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カートリッジ、フォノイコライザーも変えて試聴

オーディオテクニカのレコードプレーヤー「AT-LP7」レビュー。高い基礎性能、グレードアップの幅も広い

公開日 2018/06/13 11:00 井上 千岳
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フォノイコライザーを内蔵しているのはこれまでの他のモデルと同様だが、本機はMM型だけでなくMC型にも対応している。ゲインはMMで36dB、MCで56dB。固定である。またイコライザーをスルーして、フォノ出力とすることも可能だ。なお出力端子はRCAだが、アース端子も付いているので心配は要らない。

付属カートリッジ&内蔵フォノイコの再生から、音数豊かで歪みが少ない

まずは内蔵フォノイコライザーで、付属のカートリッジを聴くことから始めたい。仕様のうえではそれほどの数値ではないが、聴感上はS/Nが十分に取れて当たりがいい。音調が上ずったり刺々しくなったりすることがなく、しかも意外に骨太で腰から下がしっかりしている。カートリッジはVM型だが、そこからこういう線の豊かな音が出てくるのがいい意味で想定外である。

バロックはチェンバロやオーボエなど分離がよく、コントラバスがくっきりと鳴る。バロック・アンサンブルはそう大人数ではなく、コントラバスも1台かせいぜい2台がいいところだが、それでもこのレコードからはぐんと深くまで沈んだコントラバスの低音がはっきりと聴こえて、アンサンブルの響きを力強く支えているのがわかる。それでいて重すぎず、質感は決してぼってりしてはいない。

こういう落ち着いて伸びやかな再現が、現代のVMやMM系のカートリッジには可能なのだ。それだけ周辺のエレクトロニクスが進化しているわけだが、それに対応できるだけの性能を獲得しているのも確かである。

付属カートリッジのVM520EBで、落ち着いて伸びやかな再現が可能

それがピアノではくっきりと明瞭なタッチに現れているが、やはりここでも低音部がずっしりとした手応えを備えてレスポンスが安定している。また弱音部が痩せることもなく、静かな背景の中に余韻が瑞々しく乗る。表現の幅が広いのである。

オーケストラもダイナミズムの広さにきちんと対応している。高域の伸び方などさらに発展の余地もみられるが、それは後述するようにいくらでも改善することが可能だ。むしろベースとなる音数の豊かさと、歪みの少ないことが基本性能の高さを示している。

その証拠はすぐに得られるのだ。このカートリッジはシリーズ内でも、また上級の700シリーズともスタイラスの互換性がある。そうやってグレードアップしてゆくのが、使いこなしの常道にもなっているわけだ。

針交換の効果を引き出す素性の良さ

試しにML(マイクロリニア)針の「VMN540ML」に換えてみるとどうなるか。マイクロリニア針は針先の外縁部にさらに突起のような張り出しがあり、これによって一般的な楕円針よりもさらに音溝との接触が密接になっている。もちろん接合ではなく、無垢針である。

針先やカンチレバーの形状が異なる「VM540ML」に変えてみた

もうひとつカンチレバーが、520EBではアルミパイプだったのが540MLではアルミテーパーパイプになっている。この点も音質に利いてくる部分である。

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