全回路を新規設計

RMEの新USB-DAC「Babyface Pro」発表会レポート - 開発トップが技術背景を解説

公開日 2015/07/29 19:39 編集部:小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
シンタックスジャパンは、RMEのオーディオインターフェース/USB-DAC新製品「Babyface Pro」の製品発表会を開催した。

Babyface Pro

Babyface Proは、2011年に登場したUSBバスパワー対応のUSBオーディオインターフェース/DAC「Babyface」の後継モデル。旧モデルのコンセプトは踏襲しつつ、内部の回路や筐体は全て新規設計した。192kHz/24bitまでのPCMに対応する点はこれまでの同社ラインナップと同様。価格は99,800円(税抜)。8月18日の発売を予定している。

発表会の冒頭ではシンタックスジャパンの代表取締役である村井社長が挨拶。「Babyfaceは2011年の登場以来、累計で3,000台近くが出荷され、このジャンルを築いた製品となりました。Babyface Proはその後継モデルということで、驚異的なUSBバスパワーをはじめ、モバイルオーディオインターフェースのあるべき姿をさらに突き進めたモデルです」と本機を紹介した。

株式会社シンタックスジャパン 代表取締役 村井清二氏

発表会にはゲストとして、RMEの創業者であり開発トップでもあるMatthias Carstens(マティアス・カーストン)氏、RMEのプロダクト・マネージャーであるMax Holtmann(マックス・ホルトマン)氏が登場。Babyface Proの詳細を自ら紹介した。

RME Matthias Carstens氏

RME Max Holtmann氏

■アルミ削り出し筐体を採用

Babyface Proは、旧Babyfaceより一回り大きな筐体で、新たにアルミ削り出しボディを採用した(旧モデルはアルミダイキャスト製)。ホルトマン氏は「Babyface Proはパーツ数が旧モデル比で30%増えているので、より堅牢なボディが必要だったのです」とコメント。削り出しは0.05mm精度で行われており、USB端子の穴の嵌合も強固になっている。

新たに本体背面にXLR端子を搭載

USB端子は側面に搭載。付属ケーブルの端子部のL字型だ

表面の仕上げは「Steel Ball Blasting」を採用する。Steel Ball Blastingとは、削り出しアルミの表面に鉄の玉を当てて仕上げるというもの。オーディオ機器ではヘアラインやサンドブラスティングという仕上げが多い中で、Steel Ball Blastingを採用した理由については「鉄球を表面に当てることでアルミニウムが圧縮され強くなるので、傷つきにくく、かつ美しい仕上げが可能になる」と説明していた。

なお、Steel Ball Blastingで仕上げられた筐体上側はもちろん、筐体底面部もアルミ削り出しとなる。底面には新たに三脚などに設置するための取り付け穴が施された。

Babyface Pro(右)と旧Babyface(左)

基本デザインはBabyfaceを踏襲しているが、新たに4つのボタンを追加。旧モデルは3ボタンによる構成としていたが、、逆に操作が複雑になってしまっていた点を反省し、新モデルではボタンを増やして操作性を向上させた。一方で直感的な操作性は損なわない様に意識したとのこと。また、ボリュームを表示するLEDも従来の1系統から2系統に増えた。マティアス氏は「液晶ディスプレイを追加しないのかと言われることもありますが、コストだけでなく視認性の面でもLEDが優れていると判断しました。この会場の1番後ろの方にも、私の手元のBabyface ProのLEDが判別できますよね? 液晶だとこうはいきません」と話していた。

■最新モデルでなぜUSB2.0を採用するのか?

