【岩井喬のA&Vフェスタ レポート(2)】デジタルドメイン/花田スピーカー/クボテック/ファオン

2008/02/27
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ライターの岩井喬氏が「A&Vフェスタ2008」会場で見つけた注目の製品・展示を振り返る。今回はデジタルドメイン、花田スピーカー研究所、クボテック、ファオンの展示をご紹介しよう。

■デジタルドメイン


デジタルドメインのブース
詳細は発表されていないが、その風貌から音響学の権威であったオルソン博士が設計したRCA社「LC1A」をベースにしたと思われる、38cm同軸2ウェイユニットとウーファーを積んだ大型試作スピーカーが目を引くデジタルドメインの出展では、新型SITを搭載したパワーアンプ「B-1a」が参考出品されていた。


SIT(静電誘導トランジスタ)
SIT(静電誘導トランジスタ)とは真空管の3極管に近い電気的特性を持つトランジスターとして70年代ヤマハやソニーから数機種アンプが発表されていた(当時の名称はV-FET)。この「B-1a」は第一世代SITを搭載したヤマハ「B-1」を設計した横山健司氏へ、新しいSITを使った設計を改めて依頼した結果生まれたというOTLアンプだ。昨年復活したマクソニック・ブランドのアンプに搭載されたSRCC製SITとの関連性は不明であるが、純国産半導体であるSITを搭載するアンプが増えることに関しては、オーディオ業界にとっても大変意義深いことではなかろうか。製品化が待ち遠しい。またこの「B-1a」は同時に参考出品されていたマルチビット高速ラダーDACモジュール内蔵の大型DAコンバーター「D-1」とともに花田スピーカー研究所のブースでも用いられており、新方式のオーディオ・ベンチャー企業間の連携が新しい潮流を予感させる。

■花田スピーカー研究所


ボイスコイル・ダイアフラム・スピーカー「7号機」
スピーカーのボイスコイルを振動板と一体化させた独自構造を持つユニットの製造・研究を続けている花田スピーカー研究所の出展では、前回の『A&Vフェスタ2006』で参考出品されていた、ボイスコイル・ダイアフラム・スピーカーをさらに改良した「7号機」のデモを行っていた。

通常のスピーカーユニットの振動板構造をよりシンプルにして、振動伝播の過程で発生するロスも抑えた方式であり、アバレの少ないフラットな特性感を持つ。同軸2ウェイ平面スピーカーとして人気のあったテクニクス「SB-RX70」を彷彿とさせるスタイルが印象的だ。SITアンプとの組み合わせで素直な音色を聞かせていたが、まだまだこれから進化していくであろう「7号機」のサウンドは、未来を感じさせるもので、こちらの市販化も大変気になるところである。

■クボテック


HANIWAの試聴デモ
医療用機器などの分野で活躍する同社が、独自の成型技術を用いた大型ホーン・スピーカー・システムを発表し、オーディオ業界へ電撃的に参入してから数年が経つ。その時の大型スピーカーの外観が埴輪を彷彿とさせるものであったことも手伝い、大変強いインパクトを放つ存在であった。同社はこの何年の間に“HANIWA”ラインナップを充実させ、ついに音の入口から出口までをシステムで完結させることができたのだ。

今回の出展では試聴エリアで終日システムのデモ演奏が実施されていた。HANIWAシステムならではの独特なホーン形状を持つスピーカーは、一番小さい2ウェイの「HSP2W06」(ペア/¥2,940,000・税込)が設置されており、中高域用にEL34シングル・3極管接続パワーアンプ「HAMP05」(¥315,000・税込)を、低域用にKT88プッシュプル・UL接続モノラル・パワーアンプ「HAMP30」(ペア/¥525,000・税込)を用いた管球式マルチアンプシステムを構築。さらにカンチレバーにボロンを用い、0.8Ωという低インピーダンスを実現したMCカートリッジ「HCTR01」(¥472,500・税込)なども試聴できる本格的な出展となっていた。そのサウンドは解像感十分でありながらも滑らかなもので、じっくり腰を据えて“最新”のアナログ・サウンドに耳を傾ける来場者の姿も多かった。

■ファオン


スピーカー「TENAM」

トロンボーン演奏との共演デモ
ファオンのブースでは民族系打楽器のようなスタイルを持つ、独特なスピーカー「TENAM」のデモが行われていた。ベトナム伝統の竹細工によるキャビネットとKOC社製ネオジウムマグネット・6Nボイスコイル線採用ユニット搭載という本格的な構成。ブース内デモではジャズのインスツールメンタルなソースを管球アンプに繋いだ「TENAM」で再生し、生のトロンボーン演奏と共演させるという、ミニライブが展開され、いつも多くのギャラリーで溢れていた。鮮度の違うサウンドの融合であるにも拘らず、「TENAM」から流れるサウンドは非常に立体的、かつ音場豊かな広がりを持つものであり、生楽器とのハーモニーも自然で心地良いものとなっていた。


(岩井喬)

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