山之内 正の独「HIGH END 2010」レポート

5年ぶりに登場したTANNOYハイエンドモデル「KINGDOM ROYAL」の偉容

2010/05/10 山之内 正
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ソース機器とアンプはエソテリックで統一。余裕のある音圧感で広大な部屋を満たした
9日までミュンヘンで開催された「HIGHEND 2010」ではいくつか重要な製品が公開されたが、ハイエンドスピーカーではTANNOY「KINGDOM ROYAL」が大きな話題を集めた。今回はまだ正式発表ではなく価格も公開されていないが、仕上がりは限りなく製品版に近いという印象を受ける。

同軸ドライバーの上下にスーパートゥイーターとスーパーウーファーを配した本格的な4ウェイ構成を採用

異種素材を組み合わせたハイブドリッド仕上げのキャビネットを採用。側面はバーチ合板の美しい木目が印象的だ

KINGDOMシリーズの新製品が登場するのはほぼ5年ぶりのことだ。2006年に販売が終了したKINGDOM15は、25cmデュアルコンセントリックドライバーを中心にスーパーウーファーとスーパートゥイーターを加えた本格4ウェイ構成を採用、初代KINGDOMよりはコンパクトとはいえ、その堂々たる外観が強烈な存在感を放っていた。同軸ユニットならではの自然な定位を生かしつつワイドレンジ特性を実現したサウンドはいまも強い印象を残している。

今回登場したKINGDOM ROYALのサイズはそのKINGDOM 15に近く(1275x585x600)、スーパーウーファーは38cm口径、同軸ドライバーは新開発の30cmユニットを積む。異種素材を組み合わせたキャビネットの形状が大きくラウンドしているため、従来のKINGDOMとは印象がかなり異なるが、天然材を配したグリルを取り付けると、重厚で落ち着いた雰囲気を巧みに継承していることがわかる。

新開発の同軸ドライバーのトゥイーターは3インチ径のアルミ合金製振動板(クライオ処理済み)を採用し、1.4kgの巨大なフェライトマグネットを搭載する。会場で現物を見たが、その迫力ある外見に圧倒された。このトゥイーターと30cmミッドウーファーを組み合わせることで、音楽の重要な帯域をほぼカバーしてしまう。ローエンドは38cmウーファー(ポートのチューニングは15Hz!)、超高域はセラミックコーティングを施したマグネシウム振動板を投入したスーパートゥイーターが受け持ち、24Hzから54kHz(-6dB)というワイドレンジ再生を実現。能率は96dB(2.83V@1m)と高い数値を確保している。

グリルのデザインも一新されたが、TANNOYならではの落ち着いた配色が非常に美しい

3インチの大口径トゥイーターの振動板と巨大な磁気回路。マグネットだけで1.4kgという破格のサイズだ

会場で聴いたKINGDOM ROYALのサウンドは、堂々たるスケール感で奥深いステージを再現し、ダイナミックレンジの限界を感じさせない。暗騒音の帯域まで伸びたローエンドは非常にS/Nが優れていて、演奏会場の空気感を生々しく再現。声や弦楽器の音色にはなめらかさと上質な光沢感が感じられ、トゥイーターとスーパートゥイータの音域がスムーズにつながっていることを実感した。

正式発表前なので発売時期も未定だが、関係者のコメントから判断して、年内には日本でも発売できるのではないかと思う。

(山之内 正)

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