公開日 2018/07/04 08:00

「ゲーム向けヘッドホン」は普通のヘッドホンと何が違う? ゲームはもちろん、音楽や映画でも確かめた

音の“聞こえ方”はどう違うのか
編集部:押野 由宇
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE


映像鑑賞

映像鑑賞では、まず通常のステレオ再生で視聴した。ゲーミングヘッドセットから得られたのは、 “小さなリスニングルーム感” だ。前述の通り、耳周りの空間上に音を響かせる聴こえ方であることから、しっかりとリスニングポジションを定めたスピーカーで視聴しているかのように感じられる。そのうえで、体勢を変えても聴こえの良い “ホットスポット” からズレないというヘッドホンのメリットを兼ね備えている。

パソコンを使って映像鑑賞

これはヘッドホンリスニングの利点となるが、音の聞き逃しが少ない。スピーカーで観ていて「いまなんて喋ったの?」と思うシーンも、ヘッドホンでは聞き取れる。ホラー映画で登場人物が物音に反応するシーン、自分が聴こえなかったために「いまのなんで振り返ったの?」と余計なことが気にならない。余談だがホラーとヘッドホンは相性が良すぎるので怖すぎるのはいただけない。

では通常のヘッドホンとゲーミングヘッドセット、どちらが映像鑑賞に向いているかと言えば、先の聴こえ方の違いのほか、何に重きを置いているかで変わるだろう。まず、サウンド全体の一体感は通常のヘッドホンの方が感じられる。それは臨場感にもつながり、結果として “楽しく” 鑑賞できると言える。

ゲーミングヘッドセットは音の分離が過ぎて、1シーンのなかに詰め込まれた「爆発音」「叫び声」「破裂音」などが独立して聞こえてしまうことがある。反面、聞きたい音を集中して聞く、ということが可能だ。カーチェイスのシーンで、すれ違ったクルマの音がドップラー効果で小さくなっていくことなど、細かな気づきが得られる。なおPCを介してイコライザーを利用することで低音増強などはできるが、分離の良さは変わらないため、傾向はそのままだ。

没頭して映像を観るなら通常のヘッドホン、モニター的に鑑賞するならゲーミングヘッドセット。もしくは初めて観るなら通常のヘッドホン、2回目以降はゲーミングヘッドセット。映像鑑賞が最も、それぞれの使い分けが楽しめる用途かもしれない。

普通のヘッドホンとの聞こえ方の違いが大きい

ゲーミングヘッドセットの上位モデルに搭載されることの多い、サラウンド性能も試す。映像鑑賞においては、この機能への過度な期待は禁物だ。空間が広がったような聞こえ方になるが、どこから音が鳴っているのかはむしろステレオ状態の方が分かりやすい。サラウンドっぽい感じでしばらく遊んだらもとに戻す、というパターンが多そうな気がする。

PCゲーム

まさにゲーミングヘッドセットの主戦場であり、やはりオープンワールドを探索するには定位感が重要だと感心させられる。現実世界では自分を中心にまわりの音が感知できる。ゲーミングヘッドセットはそれと同じ感覚で、自分がゲームの中に入り込んだらこうなるであろう、という聞こえ方がリアルだ。

通常のヘッドホンも、どの方向から音が聞こえるといった部分は間違いなく実感できるのだが、ゲーミングヘッドセットに比べれば多少粗さがある。音の発生源が自分の後ろを右から左に抜けていく場合、通常のヘッドホンが右、右斜め後ろ、後ろ、左斜め後ろ、左といった感じ。ゲーミングヘッドセットは右0度、右斜め後ろ10度、右斜め後ろ20度、・・・後ろ90度、左斜め後ろ100度、・・・、左180度くらい細かい。

この細かさで、音の発生源がスムーズに動けば、音が周りを這い回るようなゾワゾワした感覚になる。さらにDTS Headphone:Xなどに対応しているモデルで、かつ作り込まれたソフトであれば、サラウンドをオンにすると絶大な威力を発揮。右0度、右斜め後ろ5度、10度、といったレベルになり、自分の後ろを直線的に動いているのか、少し弧を描くような軌道で動いているのかの奥行き感の違いがうっすら見えてくる。

PCゲームでは、ゲーミングヘッドセットの優位性が大きく感じられる

筆者はシビアなタイプのゲーマーではないため、わずかな物音が聞こえても、それで敵の接近に気づくようなことはできないのだが、どの方向から聞こえたといった感覚は、定位の優れたモデルほど掴みやすい。その方向性にグンと振った音作りは、通常のヘッドホンではなかなか味わえないものだ。PCの場合はゲーミングヘッドセットに用意されたソフトから、様々なチューニングが行えるのも利点となる。

ただし、リアル志向ではなくBGMなどが鳴っている世界観、そこまでスコア重視ではないという場合などは、通常のヘッドホンの方がグルーブ感や音楽と相まって、盛り上がりなどは体感できるだろう。

また、ゲーミングヘッドセットの効果は『スプラトゥーン』などにおいても有効に働くであろうが、ノベルゲーであったり、横スクロールアクションやシューティング、一般的なRPGなどをプレイしたりする分にはゲーミングヘッドセットが向いているということもない。スマホゲームや映像鑑賞などで述べたような違いから、好みで選べる範疇だ。

まとめ

ゲーミングヘッドセットと通常のヘッドホンでは、どういった聞こえ方の違いがあるのかを確かめたが、結論としてヘッドホンのモデルごとにある音の違いとは異なる、求める方向性の違いというものが感じられた。ゲームを楽しむために必要な要素に能力値が高く割り振られている。

しかし、ゲーミングヘッドセットはゲーム専用なのかと言えば、そうではない。そうした方向性だからこそ、これまでにない音楽/映像の楽しみ方ができるヘッドホンと言える。次なるヘッドホンを求める方は、選択肢の幅をゲーミングヘッドセットまで広げてみると、新しい発見があるかもしれない。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX