公開日 2017/05/31 10:00

ソニー史上最強のAVスマホ、「Xperia XZ Premium」の4K/HDR映像・ハイレゾ再生を試す

<山本敦のAV進化論 第133回>


4K/HDR映像からチェックする

まず最初に4K/HDRの動画再生をチェックした。NTTドコモの新製品発表会で明らかになったひかりTVとdTVのスマホ向けHDR動画配信は、本稿執筆時点でまだスタートしていなかったので、ソニーが製作したデモ映像コンテンツと、Amazonプライム・ビデオで配信中のHDR動画で確認している。比較用として4K/SDR対応のXperia Z5 Premiumも用意した。

Xperia XZ Premium(写真下側)で4K/HDR映像を表示。4K/SDR対応のXperia Z5 Premium(写真上側)の映像と比べながら視聴した

視聴を開始する前に端末の「画面設定」の項目をチェックする。自動調節を含むバックライトの明るさ設定はXperia Z5 Premiumから変わっていないが、「画質」の項目がいくつか入れ替わっているようだ。「色域とコントラスト」を開くと中に3つのモード設定が並んでいる。「プロフェッショナル」はsRGBの色域を再現するモードで、映像本来の色彩を忠実に再現できるとされている。デフォルトは「スタンダード」になっていて、こちらがソニー独自の「トリルミナスディスプレイ for mobile」の画づくりに最適化したモードになる。

今回の視聴はスタンダードモードで見ている。最後の「ダイナミック」は、スタンダードモードよりも色合いやコントラストを強調したビビッドな画づくりだ。各モードの差異は設定のプレビュー画面で確認できる。

XZ Premiumの「色域とコントラスト」は3段階の設定が切り替えられる。チューニングの違いはトップの画像の変化で概略をつかんでもらえれば幸いだ

画面設定に戻ると「動画再生時の高画質処理」というメニューが新設されている。従来は「画質」>「高画質モード」の中で「ダイナミックモード」と排他的に選択していた超解像技術「X-Reality for mobile」のオン・オフ設定が切り出されたようだ。オンにするとプレビュー動画に表示される被写体の輪郭や表面のテクスチャーにいっそうのきめ細かさが増すのがよくわかる。

「動画再生時の高画質処理」は、すなわち「X-Reality for mobile」の効果をオン・オフできるというもの。Xperia XZまでは「高画質モード」の設定メニューの中にオンとオフと、オフ/ダイナミックモードの色設定が混在していた。Xperia XZ Premiumではそれぞれの設定を切り分けて画質設定の応用度が高まっている

ソニーにメニューを切り分けた理由を訊ねたところ、これまでは色設定とX-Realityのオン・オフ設定が「動画再生(全般)」と「アルバム」アプリのみに効果をもたらすものだったが、Xperia XZ Premiumでは「色域とコントラスト」の項目から設定の効果がより多くのアプリでも反映されるように設計し直されている。

Xperia XZ Premiumの「画面設定」。「色域とコントラスト」「動画再生時の高画質処理」がこの階層に加わっている

X-Realityのオン・オフ設定は従来通り「動画再生(全般)」と「アルバム」アプリに効果をもたらすものになる。今回は視聴をはじめる前にX-Realityの設定をオンにした。ディスプレイの輝度は自動調節をオフにして明るさを最大にして見比べている。

ホワイトバランスについてはメニューをいじらずに初期値のままで視聴した。Xperia Z5 Premiumもホワイトバランス設定を初期値にして、ふたつの画面を並べながら見比べてみると、色合いがかなり違っていることがわかった。Xperia XZ Premiumはホワイトがやや黄色側に寄っているのに対して、Xperia Z5 Premiumのバランスはやや青色が強めでクールな印象を受ける。

ホワイトバランスの設定画面を表示。XZ Premium(左側)とZ5 Premium(右側)の初期設定のホワイトバランスがけっこう違うのがわかるだろうか

最初に視聴したソニーのデモコンテンツは、南欧の街に色鮮やかな傘のパレードが出現する色鮮やかな映像だ。パネル本来の傾向はデモ映像を視聴した際の色合いにも少なからぬ影響を及ぼしたが、何より明部の鮮やかさとディティールの立体感、暗部快調のきめ細かな再現力は、HDR対応であるXperia XZ Premiumに明快なアドバンテージがあった。

ソニーのオリジナルのデモコンテンツから。左側が4K/HDR対応のXperia XZ Premiumの映像になる。傘や背景の家の壁など鮮やかな色合いが失われていない。黄色い家の壁の色はふたつの映像を見比べると明らかに異なっている

色合いについても、恐らく現場を目で見た風景に近いであろうと主会われる、自然な濃淡と陰影を再現。陽の光に照らされた家の壁に経年変化によって付着したヨゴレやシミも浮き彫りになっている。同様の4K解像度でありながら、Xperia Z5 Premiumの画面に映し出される映像とは別物の説得力だ。

