公開日 2026/09/17 06:30

【インタビュー】新たな魅力をたずさえたCambridge Audio。エミライの総合力で日本での再出発を推進する

VGP2026SUMMER:エミライ 島幸太郎氏
編集部:徳田ゆかり
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VGP2026SUMMER 受賞インタビュー エミライ

アワードVGP2026 SUMMERのピュアオーディオ部会で、Cambridge Audioのネットワーク機能搭載プリメインアンプ「EVO 150 SE」が審査員特別賞を獲得した。

日本国内での輸入販売が終了となってから1年あまりを経て、本年6月よりCambridge Audioの日本販売を担うこととなったのは、ネットワーク・デジタルオーディオのブランド展開を意欲的に推進するエミライ。

オーソドックスなオーディオコンポーネントの展開で日本国内でもその名を知られてきたCambridge Audioについて、同ブランドの今とこれからの日本展開をエミライの島幸太郎氏が語る。

株式会社エミライ 取締役 島幸太郎氏

高水準のアプリとともに、新しい価値を届けるCambridge Audio 

―― VGPアワードにおける2年ぶりの受賞インタビューとなります。前回は映像音響部会でのMAGNETARのユニバーサルプレーヤー「UDP900」のホームシアター大賞受賞でしたが、今回はピュアオーディオ部会での審査員特別賞の受賞となりました。

受賞モデルはCambridge Audioのネットワーク機能搭載プリメインアンプ「EVO 150 SE」、御社が今年6月から新たに取り扱いを開始されてのジャストタイミングとなりましたね。

Cambridge Audioのネットワーク機能搭載プリメインアンプ「EVO 150 SE」

 ありがとうございます。映像音響部会、ピュアオーディオ部会と、異なるカテゴリーの中で大きな賞を頂戴することができ、非常に嬉しく思っております。

Cambridge Audioについてはおっしゃるとおり、今年の6月から弊社での取り扱いがスタートしましたが、契約までに1年以上の時間がかかりましたので、そういう意味でもこのたびの受賞は非常に感慨深い思いですね。

―― 御社がCambridge Audioのお取り扱いをすることになった経緯をお聞かせいただけますか。

島 Cambridge Audioを擁するAudio Partnership社さんから、弊社にお声がけいただいたのが始まりでした。

国内展開についてはご存知のとおりかつてナスペックさんが手がけられ、そして2017年からはプレシードジャパンさんが引き継がれましたが、2024年に業務を終了されて以後、日本における輸入代理業務がストップされた状態でした。

そこで日本市場をあらためてきちんと構築したいというタイミングだったのだと思います。

先方では、ワイヤレスオーディオから伝統的なCDプレーヤー、Hi-Fi、さらにはハイエンドまで、一社で幅広い製品を扱い販売からサポートまでできる会社を探していた。そんな中で、エミライに強みを感じていただいたということですね。

―― お声がけがあった際の印象はいかがでしたか。

 私自身もオーディオファンとして30年ほどになりますから、学生の頃からCambridge Audioは知っています。CDプレーヤーやアンプ、USB DACを展開している、オーディオ雑誌を開けば名前が出てくる海外製オーディオの定番ブランド、そういうイメージを抱いていましたね。

先方からぜひ一度会ってほしいと言っていただき、香港のオーディオショーでお会いすることにしました。そこで見たのが「EVO 150 SE」です。

会場に大きなタッチディスプレイが用意されていて、そこにコントローラーを同期させて来場者がアプリを自由に操作できるようになっていました。「StreamMagic」というアプリなのですが、その出来が非常によくて驚きました。

ストリーマー製品にとって、ユーザーインターフェースと動作の安定性は絶対に必要だと私は考えています。

いくら音が良くても、アプリが頻繁に落ちるとか、 “儀式”のようなややこしい動作をしないと音が出ないというのでは商品として成立しません。

ここ数年で非常によくできていると思ったのは、私どもで取り扱っているWiiMブランドのアプリですが、「StreamMagic」はそれに迫る高水準だと実感しました。

UIの設計、デザイン、サービスとの連携まで含め、トータルでのユーザー体験の高さに一気に魅力を感じ、弊社での取り扱いを検討することにしたのです。

契約の交渉は昨年から本格的に行なっていきました。日本独自のオーディオの商流や市場構造を先方に理解していただき、契約条件も含めていろいろな調整をして、ようやく今年の6月に契約を締結できたということです。

音楽に対して“アクティブ”なお客様へ届ける、新たな価値「MADE BY MUSIC」

―― Cambridge Audioというと、おっしゃるように英国の非常にオーソドックスなHi-Fiブランドという印象がありましたが、今回の受賞モデルも含め、ワイヤレスやネットワーク製品などにも領域を広げているのですね。

