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カメラとゲームの映像をAIで進化。クアルコムが新旗艦SoC「Snapdragon 8 Elite Gen 6」2種類発表
山本 敦米クアルコムが毎年ハワイのマウイ島で開催する「Snapdragon Summit」を、今年も9月22日から現地で取材した。
イベントの初日に開催された基調講演では、スマートフォン向けの次世代フラグシップSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 6」と「Snapdragon 8 Elite Extreme Gen 6」が発表された。
エージェンティックAI時代の主役もスマートフォン
今年、クアルコムが最新SoCで掲げるテーマは「エージェンティックAI」時代をリードすることだ。エージェンティックAIとは、ユーザーの質問に答えるだけでなく、その意図や状況を理解し、必要なアプリやサービスを使い分けながら自律的にタスクをこなすAIを指す。
基調講演に登壇したクアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOは、本格的なエージェンティックAIの時代が到来しても、コンシューマ向けデバイスの主役は引き続きスマートフォンをはじめとするパーソナルなモバイル端末になると語った。
そのうえで、これまでアプリを中心に組み立てられてきたモバイル体験は、今後「ユーザーのインテント(目的・意図)から始まる」ものへ変わっていくと展望する。
例えば「欲しかった商品が値下がりするタイミングを見計らって購入する」「カレンダーを確認しながら友人にコンサートの日程を提案し、互いの予定が合えばチケットを予約する」といった用途が挙げられる。
モバイル端末がユーザーの意図をくみ取り、その実現に必要なアプリやサービスをAIが自律的に選び、適切なタイミングで実行する。日々の予定や行動、利用するサービスなど多くの情報が集まるスマートフォンだからこそ、AIエージェントとの親和性が高いというのがアモン氏の見解だ。
“8 Eliteシリーズ”が2つのSoCに分岐
新世代のモバイル向けSoCは、前世代のSnapdragon 8 Elite Gen 5を継ぐ主力の「8 Elite Gen 6」と、さらに高負荷な用途を担う「8 Elite Extreme Gen 6」の2本柱となった。新しい8 Eliteシリーズを搭載するスマートフォンについては、シャオミとモトローラがいち早く端末を発表した。
基調講演に続いて開催されたセッションでは、クアルコムのMobile Handset SVP&GMであるクリス・パトリック氏が詳細を説明した。
いずれのSoCも2nmプロセスルールで製造され、独自設計のOryon CPU、Adreno GPU、Hexagon NPUを備える。ふたつのSoCは動作クロックが異なるだけでなく、上位のExtremeには映像制作やゲーム、より大規模なAIモデルの駆動を想定した強化が施されている。
8 Elite Gen 6のOryon CPUは、2基のPrimeコアと6基のPerformanceコアで構成され、Primeコアの最高クロックスピードは5GHzに達する。前世代の8 Elite Gen 5との比較では、CPU性能が10%、GPU性能が35%向上した。
ただし、今回の進化をベンチマークの数値だけで評価するのは十分ではない。長時間の動画撮影や編集、ゲーム、AI処理を1台の端末で安定して継続できるかどうかが、2つのSoCの特性を見分ける指標となる。
AIにより被写体を深く理解するカメラの機能
カメラの画像を処理するSpectra ISPには「Intelligent Pixel Control」が追加された。被写体を領域ごとに識別する「セマンティック・セグメンテーション」自体は従来から搭載されていたが、新世代ではAI処理を担うNPUとISPの間で受け渡す画素情報を8bitから16bitへと拡張した。
識別対象は従来の32カテゴリーから衣服、髪、空、顔など数百のカテゴリーへと拡大した。画面に複数の人物が出入りしても個別に追跡し、人物ごとに画質を調整するなど、撮影シーンに即した細やかな画像処理を行う。これにより8 Elite Gen 6シリーズを搭載する端末は、より精度の高い写真や動画の撮影が可能になる。
