【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

ホームシアターシステムで音楽を楽しんでみませんか?そんな編集部からの呼びかけに、今回音楽評論家の岡村詩野氏とオーディオ評論家の炭山アキラ氏が応えてくれた。2人が持ち寄ったお気に入りの音楽タイトルを最新のホームシアターシステムで試聴し、その印象を語り合ってもらった。果たして今回、2人にどんな“発見”があったのだろうか。

リビングルームにテレビとDVDプレーヤーをセットしてホームシアターを楽しんでいる方々は、ふだんどれくらいの頻度で映画を観ているだろうか。映画ソフトは1本見始めると2時間程度は集中が必要とされるので、週末でもなければそう何本も見ることはかなわない。一般的には週に2、3本程度の鑑賞で精一杯ではないだろうか。「そんな程度の稼働率では、立派なサラウンド装置を導入してもムダが多い」と考え、これまでホームシアターを半ば諦めてきた人も多いだろう。それならば映画の鑑賞に使っていない間は、音楽ソフトを楽しんでみてはいかがだろうか。サラウンドシステムなら音楽の楽しみ方もさらに広げてくれるはずだ。

今回はフロントサラウンドシステム「FreeStyle Seires II」をリファレンスとし、ボーズ株式会社試聴室にて様々な音楽ソフトを聴いた

快適なサラウンド環境を手軽に実現できる製品として、今回はフロントサラウンドシステムをお薦めしたい。中でも2002年にボーズが発表した「3・2・1」シリーズは、たった2本のフロントスピーカーとアンプ内蔵のベースモジュールで部屋中に広がる立体的なサラウンド音場が楽しめることから、部屋の広さに限りのある日本のビジュアル・ファンに広く受け入れられてきた。今年「Series II」へと進化し、そのサラウンド感に磨きがかけられるとともに、音楽の再生能力も高められている。今回は新しく発表されたばかりの「FreeStyle Series II」をいち早く体験し、フロントサラウンドで楽しむ音楽の可能性を探求してみたいと思う。


お気に入りの音楽から、どんな新しい発見があるのだろうか

岡村(敬称略) 今日は、私の専門的なところでは割とロックとポップスが中心になっていまして、9点のタイトルをお持ちしました。1つがDVDで、あとはCDです。最近はデジタルリマスタリングが施されていて、昔の録音の音源もかなりいい形でよみがえっているものが多いので、そういう作品もちょっと用意してきています。
炭山(敬称略) 私もロック・ポップスの作品と、巷で録音が良いと言われている作品ですとか、フロントサラウンドで、後ろの方までグワーっと音が回るようなソフトもおりまぜて持ってきています。
岡村 なるほど。それは楽しみです。

炭山アキラ氏が選んだタイトル
岡村詩野氏が選んだタイトル
So/ピーター・ガブリエル(東芝EMI) Don't Believe The Truth/オアシス(SMJ)
Asian Roots/竹竹(コロムビア) Greatest Hits/ニール・ヤング(ワーナー)
TECHNODON/YMO(東芝EMI) COBALT HOUR/荒井由実(東芝EMI)
狂気/ピンク・フロイド(Capitol) GORILLAZ/デーモン・デイズ(東芝EMI)
パガニーニアーナ/荒井英治(マイスターミュージック) CHAOS AND CREATION IN THE BACKYARD/ポール・マッカートニー(東芝EMI)
高橋悠治、ジョン・ケージ:プリペアド・ピアノと室内管弦楽の為の協奏曲/高橋悠治(ワーナ
ーミュージック)
BEN FOLDS LIVE/ベン・フォールズ(SME)
THE GREAT FANTASY ADVENTURE ALBUM(TELARC)

◆Don't Believe The Truth/オアシス
〜アーティストの「狙った音」が浮き彫りになった〜
岡村 でははじめに比較的新しい、若いバンドで、オアシスの作品を聴かせていただこうと思います。
炭山 音にわざといろいろな加工を施しているのが、こういうシステムで聴いているとわかってきますね。

