レコード、CD、ストリーミング、究極の“マイケル”を探せ!デノンの最新システムで、名盤の真価を再検証!
真保 安一郎マイケル・ジャクソンの作品は、配信、CD、そしてアナログレコードまで、メディアごとに異なる魅力を秘めている。そこで今回は、デノンの人気4機種を組み合わせ、それぞれのフォーマットで名盤の真価を徹底検証した。
今回試聴を担当したのは、『レコード・コレクターズ』の人気連載「初盤道」の筆者・真保氏。長年にわたりレコードをはじめCDや配信など多彩な音楽メディアに触れ、コンテンツ制作にも携わってきた経験を持つ。豊富な知見をもとに、デノンの最新4機種が描き出すMJサウンドの真価を検証する。
デノンのフルポテンシャルを最大限に引き出すシステム
映画『Michael/マイケル』は3回観た。3マイケルだ。そんな私の貢献? もあってか、興行収入は10億ドルを突破して伝記映画として史上最高額を記録した。さすがはKING OF POP、どんなメディアであっても常識を軽々と超越していくマイケル・ジャクソン(MJ)のマジックは、現在も続いている。
そんなMJが残した音楽の真髄を、デノンの新製品を使って抉り出してみようというのが今回の企画だ。
用意したのは、ネットワークオーディオプレーヤー「DNP-2000NE」、CD/SACDプレーヤー「DCD-3000NE」、レコードプレーヤー「DP-500BT」、そしてプリメインアンプ「PMA-3000NE」の4機種。
2024年から2026年にかけて登場したこれらのモデルは、同社が長年培ってきた音作りのDNAを受け継ぎながら、現代のリスニングスタイルに鮮やかに対応したラインナップだ。
もちろんデノンの伝統の蓄積が生み出す確かな技術力と、独自の音づくりの哲学「Vivid & Spacious」が、今回の4機種にも色濃く反映されている。4機種それぞれが独立した完成度を誇りながら、それらを組み合わせることでデノン・サウンドのフルポテンシャルを最大限に引き出すシステムを構築できる点も見逃せない。
果たしてこのデノン・サウンドで、MJはどんな姿を表すのか? また今回は『Thriller』1億枚超の最初となる、究極の米国Epic初回盤、マトリックス1A/1Aを鳴らしてみようと思う。乞うご期待である。
DNP-2000NE -Qobuz再生で解像度の高さが光る
デノンのピュアオーディオ機器として初めてHDMI ARC端子を搭載したことが、DNP-2000NEの革新性を雄弁に語る。
音楽専用機としてだけでなくホームシアターのサウンドハブとしても機能するのだ。DSDは最高11.2MHz、PCMは384kHz/32bitのハイレゾ再生に対応し、ストリーミングサービスからハイレゾダウンロード音源、さらにはUSBメモリの音源まで幅広くカバー。Apple AirPlay 2やRoon Readyにも対応しており、あらゆるデジタルソースへのアクセスを一台で担う。
MJの試聴は『Bad』『Thriller』を中心にQobuzでソースを切り替えながら試聴した。16bit FLACと24bitハイレゾのソースの差もきちんと描き出してくれる解像度の高さが頼もしい。
DACにはESS社の高性能チップを合計8基搭載したQuad-DAC構成を採用したことで、左右各チャンネルのノイズ成分を互いに打ち消し合い、驚くほどクリーンな音場が現出されるのだ。なお、『BAD』は16bitと24bitいずれも2012リマスターで、『キャント・ストップ・ラヴィング・ユー』でのMJによる冒頭の語りは入っていなかった。
DCD-3000NE -CDマスタリングの旨味も味わえる
続いてDCD-3000NEでCDの試聴だ。
編集担当所有の『Bad』の米国初期CD(米国EPIC:EK 40600)から聴いていこう。最近はリマスター等で弄られていない初期CDの評価が高まっているが、87年発売の本作も音量を上げるとキレのよい低音が顔を出す。
CDでは10曲目、日本語でMJを楽しんでいる方には「茶、宿直!」「赤信号、だ!」の空耳で有名な「スムース・クリミナル」を聴いた。この曲の冒頭、MJの心臓音も実にリアルに響く。
『Off The Wall』から『Bad』までのMJの作品はクインシー・ジョーンズのプロデュースにより、当時の米国音楽界最高のスタッフで制作されているが、特に『BAD』の初期CDはエンジニアのブルース・スウェディンによる特殊なプロセスでマスターが制作されていて興味深い。
DCD-3000NEの心臓部は「Advanced S.V.H. Mechanism」と呼ばれる高剛性・制振型メカニズムだ。ドライブ部とシャーシをフローティング構造で切り離すことで振動を極限まで排除し、SACDやCDの情報を一切の損失なく引き出している。
比較用に音圧がメチャクチャ高い2008年の『King Of Pop(Japan Edition)』(EPIC: EICP 1055)も聴いてみる。初期CDは音量をあげると素晴らしいが、小音量だとデジタルの特性上スカスカになりがちだ。だが、CDのマスタリング技術が成熟した2000年代以降のCDなら、普通の音量でも弾けるようなリズムや量感あるベースを楽しむことができる。逆にいうとデジタルのメリットを十分に味わうことが可能なのだ。
