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ロングインタビュー

マランツのサウンドマネージャー澤田氏“最後の作品”。「HD-AMP1」開発秘話

2016/01/21 構成:編集部 小澤貴信
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澤田氏の考えるスイッチングアンプの長所とは?

−− お話を一度アンプに戻させていただきます。HD-AMP1は、アナログアンプの良さと、スイッチングアンプのスペースファクターや効率が融合されているということがよくわかりました。ここで気になったのは、スイッチングアンプだけを切り出して考えたとき、澤田さんが考える「スイッチングアンプならではの魅力」は何かということなのですが。

ラックに収められた「HD-AMP1」。スイッチングアンプだからこそ可能なサイズを実現している

澤田氏 スイッチングアンプには、アナログアンプにはない長所がいくつかあります。まずウォーミングアップがほとんど必要ないこと。アナログアンプは仕掛けが大きくなるほど、本来の音質で鳴らせるまでに時間がかかります。大型のパワーアンプでは、1日鳴らさないと本調子にならないということもあるでしょう。しかし、スイッチングアンプはこうしたウォーミングアップを行わなくても、電源を入れてすぐに本来のサウンドで鳴らせます。もちろん時間を経過することで多少の変化はありますが、アナログアンプのそれとはまったくちがいます。

−− はい。

澤田氏 それから、音の音場定位がいとも簡単に再現できることが挙げられるでしょう。アナログというのは良くも悪くもアナログで、ある一定のサイズの中でスケール感やエネルギーを出そうとすると、スピード感や細やかさに欠けてくる。一方でディテールに振ると、今度はエネルギー感に欠ける、というようなことがよくあります。アナログアンプはこうした“裏腹な要素”を必ず含むのです。

一方で、スイッチングアンプには“裏腹な要素”がほとんど関係ありません。全てパーフェクトに、というわけにはいかないですが、きれいに整理して音を出します。“馬力はあるけど見通しがいまいちだ”とか、“スピード感があるけれどぐっとくるものがない”とか、そういうことがあまりないのです。

これらのスイッチングアンプの明快な魅力は、デスクトップオーディオにはとっては利点ではないでしょうか。大型アンプのように「火を入れて1時間、そろそろ音が澄んできた」なんてデスクトップオーディオでは冗談ではないでしょう。

HD-AMP1の発表会時に用意された、デスクトップでの使用イメージ

−− デスクトップオーディオとは省スペースやライフスタイルとの調和も重要になりますから、「火を入れて1時間」という価値観とはちょっと相反します(笑)。ところで、フルサイズのHi-Fiコンポーネントで、スイッチングアンプを使うメリットというのはあるのでしょうか。今回の成果を反映した、もっと大型のスイッチングアンプを期待する方もいらっしゃるかと思います。

澤田氏 こうした特徴を活かせるメリットがあって、それが製品企画にマッチするならば、面白い製品ができるでしょう。例えば、フルサイズで大きなパワーを持っているが、ウォーミングアップの必要なく鳴らし切れるアンプというのはありかもしれません。昔からのオーディオファンには嫌われそうですが(笑)。

それからもうひとつ、HD-AMP1におけるスイッチングアンプならではの長所を挙げておきましょう。アナログアンプでボリュームを上げていくと、そろそろアンプが苦しくなっているというのが音に現れます。その上でさらに音量を上げていけば、いずれ保護回路が働きます。Hypexの場合、保護回路が働く直前まで音量がストレスなく軽快に上がっていきます。そして限界がくるとパタッと落ちる。スペック上限の直前まで、アナログ的なストレスを感じることなく鳴らし切れることはスイッチングアンプならではの長所ですし、DSPなどの調整が働かないHypexにおいてはなおさらです。この点はウォーミングアップが不要な点と同様ですね。

−−あまり気を遣わないでシンプルに音楽を楽しめることは素晴らしいことだと思います。

澤田氏 スイッチングアンプは、コントロールにDSPを使うなどいろいろなことができますが、HD-AMP1では最大限シンプルに、本格的なアンプを目指しました。だからこそ、スイッチングアンプを使っても根本の考え方は何も変わりません。

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