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ケン・ボール氏に3機種へのこだわりを聞いた

Campfire Audioの新イヤホン「ATLAS/COMET」&ヘッドホン「CASCADE」3機種一斉レビュー

公開日 2018/05/23 16:30 佐々木喜洋
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ーー COMETで採用した「Vented BA」とはどういうものでしょうか?

ケン・ボール氏: BAドライバー自体は一般的なものを使っていますが、ドライバー背面に空気の流れる穴を空けた独自のカスタム設計を施しています。他社では“オープンBA”と呼ばれているかもしれません。これは音響ダンパーとなってチューニングする要素にもなっていて、振動板をより大きく動かして、空気をより多く押すことができ、低域も少し拡げることができます。この音の良さを引き出すためには、チューブレス設計「T.A.E.C」のように、前方に空気室を持っていることが欠かせない要素となります。

“彗星”という意味を持つCOMET。速さを感じる、スリムでスマートなデザインを採用

ーー 従来モデル「ORION」(関連ニュース)も人気のあるシングルBAモデルでしたが、「T.A.E.C」は使われていませんでした。今回採用した理由はなぜでしょうか?

ケン・ボール氏: それは、ORIONとCOMETの採用するBAドライバーの種類の違いでもありますね。今回は中低域が得意なドライバーを採用しているので、高域を伸ばすことができる「T.A.E.C」を採用する必要があると感じたからです。結果、「T.A.E.C」による高域の伸長、ドライバーの得意とする中低域、そしてVented BA設計でさらに低域を拡げたことで、シングルドライバーながらワイドレンジを実現しました。

ーー COMETのケーブルについても教えてください。

ケン・ボール氏: 線材などは「POLARIS」と同じもので、新たにリモートコントローラーをつけました。COMETは手ごろな価格なので、スマートフォンと組み合わせる人が多いのではないかと考えたからです。電話会議などにも使えますよ。

スマホと組み合わせての使用を想定し、ケーブルにはリモコンを装備

CASCADEは、「開放型ヘッドホンのような音の良さを目指した」

ーー ありがとうございます。次にCampfire Audio初のヘッドホン「CASCADE」について伺います。そもそも、なぜヘッドホンを開発されたのでしょうか?

ケン・ボール氏: 私が元々ケーブルを作ったりヘッドホンの改造などをしていた頃から、いつか自分でイヤホン/ヘッドホン製品を作りたいと考えていて、イヤホン開発でノウハウも蓄積されたので、それを生かしながら約3年かけて製作しました。あの頃から考えると14年もかかりましたが、ヘッドホン開発はイヤホンに続いて私の夢だったのです。

ーー そうだったんですね。それでは、CASCADEの名前の由来と位置付けを教えてください。Campfire Audioヘッドホンのフラッグシップと考えて良いでしょうか?

Campfire Audio初のヘッドホン「CASCADE」

ケン・ボール氏: 名前は北西太平洋沿岸のカスケード山脈からきています(訳注:Campfire Audioの所在地の近傍)。製品の位置付けですが、CASCADEはまだ始まりに過ぎません。この上もあるかもしれないし、下もあるかもしれません。

ーー “ポータブル向け”として設計した理由はなぜでしょうか?

ケン・ボール氏: いい質問ですね。私がヘッドホンの改造などをしていた頃から、よく「何か良い密閉型のヘッドホンはないか?」という質問を受けていました。その時から『音の良い密閉型ヘッドホンを作りたい』と考えるようになったんです。もちろん、我々自身が電車移動時や旅行などに使えるポータブルヘッドホンが欲しかったというのもありますけどね。

「音の良い密閉型ヘッドホン開発」がKen氏の夢の一つだったという

ーー CASCADEにはリケーブル可能ですが、ケーブル端子には巨大なHD 800端子を採用されていますね。MMCX端子という選択肢はなかったのでしょうか?

ケン・ボール氏: HD 800端子を採用したのは、これも以前にケーブルの仕事をしていた時に、様々なタイプを試す中で最も頑丈で音質も良く、長持ちすると感じたからです。MMCX端子も悪くはないのですが、やはり抜けやすいという問題があると思います。ただ作り方次第ですね、我々のイヤホンで採用しているMMCX端子ならば問題ないかもしれません。

ーー CASCADEの音作りはどういった考え方で開発されたのでしょうか?遮音性にも優れていますが、技術的な特徴があれば教えてください。

ケン・ボール氏: 音作りは…良い音にすること、それだけです(笑)。加えると、ユニークで、他の何にも似ていない音にしたいと考えました。私自身、色んなジャンルの音楽を聴きますし、リファレンスも一つに限らず様々な音楽を使っています。今回はどんな音楽もエキサイティングに楽しく、なおかつ聴きやすい音を作ろうと取り組みました。

どんな音楽も聴きやすいだけでなく、楽しくなるような音作りを目指した

付属のアコースティックダンパーで中低域の調整も可能

ドライバーはカスタム設計をしており、空気の流れの制御もかなり複雑になっています。そうすることで、とにかく開放型の音の良さに近づけようと開発しました。アコースティックダンパーが付属しているのですが、これをイヤーパッドの内側に張り付けて中低域を調整できますので、さらに楽しめると思います。遮音性についても、とにかくしっかりと作ることだけで、特別なことはありません。

ーー 初のヘッドホン製品ということで、市場の反応はいかがでしょうか?

ケン・ボール氏: とても好評を得ていると感じています、実際、もう在庫がないんです(笑)。フォーラムを読んでも好意的な書き込みが多く、とても嬉しいです。

ーー 将来の計画についてですが...

ケン・ボール氏: (質問を遮って)それは最高機密です(笑)。構想としては、もっと大きなドライバーのものや、Bluetooth製品などを考えています。ノイズキャンセリングモデルも作るかもしれませんね。平面駆動はあまり考えにありません。

将来の予定「最高機密」。ワイヤレス製品の検討が進んでいる様子…?

ーー アンプ製品はどうですか?

ケン・ボール氏: Bluetoothヘッドホンに内蔵するタイプのアンプには興味がありますね。あまり詳しくは言えませんが、やるとしたらカスタムデザインのチップを使ったものになるでしょう。専用のアンプやDACなどを組み込み、とにかく音質の良いものにしたいです。それがBluetoothヘッドホンかBluetoothアダプターかは、まだ言えませんが…。

ーー なるほど、それでは次は“ワイヤレス”でしょうか…。製品の登場を期待しています。それでは最後に、日本のユーザーや市場の印象を教えてください。

ケン・ボール氏: 日本の皆さんは非常にオーディオに熱心で、特にパーソナルオーディオの分野ではパイオニア的存在だと思ってます。メーカーとしても、技術的に的確な評価をいただける市場であり、日本で成功するかどうかは非常に重要と考えています。これからも期待していてください。

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