公開日 2015/10/21 11:00
「プレミアム・ヘッドホン」が最大の成長領域 ー ダニエル・ゼンハイザーCEOインタビュー
70周年記念、「ネクストマイルストーン」へ
オーディオヘッドホンのプレミアム・ブランドであるゼンハイザーが創立から70周年を迎えた。8日に都内で開催されたアニバーサリーイベントに出席するために来日した同社CEOのダニエル・ゼンハイザー氏に「完璧なサウンド」を追求し続けるブランドのポリシーや、今後のプレミアム製品の展開についてインタビューした。
ダニエル・ゼンハイザー氏がPhile-webのインタビューに答える機会は、3年前の2012年以来、2回目となる。
ダニエル氏は当時から日本を「愛して止まない国」と語っていた。10月8日に開催された設立70周年記念イベントの壇上でも、「日本のゼンハイザーファン、ユーザーの皆様は私たちとともに“完璧なサウンド”を追求する仲間。皆様から寄せられる製品への声や要望が、ゼンハイザー製品の進化を前へ押し進めてくれるのです」と、日本市場への敬意を表した。
世界的にヘッドホン・イヤホン市場が大きく伸長していると言われているが、ダニエル氏はトレンドをどのように捉えているのだろうか。
「スマートフォンを購入すればイヤホンが付属してくることも多くなりました。そちらの商品セグメントも数は伸びていますが、ゼンハイザーが注力すべきではないと考えています。またクオリティを無視して、単にファッションアイテムとしてヘッドホンをアピールする向きもありますが、これもまたゼンハイザーには関係のない世界です。音質やデザイン、プロダクト全体のクオリティに徹底してこだわる姿勢こそが“ゼンハイザー流”であり、その道では間違いなく市場をリードするプレミアムブランドであると自負しています」
「そして、いま大きく伸びているのがまさにプレミアムモデルのセグメントです。ハイレゾへの注目が世界的に高まってきたことで、ヘッドホンだけでなくオーディオプレーヤーにも熱い視線が注がれています。ハイレゾをはじめオーディオグレードのコンテンツに関心が集まり、ダウンロードやストリーミング経由でオンラインから供給される楽曲データのクオリティがますます高くなっていることも一因です」
「中でも日本はプレミアム市場をリードする地域です。それはオーディオファイルの皆様がハイクオリティな製品について理解が深く、大きなコミュニティを形成しているからです」
2013年にダニエル・ゼンハイザー氏、アンドレアス・ゼンハイザー氏が3代目のCEOとして経営を引き継いでからも、ゼンハイザーは独立した家族経営のスタイルを貫いている。株式を非公開としている理由についても、経営方針を揺るぎないものとしながら、最高の製品をつくることに経営の全リソースを集中させるためという。ダニエル氏は独自の経営スタイルの意義についてこう語っている。
「これまでの70年間、ゼンハイザーは家族経営という経営スタイルの信念を貫くことで、いくつもの成功を収めてきました。その過程の中ではいくつもの難しい経営判断がありましたが、常に挑戦する姿勢を忘れずに正しい道を選択してきたことが今の成長に反映されています」
「例えばヨーロッパの経済不調が伝えられていた2009年にも、本社の工場設備を大きく拡張しています。当時は2020年まで製造キャパシティを十分に確保できるほどの大幅拡張を行ったはずでしたが、そこから業績は好調に伸び続けて、今では既に全ての製造ラインがフル稼働しており、もう次の拡張計画を迫られているほどです」
好調のゼンハイザーは今年、どのような形で70周年の節目を迎えることができたのだろうか。記念すべき1年も折り返し地点を過ぎた。
これまでに本国であるドイツや、イギリスなどヨーロッパの各地で、また日本でも大規模に記念イベントが開催されたわけだが、ダニエル氏は「ゼンハイザーがこれまでと変わらず、コーポレートポリシーである“完璧なサウンド”を追求していくことを、多くのユーザーに向けて宣言するために、各地でのイベント開催はとても大事だった」と振り返る。
70年間の歴史で培ってきた資産を継承しながら、未来に向けてどのような形でつないで行こうとしているのだろうか。ダニエル氏に訊ねた。
