【動画あり】トップウイング「海苔波形補正機」に感動!青春時代の音源に隠された“音のヒダ”に出会う
“海苔波形音源”とは、ダイナミックレンジが狭すぎて、その音響特性を波形にすると、四角形に近い形を描く音源たちである。
ハイファイシステムで聴くと複雑な思いにさせられる、そんな音源たちに、再生側でフィルターをかけ、元々そうであったであろう波形にしてあげる補正機がトップウイングから登場し、オーディオ愛好家から注目を浴びている。
この補正機、2026年1月29日に発売され、およそ10日間で第2ロット分まで完売。オーディオ評論家でありながら作曲家で録音家でもある生形三郎氏が自宅でハンドリングしてみたレポートと動画をお届けしよう
とにかく目立つために生まれ、作られていった「海苔音源」
何事にもジレンマはつきものだ。もちろんオーディオも例外ではない。
そのひとつが、オーディオへとのめり込むうちに、次第に「音の良いソース」を求め出すということではないだろうか。
その結果として、演奏や音楽が自分の好みであっても、録音の良くないソースには興味を失ってしまう。そんな経験は誰しも心当たりがあるのではないだろうか。私はたくさんある。
具体的に、オーディオ再生に置ける良い音の定義はいくつかあるが、その要素のひとつとしてダイナミックレンジが挙げられる。ダイナミックレンジは、小さい音から大きな音までのレンジの広さを指す言葉である。音源の中には、意図的にその幅を、極めて小さく狭めたものが存在する。
それは、波形の形状から見て、「海苔波形」と表現される。通常、音楽波形は音量の大きな部分と小さな部分が存在しギザギザの形をしているが、それを極限まで狭めた結果、水平方向に伸びる長方形のような形状になってしまう。それがまるで四角く整えられた海苔のように見えることから、海苔波形と呼ばれている。
ダイナミックレンジは極端に広過ぎると再生が困難になるため、さまざまな再生環境に対応できるようにある程度整えられることが一般的である。また、レコード再生のように、物理的にダイナミックレンジの確保が難しい再生メディアでも必然的に行われてきた。
思春期の頃に出会った音楽に抱いてしまう複雑な気持ち
しかしながら、デジタル全盛の1990年代頃から始まった音圧競争によって、極端に音圧を高めてダイナミックレンジを狭めるという潮流が生まれてしまった。これは、ほかの音源と連続して再生された際に、他よりも目立つことでリスナーの心象に訴えるための戦略である。
制作環境の変化によって、聴感的な歪みを抑えて簡単に音圧を詰め込むことが可能となったことも要因のひとつで、2000年代に入ると音楽制作環境が完全にノンリニア化するとともに、シンセやサンプラー、エフェクターなどのツールがソフトウェア化し、Waves社のLシリーズを筆頭とするマキシマイザーなるエフェクターが数多く登場したことも、それを一気に加速させた。
これまでアナログ領域でマスタリングエンジニアが丹念に作業していた音圧調整工程に、マキシマイザーエフェクトのスライダーを上下させるだけで済ませられる(済んだように思える)簡便さが、アマチュアからプロフェッショナルまであらゆるレベルの制作環境で導入された結果、数え切れないほどの海苔波形音源が誕生することになったのだ。
それ以降2010年代まで熾烈な音圧競争は続くが、音源の音量基準が、単純な電圧値を示すdBFS(デシベル・フルスケール)から、聴覚的な音量値であるLUFS(ラウドネス・フルスケール)、つまりラウドネスへと改められ、音楽配信や動画配信サービスにおいてラウドネス平均化処理(基準を超えたラウドネス値を持つ音源は強制的に音量が下げられる)が標準化されることによって、その競争は一旦幕を閉じることになる。
しかしながら、現在でもダイナミックレンジが著しく狭められている音源は数多く存在する。マスマーケティングを志向する音源であればあるほど、どのような再生環境でもインパクトを持ってリスナーにその音楽を届けんとするために、繊細な表現力の幅よりも、とにかく目立つ、とにかく耳につく、ということを最優先に音質設計がなされるという、当然の結果だと言える。
実際、人間は音量がある程度大きいほど良い音に聴こえるという聴覚的な特性を持っている。
そういう意味で、90年代に思春期を迎えた筆者のような80年代生まれの世代、あるいはその前後の世代は、オーディオにのめり込めばのめり込むほど、かつて往時に自身が傾聴した音楽、つまり思春期の記憶とともに自らの音楽観の根幹を形成した音楽に対して、複雑な気持ちを抱かざるを得ない状況にもなるのではないだろうか。
また、現代に作られた現在進行形の音楽を広く聴く人々にとっても、演奏や音楽が素晴らしいのに、音源としての最終的なダイナミックレンジや音質の処理が残念だと感じる事態は、数多く直面せざるを得ないと言えるだろう。
さらに、アナログ・ネイティブな世代の方々にとっても、2000年前後にリリースされた既発タイトルのリマスタリング音源を聴いて、同様のことを実感される方も多いかもしれない。
音源の位相のみをシフトして波形のピークを復元
もちろん、必ずしもダイナミックレンジの狭さが完全に悪というわけではなく、音響性能的に見てチープな再生環境では、それが有利に左右することも十分にある。
実際筆者も体験するが、パソコンやスマートフォンの内蔵スピーカーや、外部騒音が介在する車の純正オーディオ環境などで再生すると、つまり、制約の多い環境で再生すると、海苔波形音源がある程度適切に機能して楽しめるという体験を度々している(ジャンル的には、ほぼポップスやロックか、またはハウスなどのエレクトロニック・ミュージックだが)。
しかし、だからこそ、それをいざハイファイなオーディオシステムで聴くと、大きな違和感を覚えるのである。これが冒頭で言う「ジレンマ」である。
前置きは長くなったが、そんな音源にオーディオコンポーネントの側からメスを入れるという、ある種究極のオーディオ装置が登場した。それがトップウイングの「Sonic Corrector」なのである。
DAC、フォノイコライザーなどのソース機器の出力をSonic Correctorに入力し、その出力をプリアンプのライン入力に接続して使う
詳細はカタログに譲るが、Sonic Correctorは、ラジオや無線信号の変調・復調に用いられるオールパスフィルタを用いたもので、ダイナミックレンジが狭められてしまった音源の位相のみをシフトすることによって、波形のピークを復元し、海苔波形の影響を解消させる装置である。よって、ダイナミクスや周波数帯域のエネルギー増減に介入するものではない、というところがポイントである。
実に自然で繊細、大きく予想を裏切られた
実際にその効果を聴いてみると、いい意味で大きく予想を裏切られた。予想では、もう少しエフェクティブな効果が得られるかと勝手にイメージしていたのだが、効果の現れ方は実に自然で繊細なものである。
ストリーミング・サービスのトップチャートに表示されたJ-POP音源を聴いてみると、これまではスピーカー前方に、全てが一緒くたになって張り付くように定在していた音たちが、自然にほぐれて空間に再配置される。まるで頭を押さえつけられていた音楽が、伸び伸びと歌うのである。
特に実感するのは、深いローエンドをもった音源での如実な効果である。昨今は、洋楽の音作りで見られる超低域を含むベースやキックドラムを含んだ邦楽ソースも多いが、そのような低域はエネルギーが大きいため、例えばキックが鳴る度にダイナミクスの頭が押さえるような窮屈さを感じる。それがSonic Correctorを通すと、天井がフッと高く抜けたような開放感が味わえるのである。これは快感である。
また、試しにそのようなローエンドが導入される前の90年代の邦楽ソースを聴いてみても、それまではこういう音なのだと割り切って聴いていた平面的な音源から、演者の歌声や演奏の個性などを含む細やかな音のヒダがいくつもめくれ上がり、音楽的に新たな発見をたくさん呼び起こしてくれた。
加えて、2000年前後の洋楽や最近のロック、ファンク、ハウスミュージックなどを次々聴いてみても、やはりまるで天井が高くなったかのような風通しのよい表現が実に快かった。

新世代のメーカートップだからこそ発想できた製品だ
これらのナチュラルかつ繊細な効果は、近年立て続けにリリースされているトップウィング製オーディオ・アクセサリーたちの効用とも通底する傾向である。つまり、音楽やコンポーネントを尊重した、ナチュラルな音質向上効果が現れるものなのだ。
Sonic Correctorの開発においては、最終的なフィルター係数を入念に調整して最終形まで辿り着いたとのこと。それがもたらす自然な効用は、何よりも、開発者自身が海苔波形音源を復活させて心から楽しみたいという強い欲求があるからこその、完成度の高さだと推察する。
Sonic Correctorは、探究心溢れるオーディオファイルであり、録音エンジニアとしての知見をも併せ持つ、新世代のメーカートップだからこそ発想できたプロダクトだと推察する。
同時に、ハイファイ・オーディオの可能性や魅力を、これまでにない形で高め、広めてくれる極めて画期的な製品だと筆者は考えるが、それは過言だろうか。
(提供:トップウイング)
※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 200号』からの転載です。



























