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公開日 2008/12/16 14:57

藤岡誠がトライオードの新真空管アンプ「 TRV-845SE」を聴く

新製品先取りレポート
藤岡 誠
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TRV-845SEのプロトタイプ。発売時にはデザインが変更になる可能性があります
今年のハイエンドショウトウキョウ2008で出品されたトライオードのプリメインアンプ「TRV-845SE」。発売は2009年2月が予定されているニューモデルだが、ひと足早く藤岡誠氏にプロトタイプを試聴していただくことができた。以下、藤岡氏による新製品先取りレポートをお送りする。


型番の数字「845」は採用した出力管に由来する。正式球名は「UV-845」。記憶は薄らいでいるが、RCAが開発。日本ではかつて東芝が生産していた。元来は小型送信機の出力段などに使われた送信管。古くは大型PA(パブリック・アドレス=拡声)アンプに使用されたこともある。211系(UV-211)と同様に、真空管方式の出力管としては大型な3極出力管である。本機TRV-845SEはこの845を片ch単管(シングル)で純A級動作のステレオ型とした製品。ドライブ管は3極管の2A3だがバルブ形状は300Bにそっくり。初段は双3極管の6SN7。すべて3極管というわけだ。出力量は845の採用もあって20W/chを発生。有名なオーディオ用3極出力管の300B、2A3単管の出力量と比較すれば2.5倍から3倍近く強力だ。出力インピーダンスは6Ω/8Ω/16Ωに対応している。

より正確に本機の構成を言えば、初段に通常より若干の利得を持たせた上で可変抵抗器(音量調整ボリューム)と入力切り換え(リレー切り換え方式)を装備した、入力感度900mVの“ステレオ・パワーアンプ”と言うことができる。つまり、本機にはプリアンプ段はない。したがって、本機は“プリメインアンプ”ではなく、あえて言えば「インテグレーテッド型」あるいは“コントロール・パワーアンプ”と呼ぶのが正しいだろう。このため、本機の入力切り換えにはプリアンプ入力ポジションとその専用入力端子がある。もちろん、この端子はプリアンプ出力と整合させるために抵抗器で入力電圧を下げていることはいうまでもない。ラインレベルの入力端子はRCA×3、XLR×1。XLR端子は3番HOTだが実際はバランス伝送されるわけではなく、内部でアンバランス接続となる。ここでも入力電圧を抑えている。

電源スイッチをONすると出力管の845の直熱ヒーターがあたかも白熱電球のように明るく点灯する。ヒーターは10V・3.25Aで点火されるがこれは211と同じ。いわば“大食漢”である。プレートに印加する直流電圧も900V以上。もちろん、ヒーターは全球直流点火。その上で、845と2A3にはハムバランサーがあり、一層に交流成分を抑え込んでいる。高圧整流回路にはチョークトランスが使われてレギュレーションを確保。しかも、出力段の845とドライブ/初段に独立給電。845のバイアスは高度に安定化された固定バイアス方式。845の経年変化あるいは交換時でも正確に内蔵されている専用メーターでチェック・調整ができる。リモコンにも対応。

電源部の凄まじい内容や高品質な部品の数々。音は広帯域で分解能、透明度共に良好。残留雑音も高度に抑えられている。来春になればより詳細な音質・音調を紹介することになろうが、この内容、クオリティ、さらにはデザイン・仕上げで予定価格40万円~50万円は果たして可能なのだろうか? 上限の50万円だとしても真空管アンプファンにとっては抜群の魅力度だと思う。

(藤岡 誠)

執筆者プロフィール
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、40年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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