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5万円で激変、“DCリニア電源”をどう使う?トップウイングの「DC POWER BOX」徹底使いこなし!

公開日 2025/12/11 06:35 炭山アキラ
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「われわれは電源の音を聴いているのではないか」

昨今のネットワークオーディオやデジタル関連製品には、ACアダプター駆動のものが多い。昨今は、窒化ガリウム素子を用いたACアダプター(USB-PD充電器)の音が良いだとか、ACアダプターで大幅にコンポーネンツの音が変わってしまう、ということが周知徹底されてきた感がある。

私自身、これまで数え切れないほど電源はテストしてきたし、「ひょっとしてわれわれは、コンポーネントではなく電源の音を聴いているのではないか」などという感慨に襲われたことも一度や二度ではない。

そんな「機が熟した」感のある昨今に、トップウイングが繰り出してきたのは他でもない。高音質電源装置、その名も「DC POWER BOX」シリーズである。210.4W×70.2H×248Dmmというから、ちょっとした小型コンポーネントくらいの大きさがあるが、内部にはなまじっかなパワーアンプが逃げ出すような大型高級Rコアトランスを背負い、一方で後段回路は特定のキャラクターを付加しないため、最小限に抑えられている。同社・菅沼洋介社長ならではのこだわりと割り切りが光る逸品だ。

TOPWING「DC POWER BOX」(55,000円/税込) 5V/12V/19Vの3ラインを用意

 

ネットワークオーディオの高音質化にトライ!

電源電圧は5V/12V/19Vに対応、それぞれ5Aまで出力可能だから、かなりの大電力機器でも受け持たせることができる。DC出力ケーブルは着脱式で、付属ケーブルは2.1mm/5.5mm規格に対応。そのほか、いくつかの口金に対応したDCアダプター・ケーブル=DC Au Cableシリーズが用意されている。

5Vモデルの右下には「Volumio」と「TOPWING」のダブルロゴが刻まれる

この電源装置はもちろんトップウイングブランドだが、面白いことに5V対応モデルには、フロント右下にVolumioとダブルでロゴがついている。同社も高音質リニア電源装置を販売しているのだが、残念ながらPSEに対応しない作りで日本へは輸入できず、それでDC POWER BOX(5V)を我が国における純正オプション機器と位置付けているのだとか。

今回は、Volumioとトップウイングの製品群でネットワークオーディオ・システムを構築し、そこにDC POWER BOXを次々投入して、音の違いを確かめてみる。数多く使うことで効果は飽和してしまうのか、副作用が出てしまわないのか、一番効き目の強いところはどこか、さらに周辺パーツで音質向上が図れるのか、などなど、次から次へと湧いてくる疑問を丁寧に押さえていく格好の、個人的にも実に面白い取材となった。

メインスピーカーにはB&Wの「802 D4」、パワーアンプはアキュフェーズの「P-7500」を組み合わせ。全6パターンでDC POWER BOXの使いこなしを研究した

ネットワークトラポとDACに投入!

最初に組んだシステムは、編集部常備のTP Link社製ルーターからVolumioのネットワーク・トランスポート「Rivo+」へネットワークをつなぎ、同社のDACシステム「Preciso」へUSBでつないだ。プリから先はアキュフェーズとBowers&Wilkinsのシステムである。

音源はQobuzをストリーミングで利用する。もちろんネットワークの全コンポーネントが付属ACアダプター駆動なのだが、この段階でも音質的にはそう悪くない。このまま聴いている人も多いだろう。

イタリア・Volumioのネットワークプレーヤー「Rivo+」とUSB-DAC「Preciso」

それではまず、Precisoの電源をDC POWER BOX(5V)へ交換してみよう。クラシックは一気に音場が広がり、濃厚な空気感に包まれる。弦の音数が激増し、声も一気に身が詰まった。いやはや、「これで完成!」といいたくなる劇的向上ぶりである。

ポップスは、交換後の音を聴いてしまうと「ACアダプターの音ってあんなに冴えなかったっけ!?」と首を傾げる事態に。試聴に用いた井筒香奈江はとりわけ厳しい音源だから、違いを聴き取りやすかったということはあるが、それにしてもこの差はケタ外れである。

USB-DAC「Preciso」の電源に「DC POWER BOX」(5V)を投入

ここでDCケーブルを、新登場の「DC Au Cable 2.1」に交換してみる。付属ケーブルよりグンと太く、ポロプロピレンの被覆を持つ、固いがしなやかで取り回しの悪くないケーブルである。交換後の音は実体感が大幅に向上し、Volumioならではエロティックとすらいいたくなる声の艶、色っぽさが心臓を直撃する。さほど高価なものではないし、このケーブルはDC POWER BOXの必需品ということになろう。

DC POWER BOX用の専用ケーブル「DC Au Cable 2.1」(5,500円/税込)も用意

続いて、Rivo+にもDC POWER BOX(5V)を投入してみる。クラシックは音の成分に力こぶが入り、ガンガン飛んでくるようになったのが素晴らしい。レファレンス・スピーカーシステムはB&Wの802 D4を使っているが、端正かつジェントルに音楽を描き出すのが持ち味の同機から、これだけパワフルな音を繰り出してくるのだから驚く。

ネットワークトランスポート「Rivo+」に「DC POWER BOX」(5V)を投入

ポップスは、井筒のウィスパーボイスがますます耳元で囁くような質感へ進化を遂げてゆく。何とも好ましい聴き心地である。

 

光アイソレーターの効果も確認

ここでいったん電源から離れ、トップウイングの大ヒット商品OPT ISO BOXをルーターとRivo+の間に挿入してみた。LANケーブルは、すべて同社のUltra Slim Linkを使っている。

トップウイング 光アイソレーター「OPT ISO BOX」(39,600円/税込)

クラシックはまたさらに音場は澄み切り、空気感の爽やかさ、見晴らしの良さ、ともに極上である。ノイズフロアがグッと下がり、微小域の情報が湧き出すように耳へ届くようになる。この効果は既に分かっていたが、改めて使用前/使用後を聴くと、その大きな差に思わず天を仰ぐ。超ハイCPグッズである。

取材前にレファレンス音源を選定する際、「この組み合わせには向かない」と外した強烈なエレクトロニカを聴いてみたら、猛烈パワフルかつ鋭い切れ味で鳴りまくってしまったではないか。素晴らしい鳴りっぷりに気分が高揚しつつ、向かなかったのは機材ではなく使いこなしだった、という笑えないオチに愕然としてしまった。音楽の立ち姿そのものを左右してしまう、絶望的な違いが生じてしまった、ということになる。

 

汎用ルーターに投入でさらに激変!

気を取り直し、次へ進もう。お次はルーターにDC POWER BOXを奢ってみる。オーディオ機器ではない汎用品に高級電源を投ずることの意義について、疑問がおありの人もおられようが、ネットワーク音楽信号は紛れもなくここから出力されている。電源が効かないはずはない。

なお、ルーターは確認したところ12V・2.1mm/5.5mm規格であった。電源を付属品から変えるときには、電圧、電流、口金規格を必ず確認したい。

クラシックは弦群が音場へ有機的に融け込み、声の伸びやかさといい全体的な表現の濃厚さといい、まったく次元の違う音が再現されてしまった。効くだろうと予測してはいたが、この違いは想像の遥か彼方だ。当初のいささかショボくれた音を思い出し、ずいぶん遠くへきてしまったものだな、と独り言ちることとなった。これはもう元には戻れない。

TP Link製の家庭用ルーターに「DC POWER BOX」(12V)を投入

ポップスは、ベースが演奏中に腰かけている椅子が見えてきた!どんな楽器でも立奏と座奏では音の響きが僅かに違うものだが、その差をはっきりと表現してしまうことに舌を巻く。井筒はウィスパーボイスなのに、この迫力はどうだ。ホットに心臓を直撃する囁きである。

