「コンパクトな外観からは想像できない」

ティエンのアナログプレーヤー「TT3」 − 合理性を突き詰め実現したサウンドを聴く

角田郁雄

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2017年10月16日
レコードがこの世に誕生して以降、これまで登場したアナログプレーヤーは数知れず。そんな膨大なプレーヤーを徹底的に研究し、それらの弱点を克服した人物がいる。その名も、台湾に本拠を置くティエンオーディオのジェフ・ティエン。コレクターとしておよそ100台のプレーヤーを所有するほか、国家音楽ホールの地下でヴィンテージレコード店を営むなど、まさに「アナログ名人」とも言える同氏が、満を持して開発したのがTT3である。そんなTT3の特徴とサウンドを角田郁雄氏が解説する。

TIEN AUDIO「TT3」+「Viroa 10inch」¥OPEN(予想実売価格¥500,000前後)※写真はオプションのトーンアーム「Viroa 12inch」を搭載したもの

■広大で奥行きの深いステージ感とリアリティ

残響豊かな教会のなかで、この上なく静寂を感じながら、やがてピアノの響きが透明度高く響く。その中央に、アーティキュレーションを極め、デリカシーに富んだ声使いの女性ヴォーカルが定位する。背景には「サッ、サッ」と柔らかに響くブラシやシンバルの繊細な響き、深いバスドラムやベースの音が聴ける。遠くには、美しいリヴァーブのギターやトランペットが鳴り響き、空間性に溢れた美しい音楽を展開する。これは、ノルウェーの2Lレーベルによる『クワイエット・ウィンター・ナイト』の1曲目と2曲目で聴けた体験だ。

その広大で、奥行きの深いステージ感とリアリティに富んだ演奏を再現してくれたのは、台湾のジェフ・ティエン氏が創立した新進ブランド、TIEN AUDIO(ティエンオーディオ)のプレーヤー「TT3」とトーンアーム「Viroa」、そしてトップウイングのカートリッジ「青龍」の組み合わせであった。TT3のデザインは実にコンパクトでスタイリッシュであるが、大型プレーヤーと肩を並べるくらいのスケールの大きな音質を再現することに、私は感激した。

ティエン氏は、ハイエンドターンテーブルの修理工場を経営し、顧客から絶大な信頼を得ていた。こうしたなかで、高額なハイエンドターンテーブルを徹底的に分析し、もっとアナログを楽しむ愛好家に寄り添った、現実的な価格帯のアナログプレーヤー・システムを実現したいと研究開発を進めてきたそうだ。それが、TT3とViroaである。

■構成する要素の全てが理にかなった設計

まずはプレーヤーのTT3から説明しよう。プラッターは1kgのアクリル製で、ユニークな3モーター・ベルト駆動が大きな特徴だ。ティエン氏は、軸受けとプラッター軸(以下:軸)との間には多少の隙間が必要であり、軸と軸受けの側面は接しないで、静止状態で回転することが重要であると考えた。

一般的な1モーターのベルト駆動では、軸受けの側面に軸を引きつけられ、摩擦ノイズを発生させる。ミクロの眼で見れば、ひとつのモーター駆動ではひとつの方向からベルトで引っ張ることになるので、軸はモーター側に傾くし、ベルトの経年劣化も多いという。そこで、軸受けと軸との微妙な隙間を摩擦なく、常に確保するために、アルミ製のインナープラッターに正三角形のように一本のベルトをかけ、3モーターで駆動することを考えた。これにより、ストレス・フリーの回転を得ているのである。

TT3はフローティング構造を採用した3つのモーターからシリコンのベルトでサブプラッターを回転させることで、軸受がまっすぐ静かに回転することを実現した

モーターケースは脚部も兼ねており、スパイクによってボディを支持。ミニマムな構造として、できるだけ共振を発生させない仕組みとなっている

ベルトは実に柔らかで、プラッターとはわずかに線接触。3モーター駆動なので、モーターはトルク量よりも静寂性を優先して採用し、モーター自体も3点支持のサスペンションでフローティング。モーター軸にそっと触ると柔らかに動くが、これによってモーターの微細振動も激減でき、ベルトへ振動も伝わらないのである。

キャビネットとモーター・ケースは、12sの航空機用アルミ製で一体化され、モーター・ケース自体が脚部となっている。中心には大型の軸受けがあるが、インナープラッターは磁気フローティングされている。なお、3モーターは完璧な回転同期が確保される必要があるが、ここにも手ぬかりはなく、PLLを使わない独自のCPUを使ったPWM変調器で制御している。

3つのモーターを回転させるスイッチ。このスイッチの下に搭載されたCPUからPWM信号を送ることで、±0.015%という驚異的な数値を達成。78rpmにも対応する

ティエン氏のアイデアが凝縮されたトーンアーム

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