「長年に渡って築き上げてきた資産を糧にしながら、オーディオに革新をもたらし、音楽文化の創造に貢献していきたいと考えています。“完璧なサウンドの探求”は終わりのない長い旅です。その旅の中で成功を勝ち取るためには、常に卓越した製品を求め続ける情熱を持ち続けることが大切です。ゼンハイザーは優れた“ジャーマン・クオリティ”の品質を守りながら、ユーザーやファンからの信頼を厚くする、ものづくりにこだわります」
ゼンハイザーらしい革新的な製品を世に送り続けるためには、全てのスタッフが各々の能力を最大限に発揮できる環境を整えることもCEOとしての重要な役割とダニエル氏は述べている。昨年度はR&D(研究開発)部門に対して、ゼンハイザーグループ全体で6.8%の予算を計上した。研究開発のため、経営資産を大胆に投入する狙いはどこにあるのだろうか。
「昨年度に限らず、これまでにもゼンハイザーは毎年6.5%から7.5%をR&D部門の予算に割り当ててきました。その比率はおそらく他の企業よりも大きいのではないでしょうか。狙いとしては良質な製品をお客様に届けるためだけでなく、ヘッドホンのプレミアム・ブランドとして常に一歩先をリードする技術革新を手にするためでもあります」
「ドイツ国内でつくられる“ジャーマン・クオリティ”の製品は、必然的に値段も高くなります。その価格と期待にふさわしい製品を届けられるよう、私たちはブランドの誇りをかけて常時ベストな完成度を求めなけらばならない使命を帯びています。イノベーションの先端に立ち続けることが、ブランドの存在感を高めることに結び付いています」
研究開発への投資成果は、ヘッドホンやイヤホンなどゼンハイザーの新製品に目に見えるかたちで表れるものばかりではない。例えば製造設備の品質向上や、今年の3月に本社敷地内にオープンした「イノベーション・キャンパス」に代表されるような、同社のスタッフが活躍するための場所づくりにも反映される。
「イノベーション・キャンパスについては、ゼンハイザーで働くスタッフたちがお互いの専門分野の垣根を超えてコンセプトを共有しながら、良質な製品をつくるために必要な環境を整えることがテーマでした。3階建ての施設にはいくつものミーティングスペースが設けられ、商品企画からエンジニア、営業部門のスタッフが膝を突き合わせながらアイデアを交し合える場所が用意されています。いま注目を集めるスタートアップ企業のように、活気あふれる環境で質の高いアイデアを生み出し、形にしていくことが画期的な商品の誕生につながると考えています」
ダニエル氏が開発に深く関わってきたプレミアム・ヘッドホンの「MOMENTUM」シリーズが、今年第2世代に進化を遂げた。ダニエル氏が本シリーズにかける思いを聞くことができた。
「MOMENTUMシリーズには完成されたデザイン、金属や革など高級な素材、そして言うまでもなく最高のアコースティック技術も含めて、ゼンハイザーが誇る高品位へのこだわりが詰まっています。まさにコーポレート・ポリシーを象徴するヘッドホンです。第1世代のモデルを発売して以後、進めてきたグレードアップの成果が今年発売する第2世代のモデルに反映されています。アラウンドイヤー、オンイヤーともに見た目には大きく変わっていませんが、ディティールに目をやれば、折り畳み機構やワイヤレスモデルの追加、アラウンドイヤーのモデルはイヤーカップの大型化など様々な進化を遂げています。現在手に入れられる最高クラスのヘッドホンだと自負しています」
最後に、これからの展開についてダニエル氏に抱負をうかがった。
「これからもコーポレートポリシーに対して忠実に向き合いながら、より上質なオーディオ製品を探求していきたいと考えています。オーディオ製品とはつまりヘッドホン・イヤホンに限らず、子会社であるノイマンのスピーカーも含む音楽リスニングの文化そのものを指しています」
「ほかにもカンファレンスシステムやヘッドセットなど、ビジネス・コミュニケーションのセグメントはこれから大きな成長領域になると捉えています。なぜなら、この分野はまだ音質の面で発展する余地が多く残されていて、そこにゼンハイザーが提供できる技術があるからです」