岡村 そうですね。すごく大味でラフに音をつくっているイメージのあるバンドですけれども、こうやって聴くと音の定位など、すごく丁寧に工夫を凝らしていますね。ちょっと前までは、低音がガチっと、高音がバーンと出てというような音のまとめ方が割と主流だったんですけれども、最近になってミドルの音域に注力した音の処理が比較的増えています。これもそんなに極端に低音だけガーンと来ている感じではないですよね。
炭山 これは私の印象でしかないですけれど、全然気を使っていないんだというふりをするために、あえて声などを汚してあるんじゃないかと思うんですが。
岡村 そうかもしれませんね。実際にかなりざらつかせるというか。
炭山 やってるような気がしますね。
岡村 それだけライブに忠実にというか、ライブの感触というのをそのまま録音上においてもというようなところが、このバンドのある程度の狙いの一つではあるような気がしますね。
炭山 そういうところの「活きの良さ」みたいなものはすごく魅力的ですね。

◆So/ピーター・ガブリエル
〜とても自然に繋がるサラウンド感が心地よく染みてくる〜
炭山 私からは、かつて音楽ソフトに低音がバンバン入っていた頃のタイトルを一つご紹介したいと思います。
岡村 ピーター・ガブリエル、いいですね。私の大好きなアルバムです。売れましたね。

炭山 これは、ガブリエルの中でも一番録音の評価が高かった頃のタイトルではないかと思います。録音のことばかりお話しして申し訳ないですが、これはたぶん2曲目の『スレッジハンマー』だけ、随分録音が違うような気がします。
岡村 違いますね。聴いてみましょうか。私も偶然昨日、この曲を聴いていたんです。
炭山 ボーズの「FreeStyle Series II」が採用しているスピーカーのすごい所は、見た目はすごく小さいスピーカーで、ベースボックスが全然違うところに付いているのに、下から低音が出ているという感じじゃなくて、すごく自然に繋がって聴こえてしまうことあんですよね。
岡村 サラウンド感が本当に自然で、極端に人工的にされている印象は全くないですね。今回お持ち頂いたCDはデジタルリマスターされてない方のオリジナルですよね。
炭山 何せ発売された当時に買ったものですから。
岡村 今はデジタルリマスターされていますね。音も全然違うだろうから、その違いを聴き比べるのも面白かったかもしれませんね。

◆Greatest Hits/ニール・ヤング
〜プレーヤーが目の前で歌い、奏でているような錯覚をおぼえた〜
岡村 私が普段よく聴く作品は、わりとガッツリと音が構築されているものが多いです。その代表的なものとして、ニール・ヤングはいかがですかね。これはベスト盤ですけれども。
炭山 加工されていない音ですよね。決して広くない録音スタジオの、その響きまでが聴こえてくるような。
岡村 本当に一発録りだったと思いますよ。まるで今、目の前で演奏されているような臨場感があります。
炭山 ちょっとパーテーションで仕切って、間近で演奏しているような感じですよね。
岡村 家で聴いていてもこれぐらい臨場感が出ると良いですよね。こういう本当に動きの少ない曲じゃないですか、パートもピアノぐらいなので。さっきのオアシスとかと違ってあまり動きがないだけに、本当にこのぐらいリアルな音で聴くと途中で飽きるというか、極端に言えば眠くなるというような心配がないですね。
炭山 歌そのものの魅力に加えて、このニール・ヤングの声の魅力みたいなものが伝わってきますね。彼の声を聴いて惚れこむ人って、結構いると思います。
岡村 そうですね。本当にみずみずしい。枯れているけど、みずみずしさがあるんですね。

◆Asian Roots/竹竹
〜竹でつくった楽器のうねるような音までが聴こえてくる〜
炭山 同じように、録音現場の音が感じられるタイトルを紹介したいと思います。これはジャズ系で、もともと尺八のジョン・海山・ネプチューンというアメリカ人による、全部“竹”で作った楽器のバンドなんです。
岡村 なるほど、すごいですね。楽器を作ったんですか。
炭山 全部創作楽器で、竹製だそうです、この竹竹(たけ・だけ)というグループは。コンガの皮まで、竹の繊維で編んでいます。鳥の声を模した竹笛の音が、もう本当に空を飛んでいるみたいな、そんなイメージを楽しむことができます。
岡村 “竹だけ”ですか、それは面白い!本当にその分響きが、音がうねるようなところまできっちり拾えていて、とても聴き応えがありますね。写真を拝見する限り、楽器自体も非常に良く出来ているようです。なかなかレアで面白い作品を聴かせていただきました。