もちろん自然なダイナミクスを失うようなやり過ぎのマスタリングはよくないが、DCD-3000NEなら耳が痛くなることもない。デノン独自の「Ultra AL32 Processing」により、原音信号を32bit精度でアップスケーリングし、高精度DACと組み合わせることで、デジタル特有のざらつきを完全に消し去っていることも一因だろう。
試聴したCD『King Of Pop (Japan Edition)』(EPIC:EICP 1055/国内盤)
DP-500BT -アナログの良さを日常へ
Bluetooth接続(aptX Adaptive対応)とオートリフト機能を装備した「DP-500BT」は、フラグシップ機「DP-3000NE」の意匠を纏いながら、利便性に富んだ設計で登場した。
アルミダイキャスト製プラッターと制振構造のキャビネット、スタティックバランス型S字トーンアームにより共振を最小限に抑え、33/45/78回転に対応するほか、フォノイコライザー(MM)も内蔵する。
ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーと組み合わせれば別の部屋にいながらレコードを楽しむこともできる。レコード本来の豊かさを余すことなく届ける実力を持ちながら、10万円台という価格に収まっているのが最大の魅力で、アナログ入門者から本格派まで幅広く応えてくれる懐の深さがある。
MJのEPIC移籍後のアルバムは、すべてバーニー・グランドマンのマスタリングだが、特に『Bad』までの3作の米国オリジナル盤は、その名匠によるマスタリング/カッティングによる極上サウンドを味わうことができる。
今回試聴できたのは、なんと編集スタッフが幸運にも偶然ネットで手に入れた『Thriller』(EPIC:QE 38112)の初回盤だ。米国Epic盤のマトリックスの末尾が両面1Aの盤である。Epicは米国Columbiaレコードの製造なので、送り溝に刻まれた刻印は最初の数字がマスター番号、その後のアルファベットがカッティングされたラッカーの番号になる。
そのためAが最初のラッカーになるが、実際はAからFくらいまでは同時に制作されていたので、1Aでも1Fでも音は変わらない。でもやはり1Aが気分的にはサイコーなのだ。
実際に聴いてみると、MJがこだわった「ビリー・ジーン」のベースは他で味わえない幽玄な雰囲気と確かな存在感を持って鳴る。クィンシーの秘蔵っ子であるルイス・ジョンソンのこのプレイは、ちょっと鈍った音源やオーディオで聴くと凄さがわからない鬼門の音なのだ。
「ビート・イット」での有名なエディ・ヴァン・ヘイレンのギターソロも倍音の塊だ。複雑怪奇な極上ディストーションの倍音が、猛禽類の羽ばたきとなって天空を翔けるのだ。「DP-500BT」付属のMMカートリッジと内蔵フォノイコも的確に再現してくれていて優秀だ。
プリメインアンプ「PMA-3000NE」-Vivid & Spaciousの真価
デノン白河工場で丁寧に仕上げられるフラグシップ・プリメインアンプPMA-3000NEは、サウンドマスター山内慎一氏の設計思想「Vivid & Spacious」が最も色濃く反映されたモデルだ。
パワー段にはUHC-MOS(Ultra High Current MOS)FET単段プッシュプル回路を採用し、定格出力80W+80W(8Ω)の高い制動力と余裕のある駆動力を両立している。
電源部には大型EIコアトランス2基と大容量カスタムブロックコンデンサーを搭載し、どんな大音量でもたじろがない安定した電源供給を実現する。MM/MC両対応フォノイコライザーとUSB-DAC(11.2MHz DSD、384kHz/32bit PCM対応)も内蔵し、アナログからデジタルまで一台に完結させる設計思想が光る。聴き疲れしない上品な音でありながら、低域の解像度と制動力は圧倒的だ。
MJのヴォーカルも、ソースを選ばずに品位高く聴かせてくれる。あの特徴的な「ン、アッ!、ン、アッ!」や」「ポーッ!」の、いわゆるウラ息がうるさくないのだ。他の歌手だったら、録音の時に「ウザいからイチイチ息をいれるな!」と言われてしまいそうなヴォーカル・スタイルだが、MJの場合はこれが実に音楽的だし、サウンドの一部になっている。その究極である「ビート・イット」のデモ版を聴いてみる。
『THIS IS IT』(EPIC:88697611631)のボーナス・トラックで初出しとなり、以後いろんな記念盤に収録されたヴァージョンで、ほぼすべての楽器をMJが声で表現している鳥肌もののトラックだ。この素晴らしいMJの声をPMA-3000NEは見事に再現してくれたのである。
4機種が一体となるとき
それぞれが独立して完成されながら、4機種を組み合わせることでデノン・サウンドの真の姿が現れる。アナログ再生からSACD、ネットワークストリーミングまで、あらゆる音楽フォーマットを統一された音の美学で聴き尽くす。
PMA-3000NEを中心に据えたこのシステムは、単なる機器の集合体ではなく、ひとつのアンプによる音色の一体感を生み、MJの至高の音楽との深い対話を実現する場ともなってくれた。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.202』からの転載です