色づくりにはリアルタイムの3D LUTを適用する「Elite Color Engine」を採用した。LUTは映像の色調やトーンを決める変換データであり、後編集で適用していたルックを撮影段階の処理に取り込める点が特徴だ。
また「Motion Intelligence」により被写体や撮影者の動きを予測し、手ブレ補正を支援する。これらは撮影後に写真全体へ一律に効果を施す方式とは異なり、カメラが捉えた対象を記録の過程から解析・処理するアプローチといえる。
動画撮影スペックは8 Elite Gen 6が最大8K/30fps撮影および4K/120fpsのスローモーションに対応するのに対し、上位のExtremeでは8K/60fps、4K/240fpsまで対応幅を広げた。
さらにExtremeは、撮影後の本格的な編集工程を見据えた動画形式「Advanced Professional Video(APV)」もサポートする。なお、実際の撮影仕様や画質は端末メーカーが採用するセンサー、レンズ、放熱設計、画像処理チューニングにも深く関わる。
AIによるゲーム描画の補完と音声処理
ゲームの映像処理では「Adreno Neural Fusion」が導入された。低解像度で描画した映像をAIで高精細化するSuper Resolutionと、フレーム間に新たなコマを補間するFrame Generationを組み合わせた技術だ。展示会場では実機操作によるデモが行われ、すでに複数のゲームタイトルで採用が進んでいることが示された。
上位のExtremeでは、GPU内にAI処理専用の「Adreno Matrix Core」を搭載している。ゲームの描画データを外部回路へ移さずにGPU内部で高精細化やフレーム生成を実行できるほか、高速メモリ「Adreno High Performance Memory(HPM)」に処理データを保持することで、メインメモリとの通信を削減し、速度と電力効率を改善している。
動画再生面では、Extremeのみ次世代映像圧縮規格「VVC(H.266)」の再生に対応する。従来のHEVC(H.265)に比べ、同等の画質をより低容量で伝送できる規格だが、実利用には配信事業者や再生アプリ側の対応が前提となる。
音声処理においては周囲の雑音下でも話者の声を聞き取りやすくする「AI Voice Bubble」を搭載し、通話や録画時の音質を高めている。録音後のデータから音声を抽出し、環境ノイズを低減する処理も備える。また頭部の動きに追従して音像を保持する「Qualcomm Spatial Audio Renderer」により、遅延と消費電力を抑えた空間オーディオを実現する。
Googlebookが示す「端末をまたぐ体験」の拡張
今回の発表では、PC領域におけるグーグルとの協業の広がりも紹介された。基調講演には米GoogleのPlatforms&Devicesシニア・バイス・プレジデント、リック・オスターロー氏が登壇した。
クアルコムとグーグルのパートナーシップは、スマートフォンから車載システム、そして新たなノートPCカテゴリーである「Googlebook」へと展開している。オスターロー氏は、OSに知能層を付加する「Gemini Intelligence」について、質問応答にとどまらず「ユーザーが目的を達成するための支援」に移行するものだと述べた。
同氏が言及したのは、複数端末間で継続するコンテキスト(文脈)の共有だ。スマートフォンから自動車へ移動してもAI側でユーザー情報が引き継がれ、端末ごとに設定や説明をいちからやり直す必要がない使い方を想定している。デバイスごとの制約や発熱に対応しつつ、オンデバイスとクラウドの処理を両立させるため、両社は深いレイヤーでの協業を今後も継続するという。
GooglebookはGemini Intelligenceを中心に据えたノートPCであり、Snapdragon X Eliteを採用した製品が各PCメーカーから発表されている。今回のスマートフォン向け8 EliteシリーズとPC向けのX Eliteは設計が異なるSoCだが、AIをオンデバイスで動かし、端末間の体験を連携させるという方針は共通している。
ユーザーの意図を汲み取って自律的に動作するAIデバイスの中核として、今回の2種類のSoCがどのような製品体験を生み出すのか、今後登場する各社の実機での実装にも注目したい。
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