【特別企画】ヒット製品の背景を探る連続企画

マランツ「11シリーズ」大ヒットの舞台裏(1)フラグシップ機に込めた思いとは?

取材・構成/ファイル・ウェブ編集部

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2013年06月07日
マランツから昨年7月に登場したSACDプレーヤー「SA-11S3」とプリメインアンプ「PM-11S3」。どちらも約50万円という高級機にも関わらず、前モデルの数倍という驚異的な売上を記録しているという。また、今年2月発売のネットワークプレーヤー/USB-DAC「NA-11S1」も、国内メーカーとして初リリースとなる30万円台の製品ながら、依然品薄状態が続いているとのこと。どの製品も決して安いとは言えない価格帯。しかもプレーヤーやアンプは、前モデルから外観もほぼ変わらない。にもかかわらずなぜ、売れているのか。「11シリーズ」大ヒットの理由を探る特別企画を全3回でお届けする。

「11シリーズ」ヒットの舞台裏について高山氏、中山氏、澤田氏、中野氏、緑川氏(写真左より時計回り)に突撃取材した

◇  ◇  ◇


「もっと売れていい製品なのに」− マランツ セールス&マーケティング APAC マーケティンググループの高山健一マネージャーは悩んでいた。2012年7月に発売となったSACDプレーヤー「SA-11S3」とプリメインアンプ「PM-11S3」。好評だった前モデル「SA-11S2」「PM-11S2」から4年の歳月を経て登場した自信作で、同社の期待も高かった。しかし実際の売上げはS2よりも「少し良い」程度。外観もスペック上の数値もほぼS2と同じで、価格も約50万円という中高級価格帯。劇的な売上げ増は難しいのだろうか − そんな思いを抱きつつも、状況を打破する策を講じはじめた。

状況が大きく動いたのは、その年の12月中旬だった。「ドラマチックと言えるほどの劇的な伸びでした。なにせ11月と12月の売上が4倍も違いましたから」と高山氏は振り返る。12月の販売台数はすぐに足りなくなってしまい、在庫欠品状態となってしまう。その後も需要はまったく衰えず、今年5月生産分まであっという間に完売。2月の注文分を先月ようやく出荷できた状態なのだという。

なぜ、そのように急激な売上増があったのか。マランツの関係者に話を聞いた。

「久々の新モデルということでS3への期待は高かったものの、S2と外観もスペックもほぼ変化なし。じっくりと中味を吟味していただく期間が必要だったのでしょう」と語るのは、「SA-11S3」の開発者であるCSBUデザインセンター マランツ音質マネージャーの澤田龍一氏。

CSBUデザインセンター マランツ音質マネージャー 澤田龍一氏

「発売から時間が経つにつれ音質への評価も定着し、年末頃には多くの販売店さんが11シリーズを推薦してくださいました。ただ、多くのお客様にとって、外観とスペックがほぼ変わらないというのは気に掛かる要素だったのでしょう。11月までは、くすぶっているような状態でした。しかし年末に大きなオーディオ賞を獲得したり、11シリーズの誕生秘話(次ページで紹介)が広まったりしたことが、購買を促す強力なフックになったのだと思います」と高山氏も続ける。

セールス&マーケティング APAC マーケティンググループ マネージャー 高山健一氏

また、「12月の衆議院選挙で政権が交代し、景気回復への期待感が高まったことも要因のひとつかも知れません。選挙が終わった中旬から急激に売上が伸び、販売台数が足りなくなってしまいました。それまで購入を検討していたものの“待ち”の姿勢だったユーザーさんが行動に移ったのではと考えています。元々アンプやプレーヤーは、比較試聴と検討を重ねてから決断する方が多い製品ですし」と、東日本営業部 首都圏営業所 営業課 リーダーの緑川 修氏も推測する。

東日本営業部 首都圏営業所 営業課 リーダー 緑川 修氏

「今では販売店さんを訪れる方が試聴候補に11シリーズを指名してくださることが多くなりました。『どの店に行っても11S3を勧められるので気になってしまって』と話してくれた購入者の方もいらっしゃいましたね」(高山氏)


フラグシップ機に載せる技術を投入した
SACDプレーヤー「SA-11S3」


異例のヒットを飛ばす「11シリーズ」とは、いったいどんな製品なのだろうか。

まず、USB-DAC機能を搭載したSACDプレーヤー「SA-11S3」から見ていこう。

幻の「SA-7S2」だった「SA-11S3」

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