車内環境の課題を逆手にとるボーズの新提案。日産オーラの車内で味わう極上のコンサート体験
ゴールデンウィーク期間中に開催されたクラシック音楽の一大祭典「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025」。日産自動車は、イベント期間限定で日産オーラ車内でプレミアムなオーディオ体験ができる「HALL AURA」を開催。そのカーオーディオシステムの音を体験してきた。

日産オーラは、「e-POWER」と呼ばれるガソリンエンジンでモーターを動かす電気を発電するハイブリッドシステムで、ワンランク上の“上質”を追求したコンパクトカー。オーディオシステムは、メーカーオプションで「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」が選択可能で、ヘッドレストにもスピーカーを配置した独自のサラウンド体験を提供する。さらに2枚合わせの遮音ガラスの採用や、車体そのものにも静音設計がなされており、走行時の静粛性にも配慮。まさに「車内コンサートホール」を実現できるカーオーディオシステムが搭載されているのだ。

HALL AURAでは、今回のイベントのために特別に録りおろされた3曲から、1曲を選んで体験できる。ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025でも演奏を披露したトロンボーン奏者の中川英二郎さんによる「Risorgimento」、ヴァイオリニストの山根一仁さんによる「J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番より プレリュード」、チェリストの横坂源さんによる「J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番より プレリュード」の3曲である。

日産オーラ車内を見回してみると、左右のピラーに25mmトゥイーター、左右ドアに165mmのワイドレンジスピーカーが搭載されているのが見える。さらに、運転席と助手席のヘッドレストの左右に60mmのスピーカーが搭載されていることが大きな特徴。全部で8基のスピーカーを、DSP内蔵のデジタルアンプにて駆動しているという。


日産自動車 日本マーケティング本部の富岡 保さんによると、「日産とボーズは、35年以上にもわたるパートナーシップを継続してきました」と胸を張る。車内におけるオーディオの環境は、運転席から左右非対称な位置にスピーカーを配置しなければならないこと、またガラスなど素材による反射の影響を考慮しなければならない点など、良い音を追求するためにはさまざまな課題がある。

今回の「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」は、“ヘッドレスト内部”にスピーカーを埋め込むという新しいアイデアによって、よりパーソナルで良質、臨場感豊かな体験を提供する新しい取り組みとなっている。
HALL AURAにて、特別に3曲をじっくり体験させてもらったが、ダッシュボード上に非常に自然なサウンドステージが再現されていて驚く。ヘッドレストにスピーカーが配置されていることで、“わざとらしい”までの回り込みが演出されているのか、と身構えていたが、むしろ自然で柔らかな響きが日産オーラの室内を満たしてくれる。

ヘッドレスト近くに耳を寄せてみると、確かに音は出ているが、直接音というよりもアンビエンス感、より広がり感を出すようなサウンドが再生されていると感じられた。たとえばコンサートホールで音楽を鑑賞する場合も、演者の音はステージ、つまり前方から発せられるが、実際に人間の耳に届く音は、ホールの壁や天井からの反射を踏まえた360度方向からの音となる。そういった自然なホールトーンを車内でも聴かせたい、という思いが感じられた。
全般的な音質傾向としてはつややかでナチュラル、さらりとした清涼感あるサウンド。特に山根一仁さんの無伴奏ソナタは、楽器1本というシンプルな編成だからこそ聴かせたいヴァイオリンのふくよかさ、音色の複雑さで耳を潤してくれる。人の声の音域に近いと言われるチェロも、息遣いまで感じられるような空気感も印象的。一方で低域の多少の鈍さは課題で、車室内での低域再現の難しさを感じられた。
富岡さんも「車内でも良質な音を求めたいと考えるお客様は非常に多いです」と言葉を強める。実際、「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」は、カーナビやプロパイロット(運転支援システム)などとセットのオプションとなっているという理由もあるが、8割近いお客様がこちらのオプションを選択しているという。
「ヘッドレストにスピーカーを配置するために、シートサプライヤーとも協力して、頭を乗せてもゴツゴツしない、快適な乗せ心地も追求しました」と富岡さん。こういった細やかな配慮は自動車メーカーだからこそ実現できるこだわりである。
自動車ならではのオーディオ設計の難しさを、ヘッドレストを活用するとことでより良質な体験に変える、日産オーラ✕ボーズのアイデア力にも感嘆した。
トピック