Babyface Proは、旧Babyfaceに引き続き、インターフェースにUSB2.0を採用している。なぜThunderboltやUSB3.0といったより新しい規格を採用しなかったのだろうか。

Babyface Proをテーマにトークセッション行う両氏

「Babyface ProでもUSB2.0を採用したのは必然です。Babyfaceはチャンネル数がそれほど多くないので、伝送バンドの幅を考えればUSB2.0で問題ないのです。USB2.0でも最大70チャンネルは伝送できますから」(マティアス氏)。

Thunderboltについては、コスト面でも問題があるとのこと。USB3.0については「USB2.0の方がより優れていると考えています」とマティアス氏。「RMEはUSB2.0において、USB3.0と同等の低レイテンシーを実現してきたのです。その意味で、コストの面でも、各OSでの汎用性を考えても、Babyface Proに搭載するにはUSB2.0の方が適しているのです」とも説明していた。

Matthias氏はRMEの創始者であり、現在も開発トップを務める

ちなみに、レイテンシーについてREMは非常に高い技術を持っている。規格だけで比較すればThunderboltはより低レイテンシーだが、Babyface Proは高速のA/D変換を実現しており、Thunderboltオーディオインターフェースに負けない低レイテンシーを実現しているという。

回路を全て新規設計したBabyface Proは、D/A・A/D部も旧モデルより性能を向上。RMEの業務機の最上位クラス「ADI-8DS MkIII」と同等のD/A・A/D部を搭載している。

Max Holtmann氏は旧Babyfaceからの進化ポイントを解説

Babyface ProはUSBバスパワーの性能も大幅に向上させたとのこと。ホルトマン氏は「旧Babyfaceでは電源供給をどう活かすかという意味で、やや納得がいかなかった部分があった」とコメント。Babyface Proについては回路から全て見直しを図り、USBバスパワーにおける完璧な動作が実現できたという。

本体にXLR入出力端子を搭載

旧Babyfaceはブレイクアウトケーブルを使って各種入出力ケーブルとの接続を行っていたが、オーディオファンから「なんとかならないだろうか」という声もあったという。そこでBabyface Proでは、本体にXLRの入出力端子を搭載した。

マイクプリアンプは2系統を搭載。USBバスパワーの給電性能が向上したため、さらなる音質向上が実現できたとのこと。またADATポートも搭載しているので、同社製のマイクプリアンプ「XTC」を接続すれば合計10本のマイクが使用できる。またMIDIポートにはブレイクアウトケーブルが接続でき、ADATポートに接続した外部機器をコントロールすることができる。

2つのヘッドホン端子を搭載。Steady Clockは「III」を初搭載

Babyface Proはヘッドホン出力を2つ搭載。旧モデル比で出力信号が6dB大きく、品質も向上させた。1つはステレオ標準端子、もう1つはステレオミニ端子となる。出力はステレオ標準端子が10Ω、ステレオミニ端子が2Ωと、ステレオミニ端子はローインピーダンスのヘッドホンにも対応。カスタムIEMなどとの組み合わせも考慮したという。なお、2つの出力の音調調整は連動している。

RME独自のクロック技術「SteadyClock」は、全ラインナップで初となる「III」を搭載。さらなる高精度とロージッターを実現した。マティアス氏によれば、ジッター抑制値は、旧モデルが30dB程度(2.4kHz)のに対し、本機は50〜60dBを実現したという。なお、これまでSteadyClockの「II」という名称が公にされたことはなかったが、「II」は「Fireface UFX」のみに搭載されていたとのことだ。

Babyface Proの内部構成イメージ

会場にはコンシューマー向けRME製品が展示されていた

D/Aコンバーターのチップは旭化成「AK4413」を搭載。A/Dコンバーターは同「AK5388」を採用している。

Babyfaceに引き続き、iOSデバイスとの接続を可能にする「ClassCompliant」モードを搭載。新モデルでは、LEDがClassCompliantモードを示す「CC」、PCとの接続する通常モードを示す「PC」と表示。現在どちらのモードを使用しているのかを認識しやすくなった。

専用のハードケースが付属する

Babyface Proは後部にXLR端子が搭載されたため、USB-B端子は本体右側面に搭載。合わせて付属のUSBケーブルは、USB-B側の端子部がL字シェイプとなっている。また、旧モデルではソフトケースが付属したが、Babyface Proでは専用ハードケースが付属する。

なお、マティアス・カーストン氏、マックス・ホルトマン氏へインタビューも行う予定。その模様は後日お伝えしたい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック