公開日 2021/09/27 06:30

半導体大手クアルコムがなぜユーザー調査を行う?「The State of Sound」レポートの意義を探る

【PR】aptX Losslessなど先端技術を探求

クアルコムが実施した調査の結果から、スマホでゲームを遊ぶ頻度に関連するアンケートに目を向けてみると、エンドユーザーの68%が「少なくとも週2回」、46%は「毎日」これを楽しむと答えている。その勢いはノート・デスクトップPCやゲームコンソールによる利用を凌ぐほどだ。

ゲームサウンドを楽しむ際に使うアクセサリーについては、ワイヤレスヘッドホンを選ぶユーザーが最も多く29%となり、これに完全ワイヤレスイヤホンの23%が肉薄する。筆者の周囲には「ケータイでゲームを楽しむ時に音は聞かない」と答える声が以前は多くあったものだが、最近は街中で完全ワイヤレスイヤホンを装着してモバイルゲームにのめり込む人の姿を多く目にするようになった。

ゲームプレイ時にサウンドを楽しむ手段として、完全ワイヤレスイヤホンが大きな割合を占めている


スマートフォンゲームを遊ぶ人が増えれば、それだけ完全ワイヤレスイヤホンがゲームに用いられるケースも増える

エンドユーザーの要望に応える施策の1つが「Snapdragon Sound」

先述のように、調査会社ではないクアルコムがThe State of Sound Reportを実施する目的は、エンドユーザーのユースシーンを知ることで、真に求められている課題をつかみ、クアルコムの製品・技術開発につなげることにある。

そしてクアルコムは今年の3月に、音楽再生から動画視聴、モバイルゲーミングにまで広く関わるオーディオの最先端テクノロジーをひとつのパッケージにした新しいプラットフォーム「Qualcomm Snapdragon Sound」を発表した。秋以降にはSnapdragon Soundのロゴを冠するスマホやワイヤレスオーディオが各社から発売される予定だ。

今秋以降、搭載モデルが続々と登場する「Snapdragon Sound」

Snapdragon Soundとは、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器による音楽再生から音声通話、ゲーミングサウンドを含む広義のオーディオ体験を、無線・有線両方の再生環境において向上させるクアルコムの新しいプラットフォームの名称だ。詳細は筆者の取材レポートを参照してほしい。

Snapdragon Soundには96kHz/24bitのハイレゾに相当する高品位なBluetoothオーディオ伝送を実現するaptX Adaptiveのアップデート、ならびに同コーデックのサブセットであるaptX Voiceなどの技術が含まれる。aptX Voiceに対応するスマホとワイヤレスオーディオを組み合わせると、現在の2倍にあたる32kHzのサンプリング周波数に対応する高品位なハンズフリー音声通話も可能になる。

クアルコムがSnapdragon Soundを開発した背景には、モバイルゲーミングのオーディオ体験を向上する狙いもあった。Snapdragon Soundは主要な競合他社に比べて45%も無線伝送遅延が少ない「89ミリ秒」を実現する。

Snapdragon Soundに対する反響について大島氏はとても良い手応えを得ているという。既に日本のブランドではオーディオテクニカやラディウスのほか、NUARL、final、AVIOT、 NAIN、Cheeroが相次いでSnapdragon Soundに対応するワイヤレスオーディオ製品の発売を予告している。年末に向けてさらに手を挙げるパートナー企業は増えるだろう。

自社技術を活かした「aptX Lossless」で高音質ワイヤレスを推進

さらに今回クアルコムは、aptX Adaptiveのコーデックに追加される新機能として、既存のBluetooth Classic通信の技術をベースにビットレートが1Mbpsを超えるデータをワイヤレスで伝送する「aptX Lossless」を発表した。

「aptX Lossless」はaptX Adaptiveに新たに採用された拡張機能であり、44.1kHz/16bitのロスレス再生を実現する

aptX Losslessが生まれた背景には、近年CD品質のロスレス音楽配信サービスが急速に増えてきたことが理由にある。これをSnapdragon Soundに対応する機器同士の組み合わせで、より高品位に楽しめるエコシステムの構築をクアルコムは一気に推し進めた。今回Bluetooth LEオーディオや新しい圧縮技術を用いる代わりに、ワイヤレス機器同士で大容量のデータを効率よく伝送するため、クアルコムが開発した独自の最適化技術であるQualcomm Bluetooth High Speed Linkがブレイクスルーに貢献した。

今後はaptX AdaptiveとaptX Losslessに対応する機器同士が接続されている環境であれば、エンドユーザーは44.1kHz/16bitのロスレス再生が楽しめるようになる。複雑な機能の設定等は必要とせず、モバイル端末側がストリーミングされているコンテンツを判別して、通信環境が安定していれば自動的にロスレス伝送を選択する。

音楽再生の最中にエンドユーザーがより通信トラフィックが混雑する環境に移動した場合、aptX Adaptiveの技術によりビットレートを最大140kbpsにまで可変させて、安定した接続状態を優先的に担保する。aptX Losslessにはモバイルとオーディオ、両方の領域においてクアルコムが培ってきた幅広いワイヤレス伝送に関連する知見が活きているのだと大島氏は胸を張る。

クアルコムはこれからも独自にThe State of Sound Reportの調査を続けながら、その手を休めることなく技術革新を探求する。

同社にとって日本は特にオーディオ事業を展開するうえで重要なマーケットであり、Bluetoothオーディオを手がけるパートナー企業とも密接なコミュニケーションを積み重ねてきたと大島氏は振り返る。これからもクアルコムの技術が多くのファンに上質な音楽体験を届けてくれることを期待したい。

(協力:クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ)

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