【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

BOSE最新のパーソナルオーディオシステムが我が家にやってきた

アンプとスピーカー、プレーヤーの相性を探り、そして最適なセッティングを追い込んでいく。趣味としてのオーディオにはそんな楽しみ方がある。しかし一方で、もっと気軽に良い音を楽しみたいという欲求も大きい。オーディオ好きである前に、我々は音楽好きなのだ。

そんな筆者が書斎用にBOSEのWaveRadio/CDを購入したのはもうずいぶん昔の話だ。コンパクトなラジカセと同じくらいのサイズ。それでいて、本格的で豊かな音。書斎でも良い音を気軽に楽しみたいという思いは見事に達成され、少なくとも今回のリスニングを行うまではWaveRadio/CDの実力に十分満足していた。


まるで“音楽を再生するオブジェ”のような機械を感じさせないデザイン

BOSEのWave Music Systemは、WaveRadio/CDに続くパーソナルオーディオシステムの最新モデルである。サイズも見た目の印象も大きく変わらないことから、デザイン、性能をブラッシュアップした「マイナーチェンジ」かと油断していたが、これが大きな誤解だったことを、実際に聴いて知ることになった。

今回は筆者が愛用する「WaveRadio/CD」と比べながら「Wave Music System」の進化を検証してみた

その機能には前モデルから大きな変更はない。ラジオ、CDの再生だけでなく、スヌーズつきのアラームの音量を設定してオンオフタイマーが可能なベッドサイドオーディオとしての機能も充実している。ピュアオーディオを突き詰めるのではなく、生活の中に溶け込むオーディオを指向する本機を象徴する部分だろう。

一方で時代を反映し、CD部はマルチドライブ化し、音楽CD以外にも、CD-R、CD-RWの再生に対応するとともに、MP3再生をサポートした。書斎やリビングで心地よいBGMを流す装置として考えると、通常のCDの数倍から、圧縮レートによっては十数倍の曲を収納できるMP3/CDはディスク交換なしに半日過ごせる訳で、まさに本機のコンセプトにも合致する楽しみ方であるといえる。なお、英数表示のMP3タイトルについては、再生時にファイルのタグデータを読んで曲名やアーティストを液晶パネルに表示することができる。

デザインは前モデルを継承しつつ、よりシンプルで美しい印象を持たせている。前モデルでは本体の天板にまとめられていた操作部が一掃され、大きさを大小それぞれ取りそろえたリモコンに集約している。

もともと美しいフォルムをもったシリーズだが、前モデルが90年代終わりの機能美をみせるデザインであったのに対し、本機は音楽を再生するオブジェとして機械を感じさせないデザインを指向しているようだ。ボディ底面以外、どこにもビスのない徹底した美意識や、周囲の環境光による自動減光機能も備える液晶表示部など、高品位なデザインを指向するBOSEの姿勢は好感が持てる。

「WaveRadio/CD」(左)では、本体の天板部に配置されていた操作ボタンを「Wave Music System」(右)は、すべて一掃してシンプルでより暖かみのあるデザインとしている
Wave Music System」には同じ機能を持つ大小ふたつのリモコンが付属する。リモコンひとつですべての操作が可能なシンプルさも魅力だ
Wave Music System」では接続端子本体背面部に配置。ヘッドホン端子も搭載され、夜中のリスニングも楽しめる


高級オーディオの原点と呼べる上質な音楽再生能力

肝心の音の話をしよう。試聴前はデザインがほぼ同じであること事から内部構造も似たものと推測し較べれば、その違いが分かるくらいの改良ではないかと思っていたが、実際には両機の間に大きな音の差が存在した。

BOSE独自の「アコースティック・ウェーブガイド・テクノロジー」を進化させた「デュアルウェーブガイド」を採用。音の通り道となるスペースを60%拡大させたことにより、前モデルより1/2低い音声の表現が可能になった

明らかに低音の豊かさと安定感が向上している。前モデルでもサイズに似合わない低音を味わうことができたが、本機ではその低音のボリューム感が圧倒的だ。しかもイコライズで低音を強調したようなものではなく、あくまで自然で豊かな低音だ。前モデルでは1本だったウェーブガイドがデュアル化し、音響的に容積を60%も拡大したと聞けばそれも道理だ。アコースティック・ウェーブガイドはBOSEスピーカーの核となるテクノロジーのひとつで、豊かな低音再生とユニットの小型化を両立させるものだが、この部分の全面的改良が製品名の変更までに及んだフルモデルチェンジの「キモ」だと言えよう。

実際の音は中低音域を中心に、音が部屋に満ちる感じというと分かりやすいだろうか。スピーカーから音が出ている、というより、スピーカーを中心に部屋が音楽に広がっていく印象だ。もともとBOSEの音作りは、厳密な定位感や音の分解能を追求するより、音がいかに素直に空間に広がっていくか、という「音場」重視だと筆者は思っているが、本機はまさにその成功例と言える。コンパクトなラジカセほどのサイズから奏でられるサウンドが、余裕をもって書斎の空間を支配する。

様々なソースを聴く中で、特に得手不得手は感じなかったが、やはりジャズボーカルなど中低音が活きるジャンルに大きな進化を感じた。ピアノ、サックス、ボーカル、それらが重なり合って厚みのある音をつくる時に、豊かで、つながりの良い音で再現する。筆者はリビングでサブウーファーに低音部を渡したシステムを組んでいるが、聴きようによっては本機の方が自然で豊かな表現が可能であるようにも思えたほどだ。


ライフスタイルとしてのオーディオを豊かに広げるシステム

BOSEが提案するパーソナルオーディオシステムは単に高音質な高級ラジカセのようなものではない。上位システムに匹敵する豊かな音を、セッティングフリーで実現する音楽再生「家具」なのだと思う。至上の音を追求していく趣味としてのオーディオではなく、生活の中に上質な音を提供するライフスタイルとしてのオーディオである。

オーディオシステムを持ち運ぶという提案。生活シーンの変化に応じて書斎からリビングへ、リビングから寝室へと、音楽を気軽に持ち運べるモバイル性能の高さにも注目したい

前モデルを使用する筆者の家でも、普段は書斎で静かに音楽を奏でているが、友人たちを集めてのミニホームパーティでは、システムをリビングに移動させてBGMを楽しんでいる。こういう用途の場合は、大がかりなオーディオシステムは大仰に過ぎると言えよう。また時には寝室で子供の寝かしつけ用にと、家中を移動するモバイルオーディオシステムとなる。そんな気軽な使い方を、ラジカセのようなプアな音ではなく、本格的な音で実現できるというのがWave Music Systemの真骨頂なのだと思う。豊かな音に満ちた、豊かな生活。そこに魅力を感じるのなら、最良の選択肢がここにあると言えよう。Wave Music Systemの進化を目の当たりにしたいま、筆者としては本機に買い換えるべきか否かの、非常に悩ましい問題を抱えてしまった。


BOSE パーソナルオーディオシステム
Wave Music System
\74,970(税込) /ダイレクト販売限定商品
2005年4月1日発売

>>ボーズ・エクスポート・インクの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる

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斎賀和彦(Kazuhiko Saika)

1963年名古屋生まれ、東京都在住。東京ムービー新社で劇場映画「AKIRA」参加後、CF制作会社井出プロダクションで企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中で、ノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う。「デジタルスケープ」チーフトレーナーを経て、東北芸術工科大学デザイン工学部情報デザイン学科で理論と実践の両面から映像を教える。並行して写真・映像等の企画・制作を行うほか、デジタルAVを中心にビデオ専門誌等に執筆。デジタルハリウッド大学院非常勤講師。

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