◆COBALT HOUR/荒井由実 &TECHNODON/YMO
〜なつかしさの片方で、当時の優れた録音技術を発見〜
岡村 ではちょっと趣向を変えて、今度は松任谷由実を聴いてみましょうか。お持ちしたのは荒井由実時代の初期のタイトルです。
炭山 なつかしい音ですよね。
岡村 そうですね。なつかしいですけれども、当時としてはかなり良い状態で録音された作品の一つだと思います。やっぱり、荒井由実周辺のアーティストで当時ほかにもはっぴいえんど(ハッピイエンド)以降の細野晴臣さんとか、山下達郎さんとかその辺のアーティストは、かなり当時から音響というところに着目した音づくりをされていたので。
炭山 特に細野さんは音にこだわるアーティストですね。
岡村 荒井由実はそういう人たちのバックアップを受けて、ずっと音づくりをしてきているので、当時の音には違いないんですけれども、90年代以降の昔のアナログタッチの音みたいなものを再評価する中で、この人の作品というのは若い世代からも評価されてきているのが現状です。

炭山 丁寧に、きれいに録ってあるという感じがしますね。
岡村 確かに。それが逆にきれい過ぎて物足りないと思う方もいるかもしれませんが。
炭山 先ほど聴いたオアシスのタイトルのようなつくり方とは全く対極ですね。
岡村 最初からもうきれいにつくることを前提にされているということで、おっしゃる通り対極の姿勢ですね。
炭山 私からも細野さんつながりでYMOの作品をお聴かせしたいと思います。音が激しく回っているタイトルです。
岡村 やっぱりテクノとかハウスとか、その手のものは本当に顕著ですね。でも今回のシステムで聴くと、リスナーの周囲を回る音づくりがいっそう良くわかりますよね。
炭山 本当は、スケッチショウでも持ってくればよかったんですけれども。でもこのタイトルも、聴き始めると止まらなくなってしまいますね。

◆GORILLAZ/デーモン・デイズ
〜おもちゃ箱のような楽しい曲から色んな魅力が引き出される〜
岡村 次は、ゴリラズというユニットです。一番最初にかけたオアシスとはライバル的なバンドであるブラーのデーモン・アルバーンを中心としたユニットです。これは一応ゴリラズと名乗っていて、ブラーのデーモン・アルバーンであるとうことを全く表に明かしていないんです。アニメーションをビジュアルにした架空のバンドというスタイルで、音的にはギターポップでは全くないんです。春先のiPodのCM曲としても話題になった、ちょっと面白い曲なんですよ。
炭山 エレクトリックビートを弾いているところなんて、らしくないと思いますけれども、ブラーと言われればブラーっぽいですよね。
岡村 ラップパートはゲストが入っていて、もちろんデーモンは歌っていないんですけれども。“ブラックミュージック”、“iPod”、そして“ロックっぽさ”といういろんな要素がつめ込まれています。
炭山 色んな要素を混ぜてつくり込んでいるところは、初期のブラーのイメージが若干ありますよね。言われてみると確かに、みたいな感じがしました。
岡村 途中でアナログノイズをわざと出すような、ああいうちょっとコラージュっぽい展開というのも、何かおもちゃ箱っぽい感じがしますけどね。

◆狂気/ピンク・フロイド
〜聴くたびに新しい、映像が見えるような音〜
岡村 これは、今回ぐらい整った試聴環境でなければ、良さがわからないアルバムかもしれませんね。
炭山 再生装置が良くなればなるほど、ちゃんと情報を出してくれればくれるほど、驚異的なソフトだと思います、これは。

岡村 本当にそう思いますね。いやぁ、これは家に帰ってもう一回聴こうというふうになるというか。
炭山 いや、本当に、これを聴きたさにサラウンドシステムを入れたくなるという人がいると思うんですよね。
岡村 わかります、わかります。恐ろしいですね。70年代にこれですからね。
炭山 200週間ヒットチャートに入った理由がわかるというものですね。
岡村 聴くたびに新しい。映像が見えるような音ですからね。
炭山 私も、一体何十回聴いたかわからないです、楽しくて。
岡村 確かにサラウンドで聴くと余計に楽しさが倍増しますね。曲をなぞって聴く、メロディーを追って聴くという楽しみ方しか、今の若い人たちはもしかしたらないかもしれないですけれども、「音の動き」というものを発見したくなりますよね。
炭山 エンジニアが、「こう、やってやれ」みたいな仕掛けがどんどん見えてくる。これはある種、新しい発見ができる楽しみですよね。

