公開日 2018/12/14 08:00

MEZE AUDIOの最高級ヘッドホン「EMPYREAN」を聴く。世界初ドライバーが誘う “最高天” サウンド

【特別企画】リナーロ社との出会いによって完成
山本敦
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まるでホールにいながら聴いているような臨場感

EMPYREANのサウンドを、MacとAudirvana Plusをプレーヤーとして、ソニーのヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」との組み合わせで聴いた。

上原ひろみのピアノトリオによるアルバム「SPARK」から『Wonderland』を聴く。ピアノのクリアな音色に一点の曇りもなく、高音も素直に伸びる。アグレッシブな演奏にも暴れがなく、音の幹がとても強靱であることがわかる。微小な音にピタリとフォーカスを合わせてくる解像度の高さも秀逸。メロディの余韻はミントのように爽やかな後味を残して静寂の中に溶けていく。

EDMもEMPYREANのテイストによくハマる。電気グルーヴの楽曲『MAN HUMAN』を聴くと、肉厚で弾力にも富む低音が耳から入って、全身に満たされていくような感覚がとても心地よく、自然と体を動かしてしまった。リズムの切れ味がよく、音の軸がぶれない。無駄な余韻を残さない潔さが漂わせる緊張感が、さらに音楽の深い所まで気持ちを引き込んでくれる。

女性ボーカルの生々しさも格別だ。東京スカパラダイスオーケストラ「Paradise Has NO BORDER」から『嘘をつく唇』では、ボーカリストの片平里菜の口元を、アグレッシブなバンドの演奏が鳴り響く中で繊細な表情までしっかりと描ききる。音像も前にぐいぐいと出てくる。金管楽器の乾いた音がふんわりとボーカルを包み込む。リズムセクションの足取りも軽やかだ。広々とした見晴らしのホールの情景が目の前に現れてくる。

2種類のイヤーパッドを交換しながら聴くと、それぞれのキャラクターの違いが鮮明に浮き彫りになってきて、EMPYREANによる音楽再生により深くのめり込んでしまう。メゼ氏は本機の発売直前まで、どちらのイヤーパッドを採用するか迷っていると語っていたが、最終的にふたつとも同梱し、聴き比べられるようにしたことは英断だと思う。

アルカンターラ(左)/本革(右)の2種類のイヤーパッドが付属。メッシュの部分は吸磁性質を持つ金属製

音の柔らかさではアルカンターラのベロア生地のイヤーパッドが一枚上手。解像感がつぶれ、もっさりとしてしまうことが一切なく、むしろ音の鮮鋭度が輝きを増してくる。余計な付帯音もなく、リズムセクションの小さな音の粒までシャープにフォーカスが合う。エレキギターのカッティングがジャキジャキっと乾いたリズムを小気味良く刻む。ジャズピアノの楽曲では、演奏者が鍵盤に触れる指先の動きをスローモーションで追いかけているように鮮明なイメージが飛び込んできた。

レザー製のイヤーパッドによるサウンドは重心が低く、余韻のふくよかさが魅力的だ。上原ひろみのピアノトリオはエレキベースのうねりに立体感が加わり、クルーヴの熱量が増してきた。EDMにロックやポップスなど、アグレッシブな楽曲との相性は言うまでもなく良いのだが、クラシックのオーケストラもまるでホールにいながら聴いているような臨場感あふれる演奏が楽しめた。



繊細さと力強さを兼ね備えた懐の深いEMPYREANのサウンドは、フェンダーのストラトキャスターのイメージと重なり合って感じられるところがいくつもあった。

クールな表情の奥底に熱い情熱がみなぎるようなサウンドを聴かせてくれたEMPYREANは、筆者が2018年に出会った中で最も印象に残ったモデルの一つだ。いま絶対に聴いておくべきヘッドホンだと思う。

【試聴機設置店舗】
・e☆イヤホン 秋葉原店、大阪日本橋店 
・フジヤエービック 中野店
 ※記事公開日時点
 ※「ポタフェス2018冬」会場でも本機を聴くことができます

(協力:テックウインド)

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