 

オーディオ専用ネットワークを構築

ここで、TP LinkのルーターからDATA ISO BOXとOPT APを使って、オーディオ専用のネットワークを構築する。汎用のルーターは、もちろんオーディオ以外のネットワークでも膨大な作業をこなしており、それが音質に少なからず悪影響を与えているんです、とトップウイングの菅沼社長が教えてくれた。

ここまでシステムを変更し、音を出した瞬間に驚いた。ボリューム位置が変わってしまったのである。従来と同じ迫力を得ようとするなら、音量は少し下げたところでちょうどいい感じになる。しかし、これまで澄み切って濃厚に広がっていたように感じていたクラシックの音場へ、僅かに雑味というか濁りの要素が看取できるようになる。周りがどんどん改善していった結果、最後に残った微かな不快感が顕在化した、そんな印象である。

オーディオルーター「DATA ISO BOX」に「DC POWER BOX」(12V)を投入

続いて、DC POWER BOX(12V)をDATA ISO BOXへ装着する。クラシックは静かな楽想の中にギラリとパルシブな成分が屹立する音楽なのだが、そのコントラストが倍加して音楽の躍動感、Dレンジが大幅に向上した。本領発揮!という感が強い。

ポップスは録音現場の静寂感が大幅に高まり、そこから伴奏が、歌が、確かな人間の肉体を伴って立ち上がり、楽曲を紡いでいく。もう心臓を鷲づかみにされるような表現だ。

ポップスは井筒の歌唱から力こぶが抜け、サラリとした質感へ復した。しかし、歌へ込めた思いが胸を打つ強さは、さらに高まったような気がする。押しつけがましさのまったくない劇的な感動を、どう表現すればよいだろう。

そして最後に。QobuzはRoon経由で再生しているのだが、サーバーに用いているASUSのミニPCへDC POWER BOX(19V)を装着してみると、クラシックは音場がさらにケタ外れの広がりを聴かせる。一体どうなっているのかと、目を回さんばかりの向上ぶりだ。この大いなる静寂と音楽の立ち上がりを聴いてしまうと、Roonサーバーがいかに重要かが痛感される。

ASUSのミニPC(Roonサーバーとして使用)に「DC POWER BOX」(19V)を投入

ポップスは井筒の声がピシリと締まった。この音源、こんな録音だったけと、ここでもまた目を回さんばかりだ。井筒の声へ電気的に付加されたエコーが完全に分離してしまい、思わず苦笑いしてしまったが、これはオーディオ的には極めて正しい現象である。

 

では、どこが一番効果が高い?

さて、ここまで使い放題にDC POWER BOXを使ってきたわけだが、「一番効く場所」、即ち最初の1台はどこへ投入するのがハイCPか。これは簡単に回答できる質問ではないが、私の印象ではDACとルーター、そしてRoonサーバーが最もよく効く3本柱だと感じられた。

菅沼社長によると、ルーターとRoonサーバーは「最も忙しく仕事をしている」装置だそうで、そこに高品位の電源を投入するのは理にかなっているという。一方のDACは、やはり音楽再生の要というべきアナログの音楽信号を作り出す部位だから、よく効いて当たり前なのであろう。

そこで、追加実験として比較的「仕事の軽い」と思われるRivo+を外し、付属ACアダプターへ戻してみたら、確かに音は一段落ちるが、CPを考えたらこの差は納得できる範囲ともいえる。先に電源を交換するのは先の3台と考えて問題ないだろう。

個人的に、自宅リスニングルームでもトップウイングのネットワーク改善機器はいろいろ使っているが、ここまで階段を1段ずつ上がるような実験はやってこなかっただけに、私自身にとっても大変有意義な取材となった。皆さんのネットワークオーディオ改善にも、大いに役立ててほしい。

(提供:トップウイング)

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