新たな境地に至った傑作

「最高傑作かもしれない」 − 辛島文雄 7年ぶりのソロピアノ作『エブリシング・アイ・ラヴ』

公開日 2015/04/21 15:46 季刊・オーディオアクセサリー編集部/季刊analog編集部
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「Everything I Love/辛島文雄」(ピットインレーベルILM-0004 ¥2,500 + 税、発売・販売元:株式会社ピットインミュージック、配給:株式会社ディスクユニオン)
analog誌、Net Audio誌にも登場いただいた辛島文雄は、長いキャリアを持ち、世界的なミュージシャンとの共演を果たしてきた名ジャズピアニストである。

最近は息のあったレギュラートリオを中心に幅広く演奏活躍を続け、アルバムも順調に発売をしてきたが、待望の7年ぶりのソロピアノアルバムが完成し、4月8日に発売された。

本人曰く「最高傑作かもしれない」という本作『エブリシング・アイ・ラヴ』は、トリオによる前作に引き続き、「沖縄市民小劇場あしびな〜」 におけるホール録音であり、横山彼得(ペテロ)調律師とともに音づくりを探究した作品となっている。

収録された12曲は、本人の曲も含め、本人が好きな曲だけを選択。見事な演奏が展開されている。その魂が込められ緩急を巧みに使ったダイナミックな奏法は、まさに辛島文雄のロマンティストな気質をダイレクトに表現しているように思える。

「昔と比べてピアノ観、音楽観が変わって、こだわっていたことが溶けてきた。そうするとかつて見えなかったものが見え、思ってもみなかったピアノの世界が開けた。50歳で弾けなかったことが66歳で弾けたんだろうね。でも70歳になったら、また別の世界があるだろうからもちろんこれで終わりじゃないけどね」(ライナーノーツより)

このように新たな境地に至った辛島文雄の演奏は実に伸び伸びしており、聴いていて気持ちよくなってしまうのである。

また、ピアノの一音一音が、驚くほどしっかりと聴き取れる優れた録音となっている点も見逃せない。まさに快心のソロピアノアルバムといえるだろう。音楽ファン、オーディオファンに聴いていただきたい秀作である。

【収録曲】
1. エブリシング・アイ・ラヴ Everything I Love(Cole Porter)
2. イパネマの娘 The Girl From Ipanema(Antonio Carlos Jobim)
3. ソリティア Solitaire(King Guion)
4. ブリリアント・ダークネス Brilliant Darkness(Fumio Krashima)
5. 愚かなりしわが心 My Foolish Heart(Victor Young)
6. リコーダ・ミー Recorda Me(Joe Henderson)
7. レイト・オータム Late Autumn(Fumio Krashima)
8. わが心は歌う How My Heart Sings(Earl Zindars)
9. マライカ Malaika(Traditional)
10. トイズ Toys(Herbie Hancock)
11. これからの人生 What Are You Doing the Rest of Your Life(Michel Legrand)
12. 君を想いて I Thought About You(Jimmy Van Heusen)

<辛島文雄プロフィール>
1948 年、大分県生まれ。1978 年のエルビン・ジョーンズ(Ds)との共演を機 に、1980 年から 6 年間にわたってエルビン・ジョーンズ=ジャズマシーンに参加し、アメリカ、ヨーロッパを中心とした世界各国のジャズシーンに登場、これにより国際的ピアニストとしての地位を築く。これまで28枚のリーダー・ア ルバムを発表。近年ではジャック・ディジョネット(Ds)との共演による「グ レイト・タイム」、イタリアの最高級ピアノとして名高いファツィオリを使用し たスタンダード・ソロ「ムーン・リヴァー」、エルビン・ジョーンズをトリビュートした「E. J. ブルース 辛島文雄 meets 森山威男」、20年振りにクインテ ットによる「サマータイム」、2014 年に新生トリオによる「ア・タイム・フォ ー・ラヴ」をリリースしている。エルビン・ジョーンズ(Ds)、トニー・ウイリ アムス(Ds)、ジャック・ディジョネット(Ds)の三大ドラマーとの共演歴を持ち、彼らとの共演を収めたそれぞれの作品を残している。現在は自己のトリオやクインテットを中心に活動中。第 31 回(2005 年度)南里文雄賞を受賞。 日本を代表するジャズピアニストの1人である。

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