【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

デジタルコンテンツの多様化が進み、映像や音楽の楽しみ方がますます広がりつつある。リビングルームに設置した薄型テレビや書斎のパソコンで何気なく聴いているサウンドを、よりリッチに楽しめるマルチメディアスピーカーがある。今回はボーズの“Companionシリーズ”から、2つのモデルの使いこなし方を、ライターの鈴木桂水氏が徹底検証した。


デジタル放送の登場でテレビが急速に進化している。メインストリームの大画面薄型テレビはもちろんのこと、書斎やキッチンなどで楽しむセカンドテレビとして、23〜27型のミドルクラス薄型モデルも人気を急激に伸ばしている。それだけでなく、地デジ対応のWindows Vista搭載パソコンも続々と登場し、さらにワンセグ放送を楽しめる携帯電話や携帯マルチメディアプレーヤーなど、テレビや動画を好きなサイズで、好きな場所で楽しめる時代がやってきた。

このように多様な動画再生環境を、いっそう快適なものに彩ってくれるのがマルチメディアスピーカーシステムだ。あらゆるAV機器が簡単に接続でき、最高の音質でサウンドをまとめ上げる、料理で言うところの大切なスパイスのような存在だ。たとえばミドルサイズの薄型テレビは、ハウジングのサイズにゆとりがないので中低音域の再生に限界がある製品をしばしば見かける。映画や音楽番組を見ていてもいまひとつ迫力に欠けるのだが、マルチメディアスピーカーシステムを付け加えることによって、物足りなかったサウンドクオリティが驚くほど豊かに改善するのだ。

マルチメディアスピーカーシステムにはいくつかの製品があるが、その代表格とも言えるのがボーズのCompanionシリーズだ。高性能ドライバーを搭載するコンパクトなフロントスピーカーを軸に、最小限の設置面積で驚くほど豊かで広がりのあるサウンドを奏でる。さりげなく設置できるので「音にはこだわりたいが、大仰なシステムは不要」と考える人に最適なスピーカーシステムと言えるだろう。

サテライトスピーカーの比較。左は「Companion 3-II」のシステムで中高音域を受け持つマイクロキューブスピーカー。右の「Companion 5」 が採用するマイクロアレイスピーカーは、1つのスピーカー内にボーズ独自の50mmドライバーを2本内蔵する

アンプ内蔵ベースモジュールの背面端子部。「Companion 5」 のベースモジュール(右)はUSB接続端子を搭載している

“Companionシリーズ”には大きく分けて、デスクトップ環境での使用を想定したニアフィールドタイプと、6から8畳程度の部屋全体に音を広げて楽しむミドルフィールドタイプがある。

ニアフィールドタイプの新製品として注目されているのが「Companion 5」だ。ボーズ独自のデコーダー「Bose Digital」とデジタルサラウンドプロセッサー「TureSpace」により、デスクトップ環境程度の距離で再生したときに、ベストな音空間を再現するように最適化されている。“スーパーフロントサラウンド”の技術により、2つのフロントスピーカーと重低音再生を担うベースモジュールだけで、ニアフィールド再生でリスナーの全身を包み込むような空間印象を作り出す。パソコンでDVDやストリーミング動画を楽しむのに最適なシステムだ。

一方のミドルフィールドタイプには「Companion 3-II」がある。「Companion 5」とシステム構成は似ているが、フロントサラウンド再生には対応しない。その代わりに、本機ではスピーカーとのリスナーの距離を限定せずに設置できるのが大きなメリットである。デスクサイド用としても、リビングルーム用としても利用できる守備範囲の広いモデルだ。たとえばサウンドに物足りなさを感じるミドルサイズの液晶テレビと一緒に使えば、驚くほどにサウンドのクオリティがアップする。

サービスエリアと用途で分類したBOSE最新サウンドシステム



今回はミドルレンジの「Companion 3-II」による映画ソフトの再生と、フロントサラウンドに対応する「Companion 5」によるHD DVDと地上デジタル放送を使ったスポーツコンテンツの再生を楽しんでみようと思う。はじめにテストする「Companion 5」では究極のデスクトップシアターを体感したいと考えた。今回はHD DVDの再生機能や地デジコンテンツの録画も楽しめる、東芝のノートPC“Qosmioシリーズ”の最上位機「G30/97A」を使うことにした。

PCのUSB端子に「Companion 5」を接続すると、すぐ自動的に外部機器として認識される。OSはWindows Vista コントロールパネル内サウンドデバイス一覧表示。「Bose USB Audio」の名前が並んでいるのが確認できる

まずデモに使ったのは世界初の競馬HD DVDタイトル『ディープインパクト 〜日本近代競馬の結晶〜』だ。ターフを駆け抜けるディープインパクトの雄姿と、それに魅了され歓声を上げる観衆。そして各レースを盛り上げる実況の臨場感。このソフトの音声は2ch収録なのだが、「Companion 5」では独自のフロントサラウンド効果による臨場感溢れるサウンドが楽しめ、思わず映像の中に引き込まれそうになる。

次に視聴したのは、2006FIFAワールドカップドイツの全ゴールを完全収録した『オールゴールズ』というタイトルだ。世界中を沸かせたクローゼ、ジダンなど名選手による全147ゴールを記録した、サッカーファンにはたまらない1枚だ。残念ながらこのソフトも音声トラックはリニアPCMの2ch収録なのだが、「Companion 5」のデジタルサラウンド・プロセッサーにより、臨場感溢れるサラウンドが楽しめる。とくに2006年6月30日に行われた準々決勝の「ドイツ VS アルゼンチン戦」で、クローゼが決めたヘディングのゴールでは、スタジアムを覆う割れんばかりの歓声が、見事にデスクトップ環境に再現される。声の限りに声援を贈る、スタジアムの観衆の声があまりにもリアルで、思わず目頭が熱くなってしまった。まさに、あの時の感動を蘇らせてくれるサウンドが楽しめた。

今回のテストではHD DVDソフトが再生できる東芝のノートPC“Qosmioシリーズ”の最新モデルでいくつかのスポーツコンテンツを楽しんでみた 「Companion 5」が再生するリアルなフロントサラウンドに引き込まれる筆者

他にも手応え十分なサラウンド感を味わえたのは、地上デジタル放送の「2007マスターズゴルフ」の中継だった。観客のざわめきや鳥の声などが四方から聴こえてきて、ギャラリーとしてショットの数々を間近で見ている気分になる。スイングの風切り音と、ボールをクラブでヒットする音が実に生々しく再生され、ゴルファーたちのコンディションまで伝わってくるような錯覚に陥ってしまった。スピーカーの解像感が高いがゆえの立体感だと言えよう。

「Companion 5」には、ボリュームを絞っても最適な音響バランスに自動補正するP.A.P.回路が搭載されている点もうれしい。例えば深夜に海外で行われる野球中継をこっそり見ようと思いたった際にも、ボリュームを絞りながらも、臨場感を損なわないサラウンド再生ができる。まさにパーソナルシアターを構築するなら欠かせないサウンドユニットと言えるだろう。

Companion 5の試聴に使ったソフト

ディープインパクト 〜日本近代競馬の結晶〜 HD DVD
発売元:関西テレビ放送/メディアプルポ/ポニーキャニオン
販売元:ポニーキャニオン
2007年
4月27日発売

>>本作品の紹介ページ

オールゴールズ<2006 FIFAワールドカップドイツ オフィシャルライセンスHD DVD>
発売元:データスタジアム Fantasista/Jリーグ映像/東芝
販売元:日活
2007年3月2日発売

>>本作品の紹介ページ


続いて「Companion 3-II」をリビングサイズの試聴室でテストしてみた。まず、設置が簡単なことに驚く。小さなフロントスピーカーと低音用のベースモジュールをケーブルで接続し、コントロールポッドと呼ばれる外部入力機器の接続ポートをアンプ一体型のベースモジュールに接続するだけで完了する。コントロールポッドはボリュームを兼ねているので、視聴位置近くに置いてスタンバイする。

ボーズの試聴室にて、ミドルフィールドでの試聴環境をつくり「Companion 3-II」をテスト。コンパクトな外観からは想像もつかないほど厚みの豊かなサウンドが再生される

DVD再生では、小さなスピーカーとベースモジュールだけで奏でているとは思えないほど、迫力のあるサウンドに驚く。dtsデモDVD No.9に収録されている『マスター・アンド・コマンダー』の砲撃シーンなどは、ただ闇雲に低音域を強調するのではなく、台詞などの中音と大砲の低音がバランスよく再生されている。高音もキビキビと歯切れよいので、2chのステレオとは思えない立体感のある再生が可能だ。

最近の薄型テレビのデザインには、省スペース性を高めるためにスピーカーを画面の下にレイアウトしたアンダースピーカータイプが多い。確かに左右幅は切りつめられるが、その分音の広がりは乏しくなる。筐体がコンパクトな「Companion3-II」のスピーカーならば、薄型テレビの省スペース性はそのままに、自由にレイアウトをして広がりと迫力のあるサウンドが楽しめる。まさに薄型テレビとのカップリングがふさわしいスピーカーシステムだ。


コンパクトなフロントスピーカーとベースユニットによる組み合わせなので、一見すると似通った製品に思える「Companion 5」と「Companion 3-II」だが、今回テストをしてみて、その性格がまったく違うことがよくわかった。「Companion 3-II」ではフロントサラウンドに対応していないものの、デスクトップからリビングルームまで幅広く対応でき、広がりのあるサウンド故に映画や音楽まで幅広いソフトが存分に楽しめる点にボーズの優れたテクノロジーを改めて実感する。手軽に外部機器を接続できるコントロールポッドには、ワンセグ携帯やPSPなどを接続して再生するのも面白い。どちらの機器も内蔵するスピーカーの能力が低いので、「Companion 3-II」に接続して再生するだけで、小さな画面がグッと大きくなったかのような迫力のある再生が楽しめた。このように幅広い用途で楽しめるのも「Companion 3-II」ならではの魅力だ。

ゲーム機「PSP」と「Companion 3-II」をつないで本機マルチメディアスピーカーとしての性能を徹底研究してみた。ニアフィールドのサウンドも優れたバランス感で楽しめる はやりのワンセグケータイも「Companion 3-II」につないで楽しめる。ケータイ本体のスピーカーを聴くだけではわからなかった、ワンセグサウンドの迫力が発見できた

一方の「Companion 5」はデスクトップサラウンドのスペシャリストだ。本機はニアフィールドでの快適なサラウンド再生環境を追求する方にぜひおすすめしたい。もしミドルレンジ以上のリスニングスペースでもボーズのフロントサラウンドを楽しみたい方には、「FS-321II」をはじめとした“3・2・1シリーズ”が選択肢になる。

今回の試聴テストから、ユーザーのライフスタイルにフィットし、設置も簡単な本格派のサウンド環境が手に入ることがわかった。薄型テレビやPCのサウンドをステップアップしたいと考えているならば、ぜひボーズの“Companionシリーズ”をチェックしてみてはいかがだろうか。音が際だてば、映像の感動は何倍も大きくなること請け合いだ。

(レポート:鈴木桂水)

試聴したオーディオシステム

BOSE フロントサラウンドシステム
Companion 5
¥59,850(税込)

>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる
BOSE マルチメディアスピーカーシステム
Companion 3 Series II
¥34,650(税込)


>>ボーズの製品紹介ページ
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