 Cambridge Audioのこれまでを振り返りますと、創業メンバーが経営した後、半導体関連企業が経営権を持ち、その後現在のCEOであるジェームス・ジョンソン・フリント氏らが会社を買収して再出発しました。現在はフリント氏1人がオーナーとして経営しています。

そういった中で、オーソドックスなオーディオ製品を展開しながらも、世界初のトロイダルコアトランスを採用したアンプをはじめ、DACというカテゴリーを広く定着させるきっかけのひとつとなった「DacMagic」など、エポックメイキングな製品も生み出してきたのです。

従来のCambridge Audioの製品は、際立った個性を主張するというより、いい意味で非常にスタンダードなデザイン、安心感のあるオーディオ製品という印象でしたが、昨今では生活空間との調和を意識したデザインになっています。ここ3、4年でブランドのあり方そのものを大きく変えてきたのですね。

ロゴもウェブサイトも製品デザインも一新させましたし、ミュージック・ファースト(音楽ありき)ということを意味する「MADE BY MUSIC」という新スローガンを掲げています。

音楽が主役で音楽に対してオーディオ製品はそこに寄り添うものであるということ、つまりミュージック・ファーストでありたいという価値観が根底にあるのです。

彼らは、「いま音楽に対して“アクティブ”なお客様」に真剣に向き合っています。

いい音を便利に体験するためにオーディオメーカーとしてするべきことは何か、そういう方向性でオーディオをつくっているのです。

昔から持っているノウハウや経験も最大限活かしながら、一方で製品の見せ方やインターフェースといった、音質以外のユーザー体験に対しても本気で取り組んでいると感じます。

  Cambridge Audioの製品群(2026年6月開催 OTOTEN2026での出展より)

音づくりとして重視しているのは、長時間聴いていられることなのです。

フラット、癖がない、などと音質を表現することではなく、長くリラックスして音楽を聴いていられる、という視点。

音楽を聴いて興奮することはあっても、聴き疲れはしない。ずっと鳴らしていて嫌にならない音ということです。

ここにも「MADE BY MUSIC」の考え方があらわれていると思いますね。今回受賞した「EVO 150 SE」も、まさにその流れから生まれた製品です。

以前に開催されたディストリビューター向けのイベントで、Cambridge Audioのマーケティングに関わるクリエイティブをすべて担当している新しいマネージャーにお会いしました。

その方は30代くらいのイギリス人女性で、もともと音楽レーベルに関わっていたという異業種の出身です。

新しい広告素材のデザインやトーン&マナーをどんどん取り入れていて、そのイベントでも代理店側がどういう考えであるか、どう感じるかなどといった意見を誠実に吸収してアイデアに反映しようとしていました。

ブランドの新しい展開の中での重要なキーパーソンだと見ていますが、今のCambridge Audioではそういった方が活躍しているということです。

音質へのこだわりはそのまま、楽しむためのハードルを下げた「EVO 150 SE」

―― あらためて、受賞モデルである「EVO 150 SE」の魅力をご紹介ください。

 「EVO 150 SE」は「MADE BY MUSIC」の思想に沿う誰でも使いやすいシステムです。ネットワーク再生はもちろん、Bluetoothに対応、HDMI ARCでテレビも、フォノイコライザーを内蔵してレコードプレーヤーも接続できます。

幅は約31cmとコンパクトで、大きなディスプレイを備え、これ1台とスピーカーがあればシステムが完成する、現代の生活空間に馴染む非常によく考えられた製品だと思います。

Cambridge Audioならではの音質へのこだわりはそのまま、音楽を楽しむハードルをぐっと下げた。そこが非常に重要なポイントです。

前述したとおり、「StreamMagic」というアプリで操作します。Cambridge Audioは、CPUボードやネットワークボードといったハードウェアの設計も含めて、アプリケーションをすべて自社で制作できるのです。

外部に依存することなく、5年先、10年先でも盤石で安定した品質の製品を提供できるわけですね。これからネットワークで音楽を聴く時代が来ると見越し、10年ほど前にフリント氏が判断をしたそうです。

トロイダルトランスの採用や特許所有のトゥイーター技術、ネットワーク再生アプリまで自社で開発できるCambridge Audio(2026年6月開催 OTOTEN2026での出展より)