続いてAmazonプライム・ビデオのコンテンツも視聴してみる。筆者は今年のMWC会場で発表されたいくつかのHDRスマホ・タブレットを取材したが、メーカー担当者から「もうAmazonでスマホ向けHDRコンテンツが配信されており画質チェックも可能」と伝え聞いていた。Xperia XZ Premiumを取材するまではどこを探してもそれを見つけられずにいたのだが、その答えはシンプルで、そもそもHDR対応のスマホでサービスにアクセスしないとコンテンツが表示されないのだ。

Xperia XZ PremiumでAmazonプライム・ビデオを起動。トップの方に「HDR TV番組」が表示される

ホーム画面にアクセスするとメニューの上段に「HDR TV」の作品が並んでいる。本稿取材時点ではAmazonオリジナルの『グランド・ツアー』や『弁護士ビリー・マクブライド』『ボッシュ』など海外ドラマを中心に8つのタイトルがHDR作品として見られた。タイトルの中から犯罪サスペンスドラマの『BOSCH/ボッシュ シーズン2』をチェックした。

Amazonプライム・ビデオのコンテンツ「ボッシュ」を視聴。左側がXperia XZ Premium、右側がXperia Z5 Premiumという比較イメージ。左の4K/HDR映像は明暗のバランスがきちんとコントロールできていて、役者の肌の陰影感、ヒゲのあたりの細かな解像感が浮き彫りになっている

Amazonプライム・ビデオの4Kコンテンツを、4Kクオリティで楽しむためには下りスピードが15Mbps以上のインターネット環境が推奨されている。アプリの「設定」からストリーミングの画質を「最高画質」、またはWi-Fi使用時に最高品質を使用するようあらかじめセットしておく。作品をダウンロードして見ることもできるので、こちらも最高画質に設定した。

Xperia XZ Premiumを自宅のWi-Fiにつないで速度を計測。下り側が50Mbps前後出ていたので、Amazonプライム・ビデオでもスマホ向け4K/HDRコンテンツがスムーズに視聴できた

Amazonプライム・ビデオの設定画面。動画ストリーミングとダウンロードの画質、さらにはWi-Fi接続時にのみストリーミングやダウンロードを許可するかなど細かな設定ができる

ソニーのデモコンテンツ同様、自然でみずみずしい映像が味わえる。ディテールの精彩感が明らかに増して、被写体の奥行きが深みを増す。役者の肌が活き活きと艶めき、髪の毛は一本ごとに輪郭が精細に描かれるようだ。Xperia Z5 Premiumで白トビしていた、太陽光があたる車のボンネットも金属の質感まできめこまかく再現される。

同じ作品のワンシーン。左のXZ Premiumの画面は山肌の色合いがキープされていて、空に浮かぶ雲の姿もはっきりとわかる

こちらも同じ作品から、背景の自動車のボンネットにあたる光が飽和せず、砂利のあたりも白トビせずにテクスチャーを正確に伝えてくる

今までスマホで動画を見る時にはいつも感じていた「ディスプレイが狭い」感覚がどこかに吹き飛んでしまったように、5.5インチの画面に映し出される映像に自然とのめり込むことができた。

第1話・45分のエピソードを見終わった際でチェックしてみると、バッテリーゲージの容量は18%減っていた。同様に46分前後のHD/SDR画質のタイトルを見たあとでもバッテリーの減り具合をチェックしたが、こちらは17%とほぼ変わらない。HDR再生の負荷はあまり考えなくてもよさそうだ。本体が過度に熱を持つこともなく、スマホを手で持ちながら問題なく見られた。

4K/HDRコンテンツのダウンロードは、最高画質に設定すると第1話のデータ容量が約6.84GBになった。自宅でダウンロードしてみても20分前後の時間がかかった。SDカードにコンテンツを保存するのであれば容量は大きめであることに越したことはない。

同じ作品のダウンロードを指定。オプションからダウンロード画質の設定変更が行えるが、Xperia XZ Premiumは各画質でのダウンロードデータの容量が明らかに大きい。Xperia XZでは落としてくるファイルサイズも小さくなっている

Xperia Z5 Premiumで同じ作品『ボッシュ』を再生することはできたのだが、どうやら4Kのストリーミングを受けることができないようだ。動画が4K再生できている場合は、画面の下に「4K Ultra HD」という表示が出るのだが、同じ環境でストリーミング、あるいはダウンロードしてから再生してもXperia Z5 Premiumではこれが表示されない。

4Kコンテンツの再生時に画面をタップするとシークバーの下に4K Ultra HDのコンテンツであることが表示される

恐らくアマゾンは“4Kスマホ”、あるいは“HDRスマホ”として登録されているデバイスを判別し、ディスプレイに合わせて最適な映像を送り出しているのだろう。2015年発売のXperia Z5 Premiumは4Kスマホとして、アマゾンの最新サービスに登録されていないのかもしれない。

次ページ続いてサウンド再生能力を確認

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX