1/15にダイナミックオーディオ5555 H.A.L.IIIにて開催

ネットワークオーディオの最先端、国内外6ブランドが集結した試聴イベントレポート

2022/01/17 ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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■第4部 SFORZATO 〜独自のアイデアと技術でネットワーク再生を革新する

第4部に登場するのは国産ハイエンドブランドとして唯一無二の存在感を放つスフォルツァート。今回は最新ネットワークトランスポート「DST-Lepus」に加え、初公開となる「DST-Lyra」(250,800円/税込)とマスタークロックジェネレーター「PMC-Libra」(99,000円/税込)が登場。昨今スフォルツァートが力を入れる「ゼロリンク」(SOULNOTEとの共同開発)を中心に解説を行なった。

まずはゼロリンクの紹介ということで、fidataのサーバーからSOULNOTEの「S-3」をUSBケーブルで直接接続した場合と、fidata→(USBケーブル)→「DST-Lyra」→(ゼロリンク)→「S-3」による音の聴き比べを実施。ゼロリンク接続では、サウンドステージの上下方向がさらに広がり、非常に伸びやかで溌剌としたサウンドに変化したように感じられた。

「DST-Lyra」は、USBで受けてゼロリンクで出力するという珍しいタイプのネットワークトランスポート(DDコンバーター)

続けては、一つ上のクラスの「DST-Lepus」を使用し、fidata→(LANケーブル)→「DST-Lepus」→(ゼロリンク)→「S-3」という組み合わせで試聴。このクラスになるとスフォルツァートの強みがグッと前面に出てきて、高S/Nかつ豊かな中域と安定した低域再生により、さらに情感豊かなサウンドが引き出されてくる。

スフォルツァートの「DST-Lepus」。現在の再生状況(LANで受けてゼロリンクで出力)がフロントディスプレイに表示される

さらにDirettaとUPnPの比較、マスタークロック「PMC-Libra」の有無の比較といったマニアックなテーマも追求。「PMC-Libra」は10万円を切る価格ながら、陰影や立体感が俄然クオリティアップ。スフォルツァートがクロックを重視する理由も頷ける音質向上が感じられた。

税込10万円を切る小型マスタークロック「PMC-Libra」。サイズはコンパクトだが効果は絶大!

さらに小俣氏によると、同社のネットワークプレーヤー製品について、年内にはTIDAL、Qobuz、Amazon music HDに対応できる予定だという。今後の展開も楽しみだ。

■第5部 SOULNOTE 〜音楽を生き生きと自由に歌わせる開発思想

第五部はSOULNOTEの時間。同社の名物エンジニアである加藤秀樹氏が登場、加藤節全開でかっ飛ばしながら、SOULNOTEのネットワーク再生システム「ZEUS」(ゼウス)を紹介した。

SOULNOTEの「ZEUS」。ラック最上段が「Z-3」、中段が「D-3」。最下段はSACDプレーヤーの「S-3」(スフォルツァートの時間にDACとして使用)となっている

ZEUSは、ネットワークトランスポート「Z-3」、DAコンバーター「D-3」、クロックジェネレーター「X-3」とクロックケーブルをセットにしたシステムのこと。音源には非常に空間表現の優れたMA recordingsレーベルから、Sera una Noche「Malena」を使用。まさに「YGが歌っている」とでも言いたくなるような、音楽そのものが持つ踊り出しそうな楽しい雰囲気をそのまま描き出してくれる。

加藤氏はSOULNOTE製品について「音作りはしません」と宣言しており、あくまでソースに含まれた音楽情報を忠実に引き出すことをテーマに掲げて製品開発を行なっているという。そのためのこだわりのひとつに、筐体を強固に固定しない、「ガタガタ」の状態のままにしていることが挙げられると説く。

音作りにかける熱いパッションを語る加藤氏

実際に、天板と側面の間に数センチ角程度の段ボールを挟んで固定した状態と聴き比べると、確かに部屋中に広がるエコーが萎んでしまったかのようで、音楽がすっと寂しくなってしまう。段ボールを外すと再び豊かなエコーが再現され、音楽が自由に生き生きと鳴り出してくる。

SOULNOTE製品の開発にあたり、加藤氏は、これまでの常識と真逆のことでも、あくまで出音を追求した結果としての判断であることを強調。「心にぐわーっと来るかなんです!」と開発にかける熱いパッションを語ってくれた。

■第6部 オリオスペック&DELA 〜総合音楽ソフトroonの楽しみ

最終部はオリオスペック&DELAの時間。DELAのオーディオサーバーがroon readyに対応したことを受け、DELAとroonのこれまでの進化、そしてファイル再生の未来を考える時間となった。

DELAのオーディオサーバー「N10」がroon readyに対応

オリオスペックの酒井氏はroonの魅力について、ローカル音源とストリーミング音源をシームレスに再生できることに加え、ミュージシャンや録音データベースを紐付けし、さまざまな形で再生できることにあると語る。島氏もroonの面白さにいち早く目をつけ、特に2018年以降音質面が大幅にアップデートされてからは、ショップでも強力に提案し続けてきたという。

「Nucleus」の総販売店としても知られるオリオスペックの酒井氏

DELAは、最新のファームウェアアップデートv4.3によりroon readyに対応。DELAをサーバーとしてだけではなく、roonからみたネットワークプレーヤー(RAATで送り出す)としても使用できるようになる。今回はアキュフェーズの「DC-1000」をDAコンバーターとして使用して試聴を行なった。

roonアプリからroon readyの出力先として「N10」が選べるようになる

情家みえの「Caravan」では、濃厚な女性ヴォーカルの表情が豊かで、腕利きミュージシャンたちの細やかな表現テクニックも非常に良く見えてくる。roon readyに対応することの音質的なメリットとして、データ再生にまつわる機能を分散することで、それぞれの機材の負荷を下げ、より精度の高いデータ再生が実現できることが挙げられる。結果として、より細かなニュアンスまで引き出されてくる印象だ。

ここでは、DELAをOpenHomeで利用した場合とroonとの比較試聴も実施。川村尚子の「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ」をroonで試聴すると、ピアノのタッチがさらに鮮明に見えてくる印象を受けた。指先の動きだけではなく、腕や身体全体の筋肉の躍動までも伝わってくる感じで、ディテール豊かなサウンドが自然と耳に飛び込んでくる。

酒井氏は昨今のネットワーク再生の状況について、「以前はストリーミング音源は、自分でダウンロードした音源に比べてあまりよくないところもありましたが、今やかなりいいところまで音質が上がってきています」とコメント。ネットワーク再生が安定してきたことで、音質に対する追求が多方面に生まれてきており、「今こそファイル再生を実現する絶好のタイミングです!」と力を込める。



イベント全体を通して感じたこととして、ハイエンドのネットワークプレーヤーにおいては特に、さらにハイスピード、かつリアリティの豊かさが追求されている方向に向かっているように感じられた。いわゆる“アナログ的”という言葉では収まりきらない、高解像度かつ精緻な音場表現、ノイズフロアの低さと立体的なステージングなど、デジタルだからこそ実現できる世界がまたひとつ奥に深まったような印象だ。

試聴音源も、いわゆる“ハイレゾ”だけではなく、CDリッピング音源やストリーミング音源も多種多様に活用されていた。CDクオリティであっても、音楽家の世界観を強烈に描き出すもの、あるいは録音のこだわりを感じさせるものなど、単にスペックの良し悪しだけでは捉えきれない再生芸術の豊かさを感じることもできた。

デジタル再生では、古いアルバムも新しい楽曲も、洋の東西を問わず、数多のアーティストの音源をシームレスに再生し、さまざまな角度から捉え直すことができるのも大きな魅力のひとつである。そういったファイル再生の最先端を追い続けるH.A.L.III、次はどんな仕掛けでもってネットワークオーディオを探求するのか、今から楽しみだ。

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