「EVO 150 SE」のターゲットは、「いま音楽を聴いている人」です。

単純に若い方というのではなく、音楽を聴く手段がイヤホンかスピーカーかというのでもなく、普段から音楽を聴いている時間が長い人ということ。

生活の中でリラックスしながらいつも音楽に触れている、ということを強く意識していると思います。

集中して聴きたければその期待にも応えてくれるので、聴き方を自由に切り替えながら音楽を楽しめるということですね。

―― Cambridge Audioは、これまでのオーソドックスなハイファイオーディオブランドのイメージに加えて、現代の音楽ファンに新たな価値を提供してくれそうですね。あらためて、御社の中ではどんな存在になるでしょうか。

 エミライが展開するネットワークオーディオのブランドには、入り口にあたるところにWiiMがあり、かなり離れた価格帯のところにAurenderがあります。

WiiMはアプリにも相応の開発リソースを投入し、多くのお客様に新しいオーディオのリッチなユーザー体験をリーズナブルに提供しようとしていますが、高級オーディオの領域を目指しているのではありません。一方でAurenderは、ネットワークに特化したハイエンドオーディオのブランドです。

WiiMをきっかけにオーディオに興味を持ったお客様に、さらに良い音で聴く楽しみとしてAurenderをご提案するには、いくつかの“ミッシングリンク”となる体験価値の補間が必要でした。

そういう意味でも、Cambridge Audioはいい存在です。オーディオメーカーとしての音作りの確かなノウハウをもち、WiiMでのソフトウェアのリッチなユーザー体験をそこなわずに、ステップアップを提供することができると思っています。

いまのCambridge Audioが持つ、新たな魅力を日本に伝えるために

―― 日本では昔ながらのオーソドックスなCambridge Audioのイメージがオーディオファンや販売店にも根強いと思われますが、これからどのように展開していかれますか。

 おっしゃる通りご販売店様にとっては従来のCambridge Audioのイメージがあります。

外観もコンセプトもまったく新しい製品を突然ご紹介するよりも、オーディオメーカーとしての歴史や音作りは継承していて、そのうえで現代の音楽の聴き方に合わせてたたずまいやユーザー体験を刷新している、ということをまず丁寧にお伝えする必要があると思っています。

オーディオ専門店様には、Cambridge Audioのオーソドックスなフルサイズコンポーネントもきちんとご紹介してご理解をいただいたうえで、EVOのような新しい形もご覧いただきたいと思います。20万円から40万円くらいの製品を中心にご提案していきたいですね。

量販店様は、法人様によってオーディオ展開の考え方が異なりますから、すでに30製品ほどもあるラインナップをすべて展開していただくというより、エントリーに寄った価格帯の製品や、ライフスタイルとの親和性が高いオールインワンの製品を中心にご提案したいと思っています。

そして地域のオーディオイベントや大型イベントにも積極的に参加して、エンドユーザーのお客様が実機を見て、触って、音を聴いていただく機会を増やしていきたいですね。

海外メーカーとの良好なパートナーシップで、オーディオの楽しみを支えるエミライ

―― エミライは今年創業15周年を迎えました。Cambridge Audioという新たなブランドを迎えた今、これからの展望をどう考えていますか。

 エミライの強みは、ネットワークやデジタルオーディオ製品の魅力を理解して、それを日本のお客様にきちんと伝えること。そこは15年経っても変わりません。

最初の5年間は海外メーカーさんに体当たりでコンタクトしていき、次の5年間でご縁のできたメーカーさんの知名度を日本でどう高めていくかに取り組みました。直近の5年間で、これまで耕してきたものが少しずつ実を結んできたと感じています。

今後、為替を含めて日本のオーディオ市場を取り巻く環境は厳しい状態が続くと思っています。

ハイエンドの高額製品はオーディオを楽しむ選択肢のひとつですが、それだけになってしまうと日本でオーディオを楽しめる人がどんどん限られてしまいます。

仮にさらに円安が進んだとしても、日本のお客様がいろいろな価格帯でオーディオを楽しめる環境を継続させていく。そのためには、価格と品質、パフォーマンスのバランスに優れた製品を作れるメーカーさんと、きちんとパートナーシップを築いておく必要があります。

最近は海外メーカーさんの方からお話をいただく機会がとても増えており、ほぼ毎週新規のお取り扱いについて問い合わせをいただいています。

新規のメーカーさんに、直近のエミライの活動を評価していただけた結果なのかなと思っていますが、パートナーとして日本での活動を委ねていただいている以上、取り扱いメーカーの皆さんに満足いただくことが輸入代理店として最も重要な使命であるという考えに変わりはありません。

これからも、一緒によいことがやれそうだと思い合えるメーカーさんといい関係を築いていきたいですね。

―― 新しい展開も楽しみにしております。有難うございました。

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