ハイセンス本社幹部「日本市場は非常に重要」。W杯・RGB MiniLEDテレビ…成長戦略のキーポイントは?
2026/07/01
フラグシップとなるRGB Mini LEDバックライト搭載機「RGB UXSシリーズ」を始めとするテレビ各種を日本でも積極的に展開するハイセンス。本拠地の中国・青島(チンタオ)に構えるR&D(研究開発)センターや生産工場を取材することができた。
ハイセンスのR&Dセンターは、本社オフィスとはまた別の場所にあり、広大な敷地内には無響室を始めとする様々な設備を備えている。その中でも特に注目の場所として取材陣に公開されたのが、フランスのハイファイオーディオブランド、Devialet(デビアレ)と共同で設立したオーディオラボだ。
ハイセンスでは、ハイエンドモデルを中心に、デビアレとコラボレーションして開発したスピーカーをテレビに搭載している。それらのスピーカーは、このオーディオラボでの研究を経て開発されたというわけだ。
ただ、ラボ(研究室)という名前とは裏腹に、部屋は一般家庭のリビングを模したようなつくりに。もちろんこれは敢えて狙ってのもので、ユーザーが実際に製品を使う環境に近い状況を再現しているのだという。
デビアレの球形アクティブスピーカー「Phantom」シリーズを5.9.4ch構成で設置。開発したテレビの音がデビアレが持つ基準に達しているかを、この環境と比較しながら確認しているのだそうだ。
フラグシップ機「RGB UXSシリーズ」にももちろん、デビアレとコラボしたスピーカーを搭載。日本に投入されているモデルでは、100インチと85インチに上位グレードの「Opéra de Paris」、75インチと65インチに「Tuned by Devialet」を搭載している。
「Opéra de Paris」と「Tuned by Devialet」の違いは主に、デビアレ共同開発のウーファーを搭載しているか否か。「Opéra de Paris」モデルには、デビアレ「Phantom」の対向ウーファー配置を参考にした構造を採り入れている。
「Phantom」では2基のウーファーを対向配置。それぞれ対極に駆動させることで、お互いの振動をキャンセルして不要振動が筐体に伝わるのを防いでいる。この構造をテレビスピーカーに応用しているのだ。
ただ、当たり前だがテレビには前面に映像表示用のパネルがあり、ウーファーをそのまま対向配置するのは物理的に難しい。そこでハイセンスでは音導管の構造を工夫することなどで空気の流れをコントロール。こうした構造も活用しながらウーファーによる振動の抑制を図っている。
ちなみに、RGB UXSシリーズの100インチモデルでは2対2、85インチモデルでは2対1の関係でウーファーを対向させているとのこと。上記のとおりウーファーのユニットを対向させることで振動をキャンセルし、テレビの筐体にも不要な振動が伝わることを抑制。これによって、強力かつクリアな重低音再生を実現させたという。
ラボのスタッフは「テレビ全体のトレンドとして、薄型化を推し進める流れが年々加速している。そうすると、重低音の振動がテレビの筐体に及ぼす影響は大きくなる。本体も一緒に振動してしまって、(筐体の素材である)プラスチックの音などもテレビ音声に乗ってしまう」と説明。「そういった意味で、対向配置ウーファーはテレビの音質向上に非常に大きく寄与している」と言葉を続けた。
また、音質チューニングについては、「セリフなど、人の声の聞こえ方に特に気を使っている」とのこと。コンテンツの分析や各種処理にAIも活用しながら音質向上を図っている。
さらに、ラボ内では測定用のマイクを様々な高さや距離で複数設置。テレビを見ているのが大人なのか、子供なのか、テレビからどれくらい離れているのかなど、様々な状況をシミュレートしながら、部屋のどんな位置にいてもベストな音が聴けるように調整しているという。
オーディオラボ以外にも様々な施設をハイセンスでは備えている。例えば光学実験室では、テレビ画面のユニフォーミティ(輝度の均一性)や視野角などを検証できるようになっている。
検証が自動化されているのも特徴のひとつで、輝度は0.0005 nitsという非常に細かな差まで計測可能。こうした環境での実験や検証を経て、ハイクオリティなテレビを世に送り出そうとしているわけだ。
また、電波暗室や無響室といった設備も用意。それぞれ製品がどの方向に向かってどれくらいの電磁波を発しているかであったり、テレビスピーカーの特性であったりを確認している。
なお、ハイセンスは冷蔵庫などの白物家電も製造販売する総合メーカーであり、エアコンなどは中国でトップシェアを誇るほどの地位を確立している。実はそれら白物家電を無響室で測定することもあるそうで、「特にユーザーの要求レベルが高い日本市場向けの冷蔵庫は、この無響室でのテストを経て開発されている」(同社スタッフ)というから驚きだ。
もちろん、R&Dセンター内には白物家電用の実験施設も多数存在。「国からの認定も受けている施設のため、他社から依頼を受けて(他社製品の)テストを行うこともある」という。
生産工場は、本社オフィスなどがある青島市の中心部と海を隔てて向かい合う黄島区という場所にある(ちなみに、中心部からは少し離れるが青島市の一部だ)。本社やR&Dセンターもかなりの広さだが、工場はさらに輪をかけて広大だ。敷地内にはテレビ用、エアコン用などといった具合に様々な棟が展開されている。
工場はAIも活用した自動化やスマート化がかなり進んでいる点が特徴。例えばテレビでは業界最先端の第3世代デジタル高効率テレビ生産ラインを導入している。
なお、こうしたデジタルトランスフォーメーションが評価され、2026年1月に開催された世界経済フォーラム(WEF)の第56回年次総会において、テレビ業界として世界初の「ライトハウス工場(Lighthouse Factory)」に認定されている
この「ライトハウス工場」とは、WEFとマッキンゼー・アンド・カンパニーが共同で選定しているもの。スマートマニュファクチャリングとデジタル化の先進事例として、製造業界の最高峰の評価とされている。
ハイセンス黄島工場は、製品開発から製造までの全工程においてAIやビッグデータ、VR技術などを活用した点が評価されたとのこと。こうしたDXによって、開発期間を34%短縮したほか、材料コストを18%削減、新入社員の教育期間も60%短縮した点がWEFより評価された。
なお、ハイセンスでは世界で7箇所にテレビ生産工場を展開。 この黄島工場を含むいくつかの工場で、同社のフラグシップであるRGB MiniLEDテレビを生産している。
「RGBの3色を使うということでLEDの数が増え、光学設計も複雑化し、ユニフォーミティを検査する工程も増えた。また、基板にバックライトを取り付ける工程もかなり難易度も上がっていることもあり、従来のMini LEDの技術をそのまま使うと不良率が上がってしまう」と、同社スタッフは製造工程の難化について説明する。
「生産精度を高め、いかに不良率を抑えるかに苦心した」と、生産の裏側も明かす。そして、今後はさらに工場の自動化を進め、より高品質なものづくりを行える体制を充実させていく考えを示した。ハイセンスのものづくりの今後にも期待したい。