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アナログ入力からヘッドホンまで徹底分析

価格やサイズに見合わぬ高品位サウンド − マランツ「HD-AMP1」に岩井喬が迫る

公開日 2015/12/11 18:48 岩井 喬
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ESS製DAC「ES9010K2M」にオリジナルフィルターを実装

さらにHD-AMP1のもう一つのポイントであるUSB-DAC機能についても見ていこう。搭載したのはESS製DACチップ「ES9010K2M」である。冒頭でも述べたようにマランツ・ブランドとしてESS製チップは初採用であるが、以前からチップの検証は行っていたそうで、その性能の良さも理解していたという。その一例として、一時期、同じグループであったマッキントッシュのSACDプレーヤーで「SABRE 32」を搭載したモデルがあり、その協力もしていたとのこと。そうした積み重ねもあり、今回採用したES9010K2Mの使いこなしに対しても様々なノウハウが生かされているという。

ESS製「ES9010K2M」を搭載

このES9010K2Mはチップ内に複数のデジタルフィルターが用意されているのだが、チップの持つ拡張性として、独自のデジタルフィルターを実装できることが特長でもある。そこでHD-AMP1では「SA-11S3」「NA-11S1」と同じ、マランツが長年培ってきた技術を反映させた、独自のアルゴリズムによるオリジナルデジタルフィルター「MMDF(Marantz Musical Digital Filtering)」を実装させたのだ。従来このデジタルフィルター用にDSPを別に設けていたため、回路も複雑化していたが、既存DACチップをマイコンで制御させることにより、コンパクト化に弾みがついたといえるのではないか。MMDFではストレートかつ音楽的な“Filter1”、アナログ的で滑らかな“Filter2”という2つのフィルター特性を用意した。

またES9010K2Mが電流出力型であることも選択のポイントであったそうで、マランツならではの音作りができる外付けのI/V変換回路を設けたほか、後段のポストフィルターにもHDAMとHDAM-SA2を使ったディスクリート回路を投入している。44.1kHz系、48kHz系それぞれに専用の超低位相雑音クリスタルによるデュアルクロックを採用したこと、さらに4つの高速デジタルアイソレーター素子を用いた7回路分のデジタル・アイソレーション・システムによって、徹底したノイズ低減と低ジッターを実現し、DAC内蔵によるメリットでもある高純度でS/N良いサウンドを獲得していることも本機の特長だ。

デジタル・アイソレーション・システムを含むデジタル基板

そしてヘッドホンアンプ部は「SA8005」に準じた構成で、ハイスルーレートオペアンプによる電圧増幅アンプとHDAM-SA2ディスクリート出力バッファーを積む。出力インピーダンスを従来の回路より低くすることで、サウンドの勢いを向上させたという。さらにゲイン切り替えは3段階のステップを用意し、負帰還量をコントロール。そのため各々のステップで音色傾向も変化するので、この点は使いこなしのポイントとなってくるだろう。

次ページ低域は余裕ある音伸びを聴かせ、高域にかけての解像度も見事

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