“攻め”の姿勢で北海道のオーディオシーンを盛り上げる

【専門店探訪】「北海道全域、お任せください!」 創業97年、CAVIN大阪屋の新挑戦を訊く

公開日 2025/08/06 06:35 筑井真奈
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

創業100年に迫る北海道の老舗オーディオショップ

北海道・札幌市にあるオーディオ&ホームシアター専門店のCAVIN大阪屋。1928年創業、今年で97年目を迎える老舗ショップである。当初は家電などエレクトロニクス全般を取り扱っていたが、現在はハイクオリティなオーディオや映像システムにより注力したお店となっている。現在は4代目社長の森田洋之さんが店を率いており、「攻め」の姿勢で北海道のオーディオ市場の活性化に尽力している。

札幌の観光名所、札幌市時計台のすぐそばに店を構えるCAVIN大阪屋

森田さんは2018年、コロナ禍の直前に先代の正二さんから社長を継いだ。「なんとか1年会社を持たせたぞ、と思ったらコロナがやってきて大変でした」という艱難辛苦は、昨年の専門店対談でもたっぷり語っていただいたが、厳しい試練をなんとか乗り越え、現在も札幌を拠点に「北海道全域、どこでも伺います!」と専門店ならではの強力なサポート体制で店を運営している。

四代目社長の森田洋之さん

北海道各地で試聴イベントを開催するのはCAVIN大阪屋の大きな特徴だ。「これまでも苫小牧や小樽、旭川などでイベントをやってきまして、大きな手応えを感じています。その場ですぐに商談とならなくても、その後お店に足を運んでいただいたり、ご友人を紹介いただいてご縁が広がったり。お店でお客様を待っているだけではなく、こちらから積極的に出かけていくことに大きな意味があると感じています」と森田さん。

 

1Fから4Fまで個性的なラインナップを取り揃える

CAVIN大阪屋のメインエリアは1Fから4Fまでの4フロアで、1Fは音楽ソフト&ネットワークオーディオ&ヘッドホン、ふらりと入りやすい店構えとなったいる。2Fがテレビ&本格ホームシアター。3Fと4FがHiFiオーディオとなっており、4Fは海外ブランドを中心によりハイグレードなシステムを揃えている。

1Fはソフトコーナーで、新品・中古のCDやレコードを取り扱う。特にジャズやクラシック、高音質盤に強い

4Fの試聴エリアは広くゆったりしており、部屋の3面それぞれに違ったシステムを展示している。一番奥にはなんとマーテンの「MINGUS QUINTET 2 Statement Edition」を設置。ペア1600万円超というスーパーハイエンドシステムで、アンプはスイスのCHプレシジョンを組み合わせる。「結構思い切った展示導入でしたが、これはもう、音に惚れちゃったんで」と森田さん。惚れちゃったものは仕方ない。正直記者もミュンヘン・ハイエンドでマーテンの艶やかさに惚れてきてしまった一人だから、その英断に大喝采。北海道のハイエンド・ファンにはぜひ聴いてほしい。隣にはアヴァロンにウィルソン・オーディオと垂涎のスピーカーシステムが並ぶ。

4Fのメイン試聴ルーム。マーテンの「MINGUS QUINTET 2 Statement Edition」ほか、垂涎のハイエンドシステムが並ぶ

もう一面にはクリプシュの「Cornwall IV」にタンノイ「Stirling IIILZ Special Edition」とホーンスピーカーがメイン。もう一面にはソナス・ファベールとTADのフロア型モデルが並んでおり、お客様の要望に合わせてさまざまな聴き比べも実現できる

クリプシュとタンノイのホーンスピーカー。エソテリックとマッキントッシュのアンプで駆動する

TADやアキュフェーズなどの国産ブランドのほか、ソナス・ファベール「Olympica Nova」も

中古の製品も充実している。「うちはもう店を始めて長いですから(笑)、ほんとにいろんな中古製品が入ってきますよ」。ざっとみただけでもJBLの「4343」にタンノイ「Canterbury/GR」、Bowers & Wilkinsの800シリーズと歴代の銘機たちが並ぶ。もちろんショップ側できちんとメンテナンスして次のお客様の元にお届けする。中古製品との出会いはまさに一期一会。中古品情報はSNSでも積極的に発信されているのでこちらもぜひチェックしてほしい。

