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公開日 2016/12/22 11:10
連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー

GIGA MUSIC独占先行配信!ハイレゾで歌謡曲の懐の深さに包まれる「新沼謙治全曲集 ふるさとは今もかわらず」

大橋伸太郎

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音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場している。しかも独占先行配信。既に様々なアーティストの音源が配信中で、今後も多彩なラインナップが予定されている。

Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画を展開している。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。



新沼謙治全曲集 ふるさとは今もかわらず 新沼謙治
96kHz/24bit FLAC
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ふるさと歌謡のプリンス、新沼謙治

あらゆる分野にアイドルがいるのが現代だ。音楽の世界もそう。クラシック演奏家も今やビジュアルがものを言う。アメリカのカントリー&ウエスタン最初のアイドルは、1973年に13歳で「デルタの夜明け」を歌ってデビューしたタニヤ・タッカー。いわば日本のカントリー&ウエスタンである、民謡界最初のアイドル金沢明子がデビューしたのが1975年のこと。その翌年、ふるさと歌謡のプリンス、新沼謙治が登場する。1970年代半ばほとんど時を同じくして、米日のルーツな大衆音楽にアイドル旋風が巻き起こったのは面白い。

新沼謙治は岩手県大船渡市出身。左官職人を続けながら歌手に憧れ、TVのオーディション番組に何度も挑戦し6度目に合格を勝ち取り、日本コロムビアからデビューした。ポップス歌謡が主流だった時代、すんなりとデビュー出来なかったのがこの歌手らしいマイペースだが、逆にデビューしてからの順調ぶりはまるで向かい風を利用して風上へ駆け上がるヨットの勢いだった。

歌手・新沼謙治の原点はやはりふるさと歌謡だ。演歌が都会に馴染めず流浪を続ける人生の悲哀、故郷への複雑な心情を歌うのに対し、ふるさと歌謡の故郷はいつも心の中で逆境の自分を受け入れてくれる。母なる故郷から愛されている実感、幸福を歌うのがふるさと歌謡だ。

新沼謙治はこの二つを自然体で歌い分ける。両者で積極的に唱法を変えるのが特徴。ふるさと歌謡を歌う時はビブラートを抑えて素直に開放的に歌い上げる。演歌の時はこぶしを効かせクラシック声楽でいうディナーミク(強弱抑揚)の山谷で劇的に歌い上げる。

新沼謙治には強い喉がある。声が明るく張りがあり、ふるさと歌謡を歌う時は長いフレーズを豊かなブレスで朗々と大らかに歌い上げる。演歌の時はそれが感情を振り絞る劇的効果に。たとえ演歌を歌っても、情念の沈潜や恨み節が感じられずどこか前向きで明るい。聴き手を励まし心を暖めるユニークな演歌といっていい。

目が大きく純朴な顔立ちで岩手訛りが人懐こい。何よりキャラクターが明るく、村の青年団の集会所に現れると、ぱっと座が明るくなりそうだ。自然にリーダーシップが生まれる求心力がある。太陽の匂いのする若者。最近聞かれなくなった「期待させる青年像」というやつだ。デビューして数年間ずっとブロマイド売り上げが歌謡曲歌手のトップクラスだったエピソードがあるが、母性本能をくすぐるキュートな容貌。哀しい演歌を歌う時は、それが歌を聴き手の心の奥へ届ける助けになるのだろう。

東日本大震災のチャリティーソング「花は咲く」の中心シンガーを務めデビュー40周年を越え人気に翳りのない大御所的存在の新沼謙治。キャリアを眺めてみると、オリジンのふるさと歌謡から演歌へ次第に比重を移し、現在では日本の心をテーマにしたスケールの大きい歌曲をヒューマンに歌い上げる新境地にいる。

日本コロムビアの名歌手たちの代表盤をハイレゾで配信中のフェイス・ワンダワークスから、新沼謙治の2014年の最新コンピレーションアルバム「ふるさとは今もかわらず」が12月22日に配信開始される。2013年にリリースされ話題になったタイトル曲を始め、歌謡界のプリンスの40年間の代表曲を網羅。ハイレゾの高音質で「ふるさと歌謡」「本格演歌」まで包み込む歌謡曲の懐の深さが実感出来る。クラシックやジャズ、ロックやJ-POPしか聴かない人にこそ耳にしてほしい好企画だ。

デビュー曲「おもいで岬」から最新の「ふるさとは今もかわらず」まで全16曲をFLAC96kHz/24bitのハイレゾリマスターでパッケージし直した好盤だ。注目したいのは発売順でなく、前半にふるさと歌謡、後半が演歌、最後に日本の心を歌う歌曲2曲を配したジャンル別の曲順であることだ。一人の歌手が芸を深め磨いていく姿を辿りながら、同時に声楽としての歌謡曲の表現について考えさせてくれる。

日本コロムビアが新導入した「ORT Mastering」を採用

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