◆CHAOS AND CREATION IN THE BACKYARD/ポール・マッカートニー & BEN FOLDS LIVE/ベン・フォールズ
〜素朴なメロディが伝える世界を垣間見る/ホールの臨場感に酔いしれた〜
岡村 ベン・フォールズがソロになってからのライブDVDと、ポール・マッカートニーの新作を紹介したいと思います。ポールの作品に関しては、なぜ今日お持ちしたかというと、基本的に弾き語りというか、一人で全部録っているんです。すべての録音を楽器演奏から全てポール一人でやっていて、バンド編成ではないんです。さらに、このプロデュースをやっている人というのが最近の若い方で、曲そのものは素朴ですけれども、音は昔のポールの作品と全然違って聴こえるのかなという曲です。
炭山 若手のエンジニアの方がすごくポール・マッカートニーという人に敬意を払っているような、そんな感じの音ですよね。

岡村 まさにそういう感じなんです。先ほどのピンク・フロイドのように、あからさまに音の良さとか面白さというものが伝わってくるソフトじゃないですけれども。
炭山 仕掛けを発見するためというような聴き方でしたよね。
岡村 そうですね。それとは逆に、こういう「ああ、こういう歌ものでしょう?」とか、素朴に「メロディーがいい曲でしょう?」というような聴き方でも、ちゃんとしたシステムで聴くことで、全然その音の見えない世界というものが伝わってくるということが、とてもよくわかりますね。
炭山 一方でベン・フォールズは、DVDビデオだから映像が与えてくれるインパクトももちろんあるんですが、音を聴くだけでも場内の歓声というか、観客に埋め尽くされたホールの雰囲気も伝わってきて気持ちいいですね。
岡村 プレーヤーはピアノ・ソロなんですけれども、結構パワーのあるステージで、これは映像を観ながら楽しむのにもお薦めです。今の1曲目なんて少ししっとりめの曲ですけれども、後半になると例によって盛り上がって楽しいですよ。ベン・フォールズファイブ時代の曲もあって。

◆パガニーニアーナ/荒井英治 & 高橋悠治、ジョン・ケージ:プリペアド・ピアノと室内管弦楽の為の協奏曲/高橋悠治
〜“きれい”な録音の“きれい”なところがよくわかる〜
岡村 『パガニーニアーナ』はきれいな音ですね。
炭山 これはもう、私が持っている中で一番ヴァイオリンの音がきれいかなというタイトルなんです。結構オンで録っていますけれど、ホールトーンもすごく入っていますね。オンだと、本当に何かこう「松ヤニが飛び散るような」とよく言いますけれど、ここまできれいに入っている録音はそんなにないです。あと、こちらは参考までにお聴かせしたいんですけれど、『高橋悠治、ジョン・ケージ〜』より6 曲目の『ルーカス・フォス/バロック・バリエーションズ』も聴いてみましょうか。これはオープニングからいきなり、“ドスン!バタン!”ですから。

岡村 すごく音が丸いですね。 とがっている印象がないんですけれど。
炭山 思い切りマイクを近づけて、突き刺さるような音ではないですけれども、一番最初の“カーン”という金属楽器の音なんかはどうでしょうか。
岡村 あれはアタックが強いですよね。
炭山 飛び込んできますよね。もともとこれはホールに演奏者を置いて、客席にマイクを2本だけ立てたような、そんな録音ですので。楽曲が派手派手しいだけという説もあります。
岡村 こういうものがありだったら、私も今回、ストックハウゼンとかバルソンとか持ってくるんだったなぁと思いました。今回は普通にロックなものを多く揃えてきたので。
炭山 ストックハウゼンは、さすがに私もちょっと自粛したんですけれど。
岡村 ねえ、自粛したんですよ私も。機会があれば次はぜひお持ちしたいと思います。

◆THE GREAT FANTASY ADVENTURE ALBUM
〜聴くたびに新しい、映像が見えるような音〜
炭山 最後に『THE GREAT FANTASY〜』より、『Cybergenesis』と『Jurassic Lunch』の2曲をかけたいと思います。この作品はあくまでもデモ用音源といった趣ですね。これは恐竜のお食事シーンなんです。
岡村 面白いです!これは、いわゆるオーディオ評論家の方が試聴用の音源としてよくお使いになるタイトルなんでしょうね。普通にお店に売っているんですか?
炭山 「一応」売っているんですが。というのは、5Hzからの音が収録されているらしいんですよ。5Hzからというのは理屈ではおかしいんですが、本作を携えてオーディオショップなどで製品を試聴してみたいと考える方は、これでウーファーの能力をチェックしようと試みます。お店やメーカーの側としてみると、アンプにリミッターをかけていない状態なので困ってしまうんです。今回の試聴機の「FreeStyle Series II」のようにアンプが映像型であれば、アンプの方でコンプレッションをかけられるんですが、そのどちらもやっていないとなると、アンプメーカーもスピーカーメーカーも困惑するという。本機のようにしっかりとしたスピーカーであればいいですが、普通の小型スピーカーでこれをかけたら、音が出なくなったり、ユニットがゆがんでしまいますね。

岡村 じゃあ、普通に家では聴けないですね。そうなるとこれは、何の目的で作られたんですか。
炭山 作ったのはアメリカ人ですから、向こうはでかいスピーカーが普通に家にあってもおかしくない環境なんだと思います。もともとこのTELARCというレーベルは、チャイコフスキーの『大序曲1812年』を録音するのに、わざわざ本物の大砲を鳴らしちゃうような人たちなものですから。アナログプレーヤーの頃にレコードをかけていると、レコード針やカートリッジによっては、そのドーンという音の所になると、ボーンとアームが飛んで、どこかよそへ行っちゃうんですよ。
岡村 アメリカ人らしさを感じる、ちょっと楽しい話ですね!
炭山 それがかかるか否かで一喜一憂したりしたものです。この黄色いレーベルにはご注意みたいなところがありますね。
岡村 でもこういう機会がないと、ここまでリアルには楽しめないので、面白いですよ。
炭山 ひっくり返して言うと、このシステムをご家庭に入れたら、まずどんな音量でも余裕を持って聴けるということです。
岡村 なるほど。いやぁ、おなかいっぱいになりました。本当に今回のような環境であれば、もっと幅の広い作品をご用意すればよかったです。聴いて行く中でも、「あのソフトだったらどうだろうな」ということを色々と考え始めてしまったので、次の機会にはぜひ色んな作品を持ってきて試聴してみたいと思っています。自分としても新たな発見というのが、各ソフトにおいてありますね。できれば全ての音楽ファンの方にこういう体験をしてもらうことが、一番望ましいんですよね。本当に沢山の大きな発見がありました。ありがとうございました。
炭山 私も音楽評論のスペシャリストの方と今回、こうしてお話しできたことは非常に貴重な体験となり、楽しかったです。ありがとうございました。


個人的には使用していないが、手軽な一体型のミニコンポの普及が音楽ファンを音響面へのこだわりから遠ざけているように感じる昨今。一方で、より進む高性能スピーカーの小型化に、わかってはいても抵抗を感じないでいられないのは、そうしたイメージによるところが大きいのだろう。

今回試聴したボーズの「FreeStyle Series II」も見た目は確かに小さいので、素人目にはミニコンポのスピーカーと同じに映るかもしれない。だが、ニール・ヤングやオアシスといったラフなタッチのロックのそのザラリとした音の粒立ちに思わず鳥肌が立った。70年代の録音のニール・ヤング「ハーヴェスト」などは、あたかも今目の前で演奏しているような錯覚さえ感じてしまったほどで、まるで室内ライヴさながらの生々しさである。特に、中音域の音の鳴りはこれまで味わったことのないものだった。迫力があるとかダイナミックという表現とも違う、素肌にピタリと張り付いてくるような音がこんなに小さなスピーカーで味わえるとは、と今さらながらに目からウロコが落ちる思いだった。


BOSE フロントサラウンドシステム
FreeStyle Series II (FS-321II)
\94,290(税込)
2005年11月21日発売

>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる

岡村詩野(Shino Okamura)

音楽評論家、自主制作雑誌『Kitten』の編集・発行人。各種音楽専門誌やファッション誌の音楽ページなどに執筆。東京・渋谷の『東急セミナーBE』の音楽ライター入門講座講師も務めている。www.kittenmagazine.net


炭山アキラ(Akira Sumiyama)

1964年、兵庫県神戸市生まれ。埼玉県松伏町在住。90年代よりオーディオ・ビジュアル雑誌に在籍し、以後FM雑誌の編集者を経てライターに。FM雑誌時代には故・長岡鉄男氏の担当編集者を勤める。現在は新進気鋭のオーディオライターとして、様々なオーディオ誌にて活躍する。

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