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2014/09/26

なぜヨーロッパではBlu-ray Audioが好調なのか? 元洋楽ディレクターが分析する世界のハイレゾ事情

元日本コロムビアの本間孝男氏が解説
本間 孝男
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長年日本コロムビアで洋楽ディレクターを担当し、セックス・ピストルズの歴史的名盤に『勝手にしやがれ』という邦題を付けた本間孝男氏。現在はハイレゾ配信事情をはじめ、世界の音楽産業に関する記事を執筆する同氏が、今、ヨーロッパを中心に盛り上がりを見せているBlu-ray Audioの現状を分析する。

日本でもハイレゾ配信サイトが立ち上がり、誰もが自由にハイレゾ音楽をダウンロード購入できるようになった。CDを超えたスペックで過去の名盤を感動も新たに楽しむこともできる。ハイレゾ音源は「ファイル」で提供するのがトレンドということでダウンロード配信に目がいくが、CDと同一サイズの光メディアが「もうひとつのハイレゾ再生」として、ヨーロッパを中心に盛り上がりを見せている。ブルーレイ・ディスクを使った「Blu-ray Audio」だ。今回はBlu-ray Audioが今どのように広がりを見せているのか、世界に目を向けながらその可能性を探って見たい。

欧州を中心に、ハイレゾ未配信のビッグタイトルもBlu-ray Audioで発売されている。(写真はJohn Lennon『Imagine』

■世界のレコード産業の現状 - CDの衰退と音楽配信の隆盛

Blu-ray Audioの現状に触れるまえに、まずレコード産業の状況をチェックしておこう。IFPI(国際レコード産業連盟)の資料などをもとに、米国のレコード産業の推移を見てみる。1999年と2013年を比較すると、売上高は約半分(ダウンロードやストリーミングの収入含む)になった。インフレ率を除くと、実質は35%〜40%に縮小している。CDに限ってみると、米国では1999年から2010年の11年間で45%のマーケットが吹き飛んでしまった計算になる。

レコード大手の吸収合併も進み、2012年にEMIが解体され、ユニバーサルとワーナー(EMIのParlophoneレーベル)に分割され、現在はソニーを加えた3大メジャー体制になっている。

米国でCD売上が全体の半分を割り込んだのは2010年。この年、ダウンロードは30%を超える。2013年にダウンロードは売上全体の40%を超え、CD売上(30%)を逆転する。サブスクリプション(9%)やオンラインストリーミング(8.4%)など、CDなどの物理メディア以外の音楽サービスも大きく伸びている。ダウンロード配信のビジネスモデルを確立したアップルのiTunesミュージックストアは、世界最大の音楽小売商となった。2013年には米国内のデジタル売上の7割を占め、約10億ドル(1,000億円)をレコードレーベルにもたらしている。先日、U2の新アルバム「Songs of Innocence」の全曲を無料配信したことでも話題を集めた。

iTunes Storeは9月、同社の発表会に合わせて、U2のニューアルバムの全曲無料配信を行った

日本は全体の5分の1を占める世界第2位の市場だが、2013年は前年度比16.7%減と売上が激減した。CDなど物理メディアが13%減と大きく落ち込み、デジタル配信も着メロの縮小が止まらず23%減となった。今年3月のIFPIの発表では、世界の音楽売上は前年比3.9%減の約150億ドル。定額制サービスの成長や有料音楽配信の伸びが大きく、日本の落ち込みが無ければ、0.1%減とほぼ横ばいだったと報告された。

ユニバーサル・ミュージック・インターナショナル会長のマックス・ホール氏は、「悪いニュースの大部分は日本の音楽産業だ」と述べ、フィジカル(CD)中心のビジネスによる音楽保護主義とデジタル音楽に対する取り組みのまずさを、日本の急激な業績悪化の原因に挙げている。

■欧州で盛り上がるBlu-ray Audio。身近なパッケージメディアにハイレゾを収録

Blu-ray Audioは、BDの規格(BD-MV:読み出し専用BD-ROMの記録フォーマット)を全く変えず、最小限の画を入れ、25GBの大容量(1層)をほとんど音声の収録に使ったメディアである。BDそのものは非圧縮のリニアPCM 192kHz/24bitまでサポートしているものの、映画では映像に容量の多くを使わなければならないため、音声には圧縮(ロスレスを含む)方式を採用することがほとんどだ。

しかし音声が中心ならば、史上最高スペックを実現したオーディオメディアとなる。しかも、BDプレーヤーやBDレコーダーでそのまま再生できる、身近なパッケージメディアである。BDプレーヤーの価格も急激に下がり、ソニーのPS3やPS4などのゲームコンソールを加えると、普及率は2014年までに欧州で35%、米国では50%を超えるとされている(Internationai Video Federation(IVF)のデータによる)。ちなみに日本での普及率は60%近いといわれている。

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