「またプロオーディオのビジネスについても、これまで通り完璧なサウンドを追求していきます。いま注目しているのは、放送やステージ録音の現場に個人単位でのビジネスユニットが広がりつつあることです。このセグメントには新しいジャンルの機材が求められているので、今後ゼンハイザーらしい製品やサービスが提供できるものと期待しています」
技術革新への冷めない情熱を持ちながら、テクノロジーの限界に挑戦し続けたいとダニエル氏は熱く語る。記念イベントで披露された「ネクストマイルストーン」の続報とともに、ゼンハイザーが繰り出す次の一手に、ますます注目が集まる。
ダニエル・ゼンハイザー氏がPhile-webのインタビューに答える機会は、3年前の2012年以来、2回目となる。
ダニエル氏は当時から日本を「愛して止まない国」と語っていた。10月8日に開催された設立70周年記念イベントの壇上でも、「日本のゼンハイザーファン、ユーザーの皆様は私たちとともに“完璧なサウンド”を追求する仲間。皆様から寄せられる製品への声や要望が、ゼンハイザー製品の進化を前へ押し進めてくれるのです」と、日本市場への敬意を表した。
世界的にヘッドホン・イヤホン市場が大きく伸長していると言われているが、ダニエル氏はトレンドをどのように捉えているのだろうか。
「スマートフォンを購入すればイヤホンが付属してくることも多くなりました。そちらの商品セグメントも数は伸びていますが、ゼンハイザーが注力すべきではないと考えています。またクオリティを無視して、単にファッションアイテムとしてヘッドホンをアピールする向きもありますが、これもまたゼンハイザーには関係のない世界です。音質やデザイン、プロダクト全体のクオリティに徹底してこだわる姿勢こそが“ゼンハイザー流”であり、その道では間違いなく市場をリードするプレミアムブランドであると自負しています」
「そして、いま大きく伸びているのがまさにプレミアムモデルのセグメントです。ハイレゾへの注目が世界的に高まってきたことで、ヘッドホンだけでなくオーディオプレーヤーにも熱い視線が注がれています。ハイレゾをはじめオーディオグレードのコンテンツに関心が集まり、ダウンロードやストリーミング経由でオンラインから供給される楽曲データのクオリティがますます高くなっていることも一因です」
「中でも日本はプレミアム市場をリードする地域です。それはオーディオファイルの皆様がハイクオリティな製品について理解が深く、大きなコミュニティを形成しているからです」
2013年にダニエル・ゼンハイザー氏、アンドレアス・ゼンハイザー氏が3代目のCEOとして経営を引き継いでからも、ゼンハイザーは独立した家族経営のスタイルを貫いている。株式を非公開としている理由についても、経営方針を揺るぎないものとしながら、最高の製品をつくることに経営の全リソースを集中させるためという。ダニエル氏は独自の経営スタイルの意義についてこう語っている。
「これまでの70年間、ゼンハイザーは家族経営という経営スタイルの信念を貫くことで、いくつもの成功を収めてきました。その過程の中ではいくつもの難しい経営判断がありましたが、常に挑戦する姿勢を忘れずに正しい道を選択してきたことが今の成長に反映されています」
「例えばヨーロッパの経済不調が伝えられていた2009年にも、本社の工場設備を大きく拡張しています。当時は2020年まで製造キャパシティを十分に確保できるほどの大幅拡張を行ったはずでしたが、そこから業績は好調に伸び続けて、今では既に全ての製造ラインがフル稼働しており、もう次の拡張計画を迫られているほどです」
好調のゼンハイザーは今年、どのような形で70周年の節目を迎えることができたのだろうか。記念すべき1年も折り返し地点を過ぎた。
これまでに本国であるドイツや、イギリスなどヨーロッパの各地で、また日本でも大規模に記念イベントが開催されたわけだが、ダニエル氏は「ゼンハイザーがこれまでと変わらず、コーポレートポリシーである“完璧なサウンド”を追求していくことを、多くのユーザーに向けて宣言するために、各地でのイベント開催はとても大事だった」と振り返る。
