。この傾向に拍車をかけているのがデジタル放送の普及拡大だ。


先月放送された5.1chサラウンドの番組にどのようなものがあったのか、振り返って確認してみた。エアチェックファン垂涎のソースとなった不朽の名作『スターウォーズ エピソード4・5・6』(WOWOW)や『パイレーツ・オブ・カリビアン』(テレビ朝日)も5.1chサラウンドで放送され、映画館の感動を蘇られてくれた。


地上デジタル放送ではプロ野球中継やNHKで放送された「第74回日本ダービー」に注目した。スポーツ番組と5.1chサラウンドのマッチングは思いの外優れており、沸き上がる観客の歓声からは一度足を運んだスタンドの情景が思い起こされ、その熱気までもが伝わってくるほどだ。


映画・音楽コンテンツの他にもおすすめしたいサラウンドコンテンツがいくつもあるという折原一也氏が、今回ボーズの最新“Lifestyleシリーズ”をレポートする

自然紀行番組の「地球見聞録」(BS-i)では、今まで映像を“見る”ものとして楽しんでいた紀行番組に5.1chサラウンドが加わることで、あたかもその場所に飛び込んだような臨場感を味わうことができ、リアルな“見聞”が体験できる。


サラウンドとの意外なマッチングが楽しめた番組としては「古典芸能鑑賞会」(NHK)や歌舞伎座もある。上方落語番組「平成紅梅亭」(読売テレビ)では、寄席に観客に入れて公開収録したサラウンドが面白い。他の聴衆たちと一緒に笑い、会場の雰囲気のリアルな再現に圧倒されながら楽しめる。ライブだけでしか味わえなかった会場の一体感が、テレビを介しながらも訴えかけくるリアリティはサラウンドでしか味わえない感覚だ。


薄型大画面テレビの登場によって、ホームシアターのハイビジョン化が加速する中、放送でも用いられはじめた5.1chサラウンドをホームシアターで楽しみたいと思い始めるのも当然のことだ。家庭の中心となるリビングに設けられたホームシアターには、設置性が高くスタイリッシュなホームシアターシステムが求められている。今回、ボーズから登場した“Lifestyle”シリーズは、そんな新時代のニーズに応える製品だ。


今回ボーズから発表された新製品は「Lifestyle 48 III」「Lifestyle 38 III」「Lifestyle 18 III」の3モデルだ。それぞれの型番を見て、ボーズファンの中には「おや?」と思った人もいるかもしれない。Lifestyle 48/38の各モデルは“I”から“III”へ一足飛びに進化することになったわけだが、この理由は最新のDSPとオーディオDAC搭載によって生まれ変わった新しいLifestyleシリーズが、等しく“第3世代”へ進化したことをわかりやすく伝えるためであるという。


DVD/CDプレーヤー搭載のメディアセンターに約350枚の音楽CDを取り込み、独自のマシンインテリジェンスを実現した“uMusic”機能も採用するLifestyle 48 IIIは、全国のボーズ直営店と限定プレミアムショップのみで展開されるシリーズ最上位のフラグシップモデルだ。


Lifestyle 38 IIIは、音楽CD約200枚が取り込めるHDDとLifestyle 48 IIIからスピーカー構成を変更したシリーズの上位モデルであり、一般向けの販売チャネルでも展開される。さらにLifestyle 18 IIIはメディアセンターからHDDと“uMusic”機能を省き、サテライトスピーカーの構成も変更しつつ、ボーズの高品位なホームシアターサウンドがスマートに楽しめるスタンダードモデルとして位置付けられる。


第3世代“Lifestyle”シリーズのラインナップ

DVDホームエンターテインメントシステム
Lifestyle 48 III
¥499,800(税込)

>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる
DVDホームエンターテインメントシステム
Lifestyle 38 III
¥367,500(税込)


>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる
DVDホームエンターテインメントシステム
Lifestyle 18 III
¥215,250(税込)


>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる



それではシリーズ最上位のフラグシップモデルとなるLifestyle 48 IIIをみながら、新しい“Lifestyleシリーズ”に採用された、キーファクターとなる音質を向上させる数々のテクノロジーについてもう少し掘り下げてみよう。


ホームシアターに製品を設置する時、おそらく多くの方々がまずはじめにシステムの音質を決定する要素として重要であるベースモジュールがいっそうコンパクトになったことに気が付くだろう。その背景として内部構造が新たに見直され、従来採用してきた“ウェーブガイド・ベースモジュール方式”を“2チャンバーアクースティマス方式”に変えたことにより、サイズが約30%も小型化されたことが大きなポイントだ。その違いは前モデルと比べれば見た目にも明らかであり、省スペース設置が可能になった点はうれしい限りだ。特に本体奥行きが短くなったことで、薄型大画面テレビ用のラックと合わせて使う際のマッチングも向上している。音質面についても、内部に2本の13cmドライバーを対面で配置して、空気エネルギーを効率よく音に変換することにより、いっそう伸びやかで厚みのある低音再生を実現している。


新旧ベースモジュールのサイズを比較。右側「Lifestyle 48 III」の筐体がいっそうコンパクトになったことがおわかりいただけるだろう。前面にはノイズやコンプレッション歪みを軽減する独自のポートも搭載した 「Lifestyle 48 III」が採用する超小型サテライトスピーカー“JewelCube”。センターは2本のドライバーを左右に配置した横置きタイプに一新された


Lifestyel 48 IIIでは、サテライトスピーカーに従来機と同じ小型ながらキレのあるサウンドを鳴らす“JewelCube”が引き続き採用されている。センタースピーカーは薄型大画面テレビの画面下にも設置しやすい横置きタイプに変更され、独自の“アキュレイテッド・アレイ技術”により広い範囲をカバーする音場を実現した。内部のデバイス構成も第3世代への進化と合わせて更新されたことにより、音響面のみならず、従来から採用するデジタル自動音場補正技術“ADAPTiQ”の演算速度の高速化というかたちでも、性能の向上が実現されている。


ADAPTiQでかんたん!Lifestyleをセットアップしてみよう
パッケージ付属のADAPTiQプログラムディスクを本体にセットする 専用のヘッドセット型ステレオマイクを装着する
通常のリスニングポイントを決定後、5.1ch各スピーカーのテストトーンを出力。Lifestyleシリーズを実際に使用する部屋の音響特性が測定・分析される テストトーンによる結果が自動的にデジタル処理される。内部デバイスが改良されたことにより、計算速度も向上。全体の測定時間はわずか15分程度という手軽さだ


今回はフラグシップモデル「Lifestyle 48 III」の実機を視聴し、新シリーズのパフォーマンスをチェックしてみたい。5.1chのDVD再生の確認に使用したソフトは、お馴染みのハイクオリティなサラウンドソースを集めた“DTSデモディスク No.9”だ。


今回Lifestyle 48 IIIのテストはボーズ視聴室で行った。愛用する評価用ディスクを本体にセットする折原氏

最初に選んだ『HERO』は、低音の響き、飛び交う矢のスピード感をチェックするのに愛用しているソースだ。Lifestye 48 IIIの持つ濃厚な低音の表現力は本作品でも的確に現れ、騎馬の迫り来る足音が醸し出す圧迫感、そして何よりリアリティを描き出す中域のキレが良い。弓から放たれた矢が空間を切り裂く余韻のキレは明瞭に響き、空間の静と動をキレのあるサウンドで描く。


次に再生した『マスター・アンド・コマンダー』は、特に緻密な情報量のあるサラウンドと高さの表現、そして砲撃による音圧のある低音の破壊力がチェックのポイントだ。サラウンドの表現力は、空間の広げ方が想像以上に見事であり、切れ目のない音の空間を包む高さの位置感表現は、スピーカーの存在を忘れさせてくれる。砲撃の破壊力も従来機と同等以上に馬力がある。


音楽CDはダイアナ・クラールの『THE GIRL IN THE OTHER ROOM』を選び、ボーカルと低音を中心にチェックした。音像の明確なボーカルの印象もさることながら、聴き慣れたこの作品では低音のクオリティが向上していることを発見した。従来機のベースモジュールではやや高めに鳴っていたベースが落ち着き、音楽的な忠実さを増している。


マーラー交響曲3番の第5楽章『Lustig im Tempo und keck im Ausdruck』では、コーラスによる広がりをもった空間は“BoseDigital”によるアルゴリズム処理によって、自然な空間を再現する5.1chサウンドとして再生された。


CD再生時はサテライトスピーカーの設定を5ch/3ch/2chに変更して楽しむこともできる


ベースモジュールの一新と新世代デバイスの採用によって、サラウンド再生のパフォーマンスも“第3世代”へと一新されたことが今回のテストで証明された。これだけのサウンドが小型のサテライトスピーカーと、いっそうのコンパクト化を実現したベースモジュールにより再生されていることを直に体験し、改めてボーズのホームシアターシステムの持つ、技術力の高さが思い知らされた。


新“Lifestyleシリーズ”の登場は、リビングの薄型大画面テレビにコンパクトなシステムを気軽に追加するだけで、本格派のサラウンド環境が実現できることを示す好例となるはずだ。

(レポート:折原一也)


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