3Fの展示スペース。ソナス・ファベールやJBL、B&Wの中核価格帯の製品が並ぶ

アナログ関連製品も充実。トーレンスにラックスマン、テクニクス、デノンと人気モデルを体験できる

昨年秋のQobuzの正式スタートも受け、いまはやはりネットワークオーディオの元気が良いそう。スフォルツァートやエソテリックのプレーヤーも展示されていたが、関連アクセサリーへの引き合いも強いそうだ。「ルーターやハブなど新しい提案も出てきていますよね。アクセサリーはリピーターのお客様になりますので、とてもありがたい存在です」。アクセサリー特化のイベントも企画を進めているという。

1Fのネットワークオーディオブース。ルーミンやDELA、スフォルツァート、エソテリックなどを展示

アナログ関連アクセサリーを購入に来る方も多い

だが一方で、ホームシアターの市場には難しさも感じている模様。大型プロジェクターは現在事実上ビクターが孤軍奮闘状態で、マルチチャンネルスピーカーもKEFやB&W、JBL、イクリプスなどある程度固定したブランドとなっている。おうちのリフォームなどの話はあっても、昨今の部材高騰の影響もあり、なかなか「ホームシアターを作ろう」というまでには至らない、というのが実感としてあるそうだ。

2Fの本格ホームシアターブース。天井にもスピーカーを取り付けており、ドルビーアトモス環境にも対応する

ビクターやソニーの大型プロジェクターの比較視聴も可能

そのため、テレビと合わせるハイクオリティなサウンドバーや、マランツなどのHDMI対応アンプなどリビングで楽しめるオーディオにも力を入れる。「テレビの音質のプラスアルファ、というのはみなさまとても興味を持ってくださいますよ」。マランツ「NR1200」の大ヒットも記憶に新しいが、大画面テレビを中心としたシステム提案は、これからのオーディオファンの大きな可能性として期待している。

大型テレビ+サウンドバーの組み合わせも積極的に提案

「スタッフにも、できる限りお客様のところに納品に伺い、きちんとセットアップのサポートをするよう指示を出しています」と言葉を強める。「お客様の選ばれた音を一緒に体験する、ということも大切ですし、お客様のシステムを知っていればこそ、よりよいご提案もできますよね。そう言ったことを地道にひとつずつ重ねていくことが結果的に大きな信頼に繋がっていくと感じています」と長期的な信頼構築が専門店の大きな役割だと訴える。

 

切磋琢磨することでオーディオの市場はもっと豊かになる

地元・札幌でも夏と秋に年2回オーディオショウを開催している。「昔は年末商戦、ボーナス商戦というのもありましたが、いまはそのタイミングで大きく動くことはありませんね。ただ、やはり秋は新製品のシーズンですから、今年も10月に北海道オーディオショウを企画しています」。

さらにショウだけではなく、その先のプランも計画している。「昨年、ショウのあと年末にかけて、規模は小さいですがブランドごとにしっかり聴いていただけるイベントを企画したところ、かなりよい反響がありました」。知ってもらう機会に加えて、じっくり聴いてもらう機会を改めて用意することで、オーディオファンの心をしっかり掴める、という言葉には深い実感がこもっていた。

JBLのスピーカー人気も根強い

社長でありながら森田さんのフットワークは軽い。秋のインターナショナルオーディオショウはいうまでもなく、6月に開催された「京都オーディオフェア」や他社のオーディオイベントなど全国に顔を出し、新しい取り組みを学び自社の提案として積極的に取り込んでいく。

「切磋琢磨することで、オーディオの市場はもっと豊かに、面白いものになっていくんです」。森田さんはかつてビクターの営業マンとして全国を回っており、売りの現場は知り尽くしている。社長就任6年目、全国のオーディオ専門店社長のなかでは、まだまだ若手と言われる年齢であろう。だが、言葉の端々から、次世代のオーディオシーンを担う確かな自信を感じられた。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク