KEF、Uni-Qドライバー搭載のアクティブスピーカー「LS LUXE」。優美なデザインと高い音響性能を両立
2026/07/30
私は長年、CDプレーヤー/レコードプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプを連ねたセパレートタイプのオーディオを使ってきた。しかし、この10年のオーディオの進化を前にすると、シンプルなシステムこそ、この現代に相応しいのではないかと考えるようになってきた。
私は、そんな現代のシンプリシティの代表として、インターネットに接続できるハイエンド・アクティブスピーカーに大きな可能性を見出している。その代表的なブランドが、イギリスのKEFである。
KEFはこれまでに、「LS50 Wireless II」や「LS60 Wireless」といったアクティブスピーカーを生み出し、この市場をリードしてきた。私はこれらの先進的な技術、そして音質を高く評価してきた。
その理由は、KEFの独自技術である中高域を再生する同軸型ドライバー「Uni-Q」の存在が大きい。また「LS60 Wireless」に関して言えば、キャビネットに対向配置することでウーファーの振動をキャンセルする「Uni-Core」の技術も忘れてはならない。
そしてドライブ力と音質を考慮した中高域用のAB級アンプと、低域用のD級アンプ。チャンネルデバイダーや信号処理を行うDSP技術と再生アプリ。これらが完璧にバランスすることで、空間描写性の高い、高解像度ワイドレンジ再生を実現してきたのだ。
KEFは、この先どんなモデルを登場させるのか。以前から興味津々であったが、この夏新たに「LS LUXE(リュクス)」という素晴らしい新製品を登場させた。価格は税込で70万円強、「LS50 Wireless II」と「LS60 Wireless」の間に位置する、アクティブスピーカーとしてはハイエンドクラスの製品となる。
私はこの「LS LUXE」のサウンドを表参道のKEF Music Galleryで体験し、大変に感激した。そしてその技術詳細を、KEFのチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)、ジャック・オクリー・ブラウン氏(Dr.Jack O'Clee-Brown)にインタビューする機会を得た。
「LS LUXE」で再生したのは、私が普段からリファレンスとして使用しているボーカル曲「Quiet Winter Night」。他にも、レンジの広いコンテンポラリー・バレエミュージック、サム・シェパードの「Falling to Earth」やユジャ・ワンによるメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」など。すべてQobuzを利用して再生した。
そこで強く感じたことは、高い音圧を持った3D的な立体空間であった。音の透明度は極めて高く、音楽においてエッセンシャルな弱音と倍音の再現性が極めて高い。ボーカル曲では、歌い手の実在感や歌うしぐさを鮮明にし、あたかも生演奏のように、眼前にステージが広がってくる。
冒頭から強烈な弦楽と打楽器が鳴り響く「Falling to Earth」では、音の歪み感は皆無で、解像度と空間描写を全く崩すことなく再現する。空間を舞う多彩なエレクトリックサウンドにおいても、音の滑らかさを失うことなく、アナログ・テイストを維持する。
トゥーランガリラ交響曲においても、大型のタムタム(ドラ)や打楽器、オーケストラの各パートの響きを鮮明にし、ピアノの輝きのある響きを失わないことに圧倒された。
音が実にハイエンドだ。日本的な言葉としては、音楽のコクや旨みを引き出し、音楽を深淵にするところが魅力的である。
では、どんな技術が搭載されたのであろうか。ブラウン氏の解説を元に紐解いていこう。
それは、「唯一無二のキャビネットとUni-Qドライバー、駆動アンプを統合した徹底した低歪み化技術」である。
まずキャビネットの低振動、低歪み化技術を紹介しよう。美しく、完璧なラウンドカーブの形状は、回折効果も発生しない。ブラウン氏いわく、「デザイナーのロス・ラブグローブ氏は音楽に理解があり、フラット形状ではなく、デザイン的にも音響的にも理想的なこの形状を提案してくれました。また、フロントのトリムリング(ドライバーの取り付けボルトを隠すリング)もなくし、ドライバーをキャビネットの後ろからボルトで止めることも新たなチャレンジとなりました」