70年間の歴史で培ってきた資産を継承しながら、未来に向けてどのような形でつないで行こうとしているのだろうか。ダニエル氏に訊ねた。
「長年に渡って築き上げてきた資産を糧にしながら、オーディオに革新をもたらし、音楽文化の創造に貢献していきたいと考えています。“完璧なサウンドの探求”は終わりのない長い旅です。その旅の中で成功を勝ち取るためには、常に卓越した製品を求め続ける情熱を持ち続けることが大切です。ゼンハイザーは優れた“ジャーマン・クオリティ”の品質を守りながら、ユーザーやファンからの信頼を厚くする、ものづくりにこだわります」
ゼンハイザーらしい革新的な製品を世に送り続けるためには、全てのスタッフが各々の能力を最大限に発揮できる環境を整えることもCEOとしての重要な役割とダニエル氏は述べている。昨年度はR&D(研究開発)部門に対して、ゼンハイザーグループ全体で6.8%の予算を計上した。研究開発のため、経営資産を大胆に投入する狙いはどこにあるのだろうか。
「昨年度に限らず、これまでにもゼンハイザーは毎年6.5%から7.5%をR&D部門の予算に割り当ててきました。その比率はおそらく他の企業よりも大きいのではないでしょうか。狙いとしては良質な製品をお客様に届けるためだけでなく、ヘッドホンのプレミアム・ブランドとして常に一歩先をリードする技術革新を手にするためでもあります」
「ドイツ国内でつくられる“ジャーマン・クオリティ”の製品は、必然的に値段も高くなります。その価格と期待にふさわしい製品を届けられるよう、私たちはブランドの誇りをかけて常時ベストな完成度を求めなけらばならない使命を帯びています。イノベーションの先端に立ち続けることが、ブランドの存在感を高めることに結び付いています」
研究開発への投資成果は、ヘッドホンやイヤホンなどゼンハイザーの新製品に目に見えるかたちで表れるものばかりではない。例えば製造設備の品質向上や、今年の3月に本社敷地内にオープンした「イノベーション・キャンパス」に代表されるような、同社のスタッフが活躍するための場所づくりにも反映される。
「イノベーション・キャンパスについては、ゼンハイザーで働くスタッフたちがお互いの専門分野の垣根を超えてコンセプトを共有しながら、良質な製品をつくるために必要な環境を整えることがテーマでした。3階建ての施設にはいくつものミーティングスペースが設けられ、商品企画からエンジニア、営業部門のスタッフが膝を突き合わせながらアイデアを交し合える場所が用意されています。いま注目を集めるスタートアップ企業のように、活気あふれる環境で質の高いアイデアを生み出し、形にしていくことが画期的な商品の誕生につながると考えています」
ダニエル氏が開発に深く関わってきたプレミアム・ヘッドホンの「MOMENTUM」シリーズが、今年第2世代に進化を遂げた。ダニエル氏が本シリーズにかける思いを聞くことができた。
「MOMENTUMシリーズには完成されたデザイン、金属や革など高級な素材、そして言うまでもなく最高のアコースティック技術も含めて、ゼンハイザーが誇る高品位へのこだわりが詰まっています。まさにコーポレート・ポリシーを象徴するヘッドホンです。第1世代のモデルを発売して以後、進めてきたグレードアップの成果が今年発売する第2世代のモデルに反映されています。アラウンドイヤー、オンイヤーともに見た目には大きく変わっていませんが、ディティールに目をやれば、折り畳み機構やワイヤレスモデルの追加、アラウンドイヤーのモデルはイヤーカップの大型化など様々な進化を遂げています。現在手に入れられる最高クラスのヘッドホンだと自負しています」
最後に、これからの展開についてダニエル氏に抱負をうかがった。
「これからもコーポレートポリシーに対して忠実に向き合いながら、より上質なオーディオ製品を探求していきたいと考えています。オーディオ製品とはつまりヘッドホン・イヤホンに限らず、子会社であるノイマンのスピーカーも含む音楽リスニングの文化そのものを指しています」
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