夢見た薄さが実現、iPhone Air レビュー。“初もの”には不便さと工夫しがい、共にあり
山本 敦アップルが9月19日に発売する4つの新しいiPhoneを試用した。今年1番の注目株である薄型軽量な「iPhone Air」を中心にファーストインプレッションをレポートする。
iPhone Air、実際どれくらい薄い？
2025年の秋にアップルが発売するiPhoneは以下の4モデルだ。
- iPhone 17 Pro（6.3インチ）
- iPhone 17 Pro Max（6.9インチ）
- iPhone 17（6.3インチ）
- iPhone Air（6.5インチ）
iPhone 16をベースとする6.7インチの大きなiPhone 16 Plusに後継機はなかった。欠けたピースをiPhone Airが埋めた格好になる。
アップルはiPhone Airが「まったく新しいiPhone」であることを強調する狙いもこめて、他のモデルと共通のナンバリングとなる「17」を付けなかった。来年以降はナンバリングが追加されるのか、それとも「11インチiPad Air（M3）」のように、チップの名前で呼び分けられるようになるのだろうか。
iPhone Airの本体は厚さが5.64mmだ。といってもどれほど薄いか伝わりづらいと思うので、2012年にアップルが発売した第5世代の「iPod touch」と比べてみた。
見た目や手で触れた感覚はiPhone Airの方がわずかに薄い感じがしたので、計測してみると、iPod touchは厚さが約6.1mmだった。実際に0.5mm前後、iPhone Airの方が薄かった。
当時、スマートフォンであるiPhoneも、いつかポータブルオーディオプレーヤーであるiPod touchくらい薄くなる日がくるのだろうかと思っていたが、ついにその日が来た。
カメラの画質は優秀だがレンズが1つ
iPhone Airは、おそらく今後「薄いことが当たり前」になる、iPhoneの歴史的な“初もの”だ。最初はWindowsに対応していなかったiPodや、USBポートが1つしかなかった初代MacBook Airのように、初ものには不便さも付きまとう。iPhone Airで、やはり最も気になるのはシングルレンズのカメラだ。
ズーム撮影は光学が最大2倍、デジタルで10倍までとなる。そして超広角撮影、マクロ撮影には非対応だ。マクロ撮影については昨今は多くのスマートフォンに採用が広がっている。料理や植物のクローズアップ写真が、iPhone Airに乗り換えたとたん撮りづらくなるのは辛い。
取り急ぎの対策としては、料理など手もとの被写体をクローズアップして撮りたい時には、被写体から少しカメラを引いて、光学2倍ズームを活用するといいだろう。
48MP Fusionカメラの画質はとても良い。ナイトモードも搭載されており、少し暗い場所の風景もきれいに撮れた。
iPhoneをタテ向きに構えつつ、横向きの高精細なセルフィーが撮れる18MP センターフレームフロントカメラの機能は、iPhone Airにもある。これはビデオと写真、両方の撮影時に使える。動画クリエイターにも間違いなく歓迎されるだろう。
ここで1つ注意したいことがある。iPhone Airが搭載するUSBコネクターは、iPhone 17 Proシリーズより転送速度が遅い最大480MbpsのUSB 2なのだ。
またUSB 2.0規格のコネクタは基本的にはデータ転送と給電にしか対応しておらず、DisplayPort映像出力ができない。DisplayPort Alt Modeに対応するスマートグラスなどの外部ディスプレイ機器にも接続できないようだ。
カメラの表現力の幅広さやデータの扱いやすさを優先するのであればiPhone 17 Pro、iPhone 17 Pro Maxを選ぶべきだと思う。
コンテンツ視聴の際にはAirPodsを使いたい
アップルが今年発売するiPhoneのSuper Retina XDRディスプレイは、いずれも優秀だ。特筆すべきはiPhone AirとiPhone 17にも最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionを載せて、精細感のある表示と電力効率アップを合わせて実現したことだ。常時表示ディスプレイにも対応したことで、時刻やウィジェット、ライブアクティビティの確認もスムーズにできる。
6.5インチのiPhone Airはビデオ、ゲームコンテンツの映像がをのびのびと楽しめる。一方で内蔵スピーカーのサウンドに注意したい。というのも本機の内蔵スピーカーだけがモノラル仕様だからだ。キッチンで動画を見ながら作業をしたり、ゲームを遊ぶ時に迫力あるサウンドが得られないことが残念だ。AirPodsシリーズなどイヤホン・ヘッドホンを活用したい。
iPhone Airのバッテリー持続時間については、アップルの公式スペックでは「最大27時間のビデオ再生」が楽しめるという指標が公開されている。iPhone 17が最大30時間、iPhone 17 Pro Maxは最大39時間なので、比較するとiPhone Airのバッテリー容量が少なめであると想定される。
実用的にはどうだろうか。iPhone AirにUSB接続ができるポータブルヘッドホンアンプを接続して、Apple Musicで54分のアルバムを連続再生したところ、バッテリーの残量が約10％減った。同じ設定でiPhone 17 Proのスタミナも試したところ、バッテリーは約6％消耗した。やはりiPhone単体での持続時間を比べるとProシリーズに軍配が上がる。
ただしアップルは、iPhone Air専用の「MagSafeバッテリー」を発売する。iPhone Airの背面に美しく装着できるようにデザインされており、最大65%の追加充電ができ、高速充電機能も搭載している。アンプを組み合わせたポータブルリスニングにiPhone Airを頻繁に活用するのであれば、このMagSafeバッテリーを揃えたい。
eSIMは便利だが…通信キャリアのサービスが限られる
最後にeSIMについて触れる。iPhone17ファミリーとiPhone Airは、いずれも物理的なSIMカードが使えないeSIM専用のiPhoneだ。2つのeSIMを同時にアクティベーションできるDSDS対応で、8つ以上のeSIMデータの保存にも対応している。
筆者はahamoとIIJmioの通信回線を契約している。今回はiPhone Airの購入に向けて、IIJmioの回線を追加契約した。契約情報をiPhone Airにダウンロードするだけで簡単にアクティベーションができる。
筆者が昨年から使っているiPhone 16 Proには、物理的なSIMカードや従来のプロファイル移行手続きを経ずに、eSIM情報を新しい端末に直接書き込める「eSIMクイック転送」という機能がある。
便利な機能だが、対応するキャリアが限られる。例えばahamoは対応しているが、MVNOであるIIJmioはこれが使えない。
この場合何が不便に感じられるかといえば、複数台のスマートフォン間で物理的SIMカードのように使い回すことが難しくなる。IIJmioの場合は、端末から端末に乗り換える際にはeSIMのプロファイル発行手数料が再度必要だ。複数の端末を使いわけているユーザーには不便に感じられるところもありそうだ。