キャビネット素材については、「振動を低減し、低歪み化を実現するために、BMC材を採用しました。熱硬化性樹脂プラスチックに、ガラス繊維など配合した素材となります。前後の2ピース構造で、ボルトを使わず、強力で密着性の高い接着剤で組み合わせ、シームレスで全体を美しく塗装しています」。キャビネットの剛性の高さも、3D的な立体表現に大きく寄与しているだろう。また内部に、多数の長さの違うリブを配置し、内部乱気流と内部振動を低減させていることにも感心した。
次に着目したのは、Uni-Qドライバーと専用アンプを組み合わせた低歪み化技術。ブラウン氏は、「音の透明感に関係するのは、アンプとドライバー方式にあり、機械的振幅は電流に比例します」と解説。「そこには、ボイスコイルのインダクタンスや熱の問題もあります」
本機には、ハイファイスピーカーとしては初の「Velocity Control Technology」(VECO)が採用されている。これは、中低域振動板を高精度に駆動し、振動歪みを大幅に低減する独自技術である。昨年発表されたサウンドバー「XIO」にも搭載された技術だ。
ブラウン氏はその内容を具体的に説明して下さった。「駆動アンプに一般的な電圧アンプではなく、電流アンプを採用しました。ボイスコイルを電流駆動しており、ボイスコイルの内側にセンシングコイルを配置しています。このオレンジのシートのようにフラットなフィルムです。
4つのスピーカーの断面のようなデザインがありますが、これがコイルで、正巻きコイルと逆巻きコイルが交互に並んでいます。微細なコイルパターンの長さは50mにもなります」
「振動板に接続したボイスコイルの振動歪みが増えると、このセンシングコイルに歪み成分となる電流が流れます。これを駆動アンプのマイナスにフィードバック(帰還)し、消滅させます。これにより、中低域振動板の低歪み駆動ができ、高精度な振幅が実現できるのです。音質は明らかにピュアになります」
もう少し解説すると、センシングコイルの正巻きと逆巻きパターンは、対応配置となり、正確にボイスコイルが動作している場合は、電流が均等に4つのコイルパターンに流れるため、コイル磁界による電流はキャンセルされ、電流はアンプに帰還しない。
激しいコイル振幅では、4つのコイルパターンに不均等に電流が流れるので、電流はキャンセルされず、歪み電流は合算され、アンプのマイナスに帰還し、ピュアな信号が振動板を正確に駆動することができるのである。
これを高速かつリアルタイムに行っているのがVECOなのである。これにより、ドライバーの機械的な低歪み化と振動板駆動の低歪み化を実現し、Uni-Qドライバーのポテンシャルをさらに高めることができたのである。
さらに、トゥイーターの背後に設置される迷路のようなプレート「Metamaterial Absorption Technology」(MAT) も本機専用に開発。振動歪みを徹底排除している。また外周のミッドバス・ドライバーについては、振動板を支えるフレームと磁気回路の間に特殊なダンパーリングを装着し、機械的振動の低減を狙っている。
アンプについては、高域に100WのAB級電流アンプを、ミッドバスには、280WのD級電流アンプを搭載。測定データからもフラットレスポンスは明らかで、THDも低減している。これらの高度な技術が、音の美しさとして結実しており、私もすっかり魅了されてしまった。
KEFの得意とするDSP技術についても尋ねてみた。ブラウン氏は「私たちはマーケットの中で、アクティブスピーカーの優位性を早期から予測し、開発を行ってきました。そのため、DSPについても長い開発の歴史がありますし、ユーザーが直感的に使えることも大切にしています。DSPフィルターは位相を補正し、スムーズでバランスの良い音を提供します。またアプリから設定できるルームイコライザーも装備しています」。専用操作アプリ「KEF Connect」の使いやすさも、私がKEFを高く評価する理由の一つである。
KEFの近年の技術進化、そしてその音質は、一昔前のアクティブスピーカーの枠を遥かに超えており、今やスタジオモニターの域にも到達している。
LS LUXEは、デザイン、独自技術、音質がウェルバランスしており、多くの愛好家を魅了することであろう。そこには、長く愛用できる佇まいがある。
LS LUXEは、エクリプス・ブラック、ダスク・チタニウム、ミネラル・ホワイトという3種類の美しい仕上げも用意されており、すべて表参道のKEF Music Galleryにて体験できる。
ギャラリーはまさに日本におけるのKEFの重要な発信地であり、フラグシップスピーカーの「MUON」や、サウンドバー「XIO」、ホームシアターシステムなど常設されている。ぜひ機会を見つけて、KEF Music Galleryにも足を運び、LS LUXEの類稀なる佇まいをご自身の目と耳で感じてほしい。
(提供:KEF JAPAN)