【特別企画】ヒット製品の背景を探る連続企画

マランツ「11シリーズ」大ヒットの舞台裏(1)フラグシップ機に込めた思いとは?

取材・構成/ファイル・ウェブ編集部

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2013年06月07日

実は創業60周年の2013年に向けて、フラグシップである1桁番台のSACDプレーヤー「SA-7S2」を出すべく、2007年から準備を進めていたという。しかし、リーマンショックや東日本大震災など容赦ない環境の変化に見舞われ、計画は再検討されることになった。お蔵入りの窮地に陥ったそのコンセプト・技術を活かすべく、2桁番台のトップモデル「11シリーズ」としてまとめあげたのが「SA-11S3」であったという。かくして、外観やシリーズ名称は11シリーズだが、内容はフラグシップクラスという製品が誕生した。

MARANTZ「SA-11S3」¥504,000 背面にUSB typeB入力を設け、USB-DAC機能も備えるSACDプレーヤー。192kHz/24bitまでのPCM信号に対応している。ピュアオーディオ再生に加え、ネットオーディオにも対応している点も大きな魅力のひとつだ。

「前モデルとの共通点はシャーシ程度」というほど、本機では全てのパーツを見直した。たとえばディスクドライブ。進化した第6世代の自社製ドライブは、高速回転するディスクの振動を効果的に抑制し、読み取り精度の向上が図られている。

「SA-11S3」の内部。筐体全体の重量バランスを最適化するために、メカエンジンはセンターにレイアウトされている

オリジナルのディスクドライブ「SACDM-2」。高剛性なスチールシャーシとアルミブロックベースにより、振動の効果的な抑制し、読み取り精度の向上が図られている

そしてクロックには最新のクリスタルクロックを採用。SA-7S1の10分の1という、驚異的な低ジッターを実現しているという。


SA-11S3の技術開発を担当したCEエンジニアリングユニット 設計本部 中山隆一氏
「本機のコンセプトのひとつとして“高精度なマスタークロックを搭載したい”という思いがあったんです。開発時、今回採用したクリスタルクロックを積んでみたところ、劇的に音が化けた。それがSA-11S3の音質の突破口になったように思います。このクロックを柱に、その他のパーツなどを選んでいきました」と、本機の技術開発を担当したCEエンジニアリングユニット 設計本部の中山隆一氏は語る。

また、DACには、試聴を繰り返して決定したという、DSDダイレクトDA変換&192kHz/24bitのPCM信号に対応するバーブラウン製のDAコンバーター「DSD1792A」を搭載した。澤田氏は「決して最新のDACというわけではありませんが、より新しい32bit対応の1795と比べても、音質優位性があると判断しました。32bitと言っても実際にそれをフルに使えるケースはごく稀。24bitであっても、許容出力電流の最も大きな電流出力型を採用した方が総合的な音質は良いと感じました」と、数字ではなく音質を重視して選んだことをアピールする。

さらに澤田氏は「再生ソースがハイレゾデジタル音源に移行しつつある現在、“最後のディスクプレーヤー”として確かなものを購入しておきたい、という思いで買ってくださった方も多いのではないかと思います。それにUSB-DACを搭載しているので、もし今後ネットオーディオを始めたいと思われた際も対応可能という点もポイントになったのではないでしょうか」と続ける。SA-11S3のヒットの理由は、高い実力に加え、将来性を兼ね備えている点にもあったのではないか。

そして本機の開発で培われたノウハウは、後述するネットワークプレーヤー「NA-11S1」につながっていくことになる。

新回路採用で飛躍的に音質向上したプリメインアンプ「PM-11S3」

